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「あの、いおくん…その、大丈夫です?」

今朝の事、謝りたくて…と思ったのだが…。

「お、大瀬さん!?何の要件です!?奴隷契約、捺印ですか!?」

「ぁあ…それはお断りします…。じゃなくて、その、ううん。まず怪我の手当しなきゃ…。いおくん、手、出して」

「嫌です、僕の事はどうだって良いんですから…」

いおくんは平気そうだけど、明らかに痛々しい。いつも、やっぱり無理してるんだ。

「駄目!いおくんはいつもそう、もっと自分を大切にして!後は僕がやるので」

「あっ、ちょっと!僕の手は良いですって!!」

テーブルの上に置いてあった救急箱を開けて、いおくんの手を握った。冷たい、そして細い。どうしたらこんな細い腕で…いやいや、そんなに見てたらまた怒られちゃう…。

「消毒します…痛いかもしれません」

なるべく痛みがないように…。

「……っ痛!意外と染みるなぁ〜…これって」

「大丈夫ですか、いおくん…」

「別に〜?ただ負荷を君に取られた事くらいしか無いけどね。あと君さ、もっと自分、大切にしようね」

よく理解さんに自分を大切にしろって言われるけど…こんなクソ吉を大切にしたって、残るものはただの塵一つに過ぎないのに…。

「あと、大瀬さんさ…」

「うぇ…今度は何ですか…?」

「ちょっとさ…近いんだけど…?」

「え?」

改めて自分の居場所を確認する。ちょ、ちょっとこれってまさか…ぼ、僕、今…巷で言う床ドン状態になっているのですか…!!?

「うわあああ!!!!??お、お、お身汚し失礼しますっ!!!今直ぐに腹を、切腹いたしますっ!!」

「わあああ!!?大瀬さん一回落ち着いて!!ていうかどこから持ってきたのそのドス!?」



二人が落ち着いてようやく本題に移る。


「その…今朝の発言については、凄く申し訳ないと思っています。ただの疑問にあんなに騒ぎ立てて、それに、放って置いて、何て心無い言葉を掛けてしまって…」

さっきの慌てていた大瀬さんとはうって変わり、彼は自ら淡々と自尊心を傷付けていった。

「…ずるい」

口から出た言葉を取り返そうとしてももう遅かった。

「ぇ……?ずるいって…」

大瀬さん…僕は………

「貴方って人はいつも、僕の心を惑わせて…毎朝早起きして僕の朝食作りを手伝おうとしたり、この指の手当をしてくれた事だって、本当は…凄く嬉しい」

気付けば僕は泣いていた。僕が泣く事なんて、滅多に無いのに。

「いおくん…僕、いおくんが好き」

「僕も…大瀬さんが好きです」


涙が止まらない僕を、君は優しく包んでくれた。

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