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【第一話】はじまりの気配
夕暮れの稽古場 木刀の音が響く中 君は必死に構えを保っていた
「腕の角度が甘い」背後から低い声がして 振り向けば立花仙蔵が静かに立っている
彼の手が君の手に重なり 正しい構えへと導かれる
熱い体温が伝わってきて心臓が跳ねたのに 仙蔵は何事もなかったように眉ひとつ動かさない
「…危なっ」不意に足を滑らせた君の身体を 仙蔵がすばやく支える
その腕の中で顔を上げると 真剣な眼差しがすぐ近くにあった
「気を抜くな お前に怪我をさせたくない」
短い言葉なのに 胸の奥に深く刺さって 君は小さく「ありがとう」としか言えなかった
その様子を見ていた仲間がひやかすように「仙蔵って君にだけ優しいよな」と笑う
仙蔵は少しだけ視線を逸らし しかしはっきりと答えた
「当然だ 俺が守るべきだからな」
淡々とした声 けれどその響きには 他の誰にも向けない熱があった
立花仙蔵編前編
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