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今回は棪焚の死ネタになります。苦手な方は注意
なんでも許せる方向け。
棪堂sid
それは、突然とやってきて。
「……え?」
「っ……あ”」
焚石が死んだ。
今日俺と焚石は、焚石の要望のタピオカ店があるショッピングモールに来ていた。
焚石が行きたいと言った時には、もう飛び跳ねるくらい嬉しかった。これは昨日の出来事。
で、刺されて死んだのが今日の出来事。
通り魔は走り去っていく。
俺は血のにじむ腹を抱えてうずくまる焚石の姿に、しばし理解が追いつかなかった。色々な感情がぐちゃぐちゃになる。
誰も想像しないだろう。自分に神とも信じさせるヤツが、一瞬の隙に殺されてしまうのだから。そして、また明日、明後日、明明後日を焚石とずっと永遠に過ごすのだと、本気でそう思っていた。のに、所詮は人間なのだと気付かされてしまった。
ああ、そう言えば。感情を持つようになったのも焚石のおかげか。世界に色が着いたのも、色々なものを面白いと感じたり。
そんなことはどうでも良かったが、生憎、俺の優秀な頭は正常に動いていなかった。
今思えば俺がしっかり動いて、応急処置をすれば何か変わったかもしれない。
早く救急車を呼んで治療してもらえれば、少しでも変わったかもしれない。
目を逸らさず、しっかり焚石を見ていれば回避できたかもしれない。
あの時の俺は何もせず、焚石の横にへたれこみ呆然と見つめているだけ。焚石がそばで苦しんでいるというのに、何も出来なかった。いや、しなかった。最終的に救急車を呼んだのは俺ではなく、通行人だった。
それもいけなくて、間に合わなかった。
過去の自分に酷く怒った。叫んだ。喉が潰れるほどに、喉から血が出るほどに。その後は酷く泣いた。嗚咽がまじる。今更状況を理解したのだ。病室で冷たくなった焚石の手を強く握る。
それでも現実とは無慈悲なもので、いくら嘆いても時は戻らない。こんな未来が来るとわかっていたら、何かしら対策はできた。ああ…本当に。
まだ今日飲みたかったタピオカも飲ませていない。まだ服も買っていない。まだ欲しがっていたブーツも買っていない。
焚石の喧嘩、綺麗だったな……とか今更、焚石が死んだ後に楽しかった思い出が走馬灯のように頭に過ぎる。
「なまえ、よんでよ」
答えが帰ってくることもないのに、何回も遺体に話しかける。
「えんどうやまとって」
「えんどう」
「やまと」
ポタ。
「あれ、」
「は、」
「ははは」
「なんかなみだが……わるい、きにしないでくれ」
本当に……!!!!!
「」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!!!!!」
泣き叫ぶ。叫びに叫んで、この気持ちを抑えられない。今すぐにそっちに行きたい。いや行く。今すぐ。ここから飛び降りる。焚石と一緒に。
冷たく目を閉じた焚石を抱き抱えて広い窓辺に立つ。生きていれば、また会話ができた。
「焚石」
「たきいし」
「いこっか」
生暖かく赤黒い血が2人を覆う。
fin