目の前で座り込む、能力を使い果たした無力な少女。私は、彼女を見下ろしていた。
「ねぇ…私が何をしたんですか?教えてくださいよ。」
彼女は震えた声で言う。
「朝起きたら突然声が聞こえて、突然人から狙われるようになって、一回だけうっかり殺したんですよ。そしたら人が来なくなって。これで楽になれると思ったらまた人が来て。」
気持ちはわからなくもない、私だって初めて人を殺した時、そしてそれに罪悪感を覚えなかった時、靄がかかったような気持ちになった。この子は、誰かに殺されることを望んでたのか…。
「…ねぇ私が今からすることってあんたの言う”意味のある殺し”になれるかな」
「はは、縋らないでくださいよ。私を殺す癖に、かわいそうになっちゃうじゃないですか。」
わかった。この子は能力者に向いてなかったんだ。無責任に人を殺して生きながらえるには、器が優しすぎたんだ。
「…あなた は悪人だ。私の糧になって安らかに眠って。私はただ血を吸いたいだけだったけど、君は違ったね。ごめん。」
普段ならこんなことは言わない。これは私から彼女の人生への精一杯の労いだ。ゆっくりと彼女の肩に近づく。
「ありがとうございます…私を裁いてくれて。」
私は彼女の血を吸った。
一口目。
「あぁ…美味しいな…くそ…」
思わず声が溢れでた。
二口目。
「…」
彼女からうめき声が聞こえなくなった。
3口目。一気に飲み干した。どうしようもなく美味しくて、虚しかった。また吸いたいと思う自分が嫌だった。
「ごちそうさま。」
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