コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
私は地味で冴えない女子。学校でも存在感ほぼ無の影薄すぎな生徒だ。
私は、明日学校に行かないといけないという憂鬱感に苛まれながら、ベッドの中で目をつむる。
─ああ、今度生まれ変わったら絶対、存在感溢れる子になる!
私はそう決意した
朝日が窓から入ってくる。眩しい。私は思わず体を起こす。
まて、窓にカーテンかけてたはずなのにどうして朝日が……
てか、私がこんなにおしゃれな起き方するわけない!!
私は異変を感じ、急いで窓を開ける。窓の外は、見たこともない世界だった。
美しい大地が広がっており、まるで異世界。
漫画や小説でしか見たことのない、景色がそこには広がっていた。
私は───興奮が隠しきれなかった。
「すご~い!!よくある異世界転生!?」
しばらく興奮していると一番重要なことを思い出した。
──容姿を確認しなくては
私 は目を瞑り、鏡の前に立った。
地味じゃありませんように。地味じゃありませんように。
私は精一杯の祈りを捧げた。ゆっくりと目を開けて自分の容姿を確認する。
世界ってなんて残酷なんだろう。
私の容姿は茶髪の地味な女子だった。嘘でしょ。私って永劫地味な呪いがかかってるの?
普通、異世界転生だったら、悪役令嬢になったり、魔物になったり、勇者になったりするんじゃないの!!
なのに私、茶髪の地味な女子。現実って酷い。
現実に文句を言っていると誰かがドアをノックした。
「どうぞ」
すると、どこか私に似ている、落ち着いた雰囲気の女性が入ってきた。
「ビウル、朝食の時間よ」
どうやら、私の名前はビウルというらしい。この人はお母さん?
「わかった」
私はなるべくお母さん(?)に怪しまれないように返事をする。娘が急に別人になったと驚かれてはいけないし。
我ながら、上手く対応したと思ったが、お母さんは口を大きく開けて固まっていた。
あれ?ここは、OK と言うべきだったか?
私が思考を巡らせているとお母さんが恐る恐る私に話しかけてきた。
「ビウル、起きたの?」
「は?」
何を言ってるんだ?さっき、朝食の時間とかなんとか言ってたじゃないか。もしかしてこの人、妄想が激しい人なの?
「どういうことですか?」
私が聴くとお母さんはすぐに答えてくれた。
お母さんが言うには、ビウルちゃんは病弱で最近は立つことも出来なくなっており、しかも、 昨日は咳がひどくしゃべることすら困難な状態だったらしい。
そりゃあ、驚くよね。病弱な娘が急に元気になってたら。
「へえ、あなたは、ビウルの体に転生したの?」
「はい」
「不思議なこともあるのね」
お母さんは娘の心が消えたわりに落ち着いていた。私の娘はどうなったの!?って言ってくると思ってたんだけどなあ。
そう考えていると、一つの仮説が浮かぶ。
「もしかして、ビウルちゃんって昨日……」
「ええ、死んだわ」
私は言葉が出てこなかった。そんな様子を察したのかお母さんがやさしい口調で話す。
「ビウルはね、病弱だったから出来ることが限られていたの。だから、あなたがビウルの代わりにその体でたくさんのことをしてほしい。お願い出来るかしら」
「はい」
朝食のときにお母さんはビウルちゃんのことをたくさん話してくれた。
お母さんの話しに出てくるビウルちゃんはとても大人しい子だった。
ただ、全然欲がなく、おねだりの一回もしたことがないとお母さんは心配していたらしい。
部屋に戻ると私は机の中をあさり始める。人の机を勝手にあさるなんて礼儀がない?
お母さんは好きなように部屋を使ってと言ってたからいいのさ。
そういうことであさっているとノートを見つけた。
気になってノートを開いてみるとビウルちゃんと思わしき字が書かれている。その内容はお母さんから聞いていたビウルちゃんとは真逆のものだった。
“みんなの記憶に残るような子になりたい!!”
そこにはそう大きく書かれていた。また、ページをめくるとビウルちゃんの願いがたくさん書かれていたのだった。
きっと、口に言えない願いをここに書いていたんだろう。
私は誰にも言えない願いがあったビウルちゃんと前世の自分を重ねてしまった。
ビウルちゃんも私と同じだったんだ……
だったら、
「そのネガイ私が叶えるよ」
そう言うと、気のせいだろうか。
「ありがとう」と微かに聞こえた気 がした。
次の日、私は森へ行くことにした。
森は野生の魔物が出てきてくるので普通は一人で行くのは危険らしいが私は魔物に襲われることはなかった。
なぜなら、私の能力は《地味》だからである。
この世界には生まれつき能力というものが備わっているらしい。
その能力が私は《地味》で、それは認識されにくいというものだった。
最初はそんな能力いる?と思っていたけれど使ってみれば楽である。
ただ、この能力はずっと発動していて切ることが出来ない。
つまり、完全なる地味キャラなのだった。うん。悲しい。
転生しても地味キャラ属性は全く変わらないって……
やっぱり、永劫地味な呪いがかかってるんだ。だれ、呪いかけたやつ。
そう現実逃避していると向こうの茂みに誰かがいるのを見つけた。
その人も危険なのに一人で来ていたので私の同類かもしれない!と近づく。
だが、近づくと一瞬で同類じゃないとわかった。
その人はものすごく整った顔をしていたのである。
なんかオーラまであり、もう神々しかった。
少し……いや、かなりがっかりしたが何で一人でこの森にいるのか気になったので話しかけることにした。
「あ……えっと……その」
ヤバい。『話しかけることにした』とかめっちゃカッコつけてたのにどうやって話せばいいかわからない!!
テンパっている私を気づかうようにその人はボソッと呟く。
「どうしたんですか」
「い、いや、一人でこの森にいるの危険なのに何でいるのかなって」
その人は無表情のまま私をじっと見つめてくる。
ちょっと怖かったが、私もその人を見た。
その人は中性的な整った顔だったので、性別がわからなかった。
だが、少ししたらその人はすぐに私から目をそらし、謝罪する。
「すみません、怖がらせてしまい」
「いえ、」
そして、その人は何気ないように言った。
「あと、この森危険じゃないですよ」
「えっ、でも魔物が……」
「そんなの雑魚しかいないじゃないですか」
えっ、お母さんは人にとっては危険って……
ん、人?
もしかして、その人って……いや、そのヒトって
「あの、あなたって人間ですか?」
「違いますけど」
そのヒトは可愛く首を傾けながらそう言った。
「じゃあ、何者なんですか?」
「……今は、何者でもありません」
もう、話すことがないので行こうとするとそのヒトが質問をしてきた。
「貴方は学園に通っていますか?」
学園?そういえば、ビウルちゃんのノートにそんなことが書いてたような……
「多分、通ってます」
「多分ですか」
そのヒトは一瞬だけ考えるように目線をそらす。が、すぐにまた目線を戻した。
そして、私のもとで膝をつく 。
「えっ、何をして」
「ボクを貴方の使い魔にしていただきませんか」
えっ、何。冗談?
でも、そのヒトの目は真剣だった。マジで?
「え、何で急に」
「すみません、説明不足でした。実はボク学園に用がありまして……」
なるほど、私の使い魔として学園に入るというわけか……怪しい
もしかして、学園を狙うテロリスト?
うーん、でもそのヒトって悪いやつには思えないんだよなあ。なんか、訳ありっぽいし……
よし、
「わかりました。私の使い魔になって下さい」
そう言うと、少しだけそのヒトの目が開いた。
「ありがとうございます」
「ところで、名前は?」
「ボクは……クースです。主様は?」
私は前世の自分の名前を言おうとした。いや、違う。
今の私の名前は……
「私の名前は“ビウル”。よろしく、クース」
「はい、よろしくお願いします」
これは、私、ビウルの物語だ。