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本を動かした時、古い写真が落ちてきた。
肩を組んだ私と魔理沙。
セピア色に滲んだ過去が思い出される。
手に取った本を置いて、落ちた写真の埃を払った。
「霊夢!肩組もうぜ!!」
「良いわよ」
「写真撮ろうぜ!!」
「良いわよ」
「良いんだ…」
「ダメな理由なんてないでしょ」
「優しっ。こりゃ明日はどしゃ降りだな」
「失礼ね。私だって10年に1回は優しい時あんでしょ」
「自慢してんのか貶してんのかよく分かんねえな」
そうやって、くだらない会話を交わした。
なんかずっとくだらない会話してたような気もするけど。
埃は、彼女のいない空白を覆い隠すように薄く積もっていた。
貴方はもういない。
最初は毎日君のせいで泣いていた。
半年経てば泣かなくても生きてられるようになって。
今ではほとんど思い返すこともない。
大好きでした。
ずっと、ずっと。
いつか、私のことなんて忘れてくれよ。と笑った貴方。
そんなに忘れて欲しいならすぐ忘れてやるわ、と。
言いようもない虚しさを抱えて約束した。
約束を破り続けていることを、貴方に伝える術はない。
ごめんねって伝える方法もない。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
忘れられるわけなかったの。
あんなに好きだったのに。
忘れたくなんてなかったの。
約束、守れなくてごめんね。
そんなの…ずっと覚えてるわよ。
あんたのこと。
ひだまりのような少女だった。
よく笑う、優しい少女だった。
縁側に座ったら、必ず足をぷらぷらして遊んでいた。
ちゃぶ台返しの意味をよく分かってなくて、ちゃぶ台ってひっくり返すものなのか?と真顔で聞いてくるようなお茶目な人間だった。
熱いうちにお茶を飲みたいと大人ぶって、舌を火傷するような。
冬になったらマフラーを付けて、箒に絡むんだよなとすぐ外して。
そのたび神社に忘れていくから、ここには魔理沙のマフラーが3つは置き去りになっている。
春になったら小鳥と戯れて。
指に小鳥を止まらせるのが上手かった。
私の指に小鳥を飛び移らせて笑っていた。
テレビの趣味が合わなくて、テレビ譲ったらお皿洗い免除というルールが出来て。
アイツはしばしばテレビを私の好きなチャンネルにして、お皿洗いを回避していた。
いつしか、私の好きなチャンネルが魔理沙の好きなチャンネルになっていた。
お湯を手っ取り早くミニ八卦炉で沸かすから、たまにキッチンが爆発した。
怒っても全然懲りなくて。
時々霧雨魔法店に遊びに行ったら、嬉しそうに笑って。
そんで、また来てねって指切りして。
結局、あれからまた行くことは無かった。
縁側に座って、足をぷらぷらさせて。
何の前触れもなく庭に降りて走り回ったり。
暖かい思い出を、沢山残してくれたよね。
障子越しの日だまりに、もう触れられない幸福が眠っている。
写真の中の貴方は、心底楽しそうに笑っていた。
色褪せたその写真が、ひたすらに愛おしかった。
この古い写真の中でだけ、私達は同じ時を生きている。
どうしたって手放せないその写真を写真立てに入れて、縁側に置いた。
2人分あった影は、いつしか1人になっていた。
それでもいいんだ。
魔理沙は、私の中で生きてるからさ。
じっとしてるのが苦手なアイツは、しばしば私の心を出てどっかに遊びに行っちゃうからさ。
それでも、また戻ってきてくれるからさ。
写真立ての隣に置いた熱いお茶。
舞い散った桜が髪を揺らす。
写真立てを挟んで座った2人の少女は、暖かい空を見上げた。