テラーノベル
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今日も私は、班長に頼まれ大量の書類を運んでいた。
新兵器の設計図やら、予算やらが書かれているものだ。
これを技巧班に渡すのが今日の仕事だ。
昔から、小難しい仕事をするのが苦手だった。
だから自然と、私に回される仕事も力仕事ばかりになっていった。
私は他の女性兵士より背が高かったし、その分力もある。
だけど、キツくないといえば嘘になる。
重い軽い以前に、書類で前が見えないのだ。
「わっ…す、すいません!」
兵士とぶつかってしまいそうになり、私は咄嗟に謝る。
この廊下は人通りが多く、この流れももう五回目だ。
そしてぶつかりそうになった兵士の顔をよく見れば、
それが第四分隊の副長だということに気がつく。
「ふ、副長殿…!失礼致しました!」
「大丈夫だよ、ぶつかっていないのだし…重そうだな、半分持とう」
「いえ、お構いなく…!」
「私としては、君が誰かとぶつかって書類をばら撒いて、
そのうちのひとつを紛失されてしまっては困るのだが」
そう言われ、私は書類の半分をモブリットさんに渡した。
こんなことをしてもらったのは初めてだ。
いつも、ぶつかりそうになっただけで舌打ちされた。
でもモブリットさんは、違う隊、違う班の私にもこんなに優しくしてくれて…
男は単純だとよく言うが、女も時に単純なものだ。
一回優しくされただけで、すぐ惚れてしまう。
だが、私は後になって思う。
この出会いは運命だったんだ!
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と、私は自分とモブリットさんの運命的な出会いに想いを馳せる。
今考えても、仕組まれたような完璧な出会い。
そして、私がモブリットさんの秘密を知ったのも運命。
モブリットさんは、誰もいないような深夜の二時に風呂に入る。 女湯だ。
それはもちろん、モブリットさんがカントボーイだから。
父が医者だったので、私は昔聞いたことがあった。
ごくごく稀に、性器のみが女性の男性が産まれることがあると。(逆も然り)
たまたま深夜二時に、風呂に入ろうとしたことがあった。
私の班長は少し難がある人で、こんな深夜まで厳しい仕事を班員にやらせた。
何も考えず、馬鹿みたいに更衣室に突っ込まなくてよかったと思う。
何回も思い出す、あの素晴らしい曲線美。
程よくついた筋肉に、それに…
下も、大変美しかった。
もちろん、私は扉の影から見ているだけだったが…
触りたいとか、百八回では到底消えないような煩悩が頭を支配する。
これは恋だ。この世で最も純粋な恋だ。
モブリットさんがどんな身体であっても私は愛せる自信がある。
モブリットさんだって私の事を愛してくれるはず。
だから、私がモブリットさんと距離を縮められるまで、
クソオス共がモブリットさんに近づいてしまっては非常にまずい。
モブリットさんは身も心も清らかでなければいけないのだ。
非処女のモブリットさんだって愛す自信はあるが、
欲を言うなら処女は処女の方がいいに決まっている。
「十七年生きてきて、初めて男の気持ちがわかった…」
私はそう呟いて、高鳴る胸を抑える。
まず手始めに、私は第四分隊四班、
通称ハンジ班の班員のひとりであるニファと友人になることにした。
彼女は午後3時、図書室で本を読む。
彼女はフレンドリーな性格だったため、すぐ友達になることが出来た。
そして、彼女と友人になった理由はひとつ。
モブリットさんのことをもっと知るためだ。
「あのさ、私…モブリットさんのこと気になっててね、
ニファちゃんなら 何か知ってるかもって思って…ごめんね、利用するような真似して」
「ううん、全然!ヘルタ、悪い子には見えないもん。
だから私も友達になったんだし… 」
掴みは上々。ここで嘘をつくより、正直に言った方が
彼女の心に響くはずだ。
「へぇー、副長かぁ…確かに、彼氏にするなら一番安定したタイプだよねぇ 」
「うん!そう…」
ニファは、モブリットさんの身体のことについては知らないらしい。
意外と噂が流れていて、知っている人もいるにはいるが。
確かに、彼女は噂話を聞くような人物には見えない。妥当か…
「でさ、モブリットさんって彼女いるのかな?」
「うーん、それがね…」
ニファの表情が困ったような、言い辛いというような表情に変わる。
まさか、いやそんなわけがない。
モブリットさんに彼女はいない。
けど、私以外にいるのなら
どんな身体だとしても好きな人を愛したいと
そう思った女がいたのなら…
「モブリットさん、そういうのに興味ないみたいなの」
「…というと?」
「前に酔ったアーベルさんに…あ、アーベルさんっていうのはうちの班員で、
モブリットさんの同期なんだけどさ。そのアーベルさんに彼女を作らないのか聞かれてて。」
で、なんて答えたと思う?と、彼女はため息をつきながら言った。
「“私はそういう資格がないから、彼女を作るつもりはないよ”だってさ。」
「資格…」
「意味分からないよね、モテるのにもったいない。」
モブリットさんは絶対、自分がカントボーイだから
女の子と付き合う資格なんてないと思っているのだ。
「…ありがと、なんとなく分かった気がするよ」
「え?今ので?」
まずはモブリットさんに自信を持ってもらわないといけない。
そのためには何をすべきか。
私がどれだけモブリットさんを愛しているのか伝えなければならない。
少しづつ、でも着実に。
モブリットさんともっと仲良くならなければ!
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今日、同期の男が話してるのを聞いた。
「モブリットさんって意外とエロくね?」
「馬鹿言うなよ、下はともかく他は男なんだろ?」
「でも一回くらいヤらせてくれそうだよな。ホラ、優しいし!
前だって俺が立体機動で事故った時に手当てしてくれて…」
糞が糞が糞が勘違い男死ね死ね死ね死ね
モブリットさんの優しさを履き違えるな
モブリットさんは誰彼構わず股を開くような淫乱なひとじゃない。
くだらない幻想を抱くな。
お前なんかの顔をモブリットさんは覚えていないから安心してほしい。
こんな性犯罪者の予備軍のような男を生かしておく理由はない。
けど私は自分の手をこんなクソ男の血で汚したくない。
そんな手じゃモブリットさんを触れないから。
ならどうする?
そうだ、今日の夕飯に毒を盛ってやろう。
選りすぐりの毒草をシチューにたっぷり入れてやるんだ。
お前らみたいな人間は、死んで当然なんだ!!!!
夜、食堂に悲鳴があがる。
クソ男が死んだだけで、普通そこまで叫ぶだろうかというほどに。
兵団中はちょっとした騒ぎになった。
その日の料理を作った料理人と、配膳係は憲兵団が連行していった。
私にも疑いがかかってしまったが、ニファが擁護してくれて助かった。
「ヘルタがそんなことするわけないもんね。第一、動機がないじゃない」
「うん…まあ、厨房に入った人はみんな疑う、みたいな。そんなスタンスだったんじゃ」
「お粗末にも程があるよ!ね?」
「うん」
そう、ニファと話していると
ハンジ分隊長とモブリットさんが話しているのを見つけた。
「あっ、モブリットさん」
「ほんとだ、無事でよかった…話しに行く?」
「えっ…でも」
「私が話題は作ってあげるから!」
やはり、持つべき物は友だ。
これは一気にモブリットさんと近付けるチャンス、逃すわけにはいかない。
「ハンジ分隊長!モブリット副長!ご無事でよかったです!」
「ああ、びっくりしちゃったよ。敵は巨人だと思ってたら
急に夕飯に毒入れられて死んだ兵士が出たって…しかも二人だろ?笑えないよね」
ハンジ分隊長は、そう思い詰めた顔で話す。
調査兵団内での殺人なんて、今まで起こったことがないからだろう。
「えっと…ところでそちらの子は?」
「あっ、この子は私の友達で…」
「ヘルタです」
「ああ、どうもどうも。私はハンジ、よろしくね」
「よろしくお願いします」
「…!」
視界の端で、モブリットさんが何かに気付くような顔をした。
私の事を覚えていてくれたのだろうか。
「それで、ヘルタは何もしていないのに憲兵に疑われてしまって…
このままだとヘルタも連行されてしまうかもしれないんです!
彼女の潔白は私が保証するので、どうか分隊長と副長も
ヘルタの無実を証言してくれないかと…」
「よし分かった、いつもニファには迷惑かけちゃってるし…」
「ありがとうございます!副長も、いいですよね?」
「え?…ああ」
「ありがとうございます!」
モブリットさんが、一瞬顔を顰めたのが分かった。
そして、その理由もすぐに分かった。
私のジャケットの裾に、緑っぽい液体が少量だが付着していた。
今日の夕飯のメニューに、緑色の物など無い。
私だって毒を盛るのは当然だがこれが初めてだ。
擦り潰した毒草の液を袖に付けてしまうという、初歩的なミスもする。
だけど、ニファもハンジ分隊長も気がついていなかったのに…
鋭い観察眼と、ただの袖の汚れと片付けず
今回の騒動に結びつける賢さ。
先程の顔も、単に私のことを覚えていただけではなく
今回の騒動の犯人が私だと気付いたからだろう。
「副長、どうかしましたか?」
何かが引っ掛かるような顔をしているモブリットさんに、
ニファが心配そうな顔で聞く。
私としては、今一番してほしくない行動のひとつだ。
「いや…ニファ、君は彼女とずっと一緒にいたのか?」
「いえ、スプーンをもらい忘れたと少し席を立ちましたが…
あんな僅かな時間で毒を盛れるとは…」
「だが、やろうと思えばやれる範囲のはずだ」
「…ですが、私は彼女と話していて…人を殺すような子には、見えなかった」
モブリットさんは、困ったような顔をしてから、こう続ける。
「私もヘルタがやったとは思えない。彼女は、いつも真面目に仕事をしていた。
仲間にも気を配ってたみたいだし…だが、絶対潔白だと言えない限り、
私は彼女が無実だと証言することはできない」
「モブリットぉ、お堅いよ… よくよく考えてみてよ、あんな純粋無垢って顔した子が
毒殺とかするように見える?」
「分隊長…私が堅いのではなく貴方がゆるいのでは」
私は一連の話を聞き、自分が疑われている、捕まるかもしれないという恐怖と
モブリットさんが自分の名前を呼んでくれて、
さらには私の良いところを言ってくれたという嬉しさの板挟みになっていた。
私に後悔はない。私がやったことは間違っていない。
あいつらを生かしておいたら、モブリットさんが強姦されていたかもしれない。
私はモブリットさんを守るためだけに人を殺したんだ。
きっと分かってくれるはず、きっと…
でも、モブリットさんは殺人を許容するようなひとじゃない。
なら、私はどうなるのだろうか。
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あれから何日か経った頃。
騒ぎもある程度収まり、犯人は料理長ということでかたがついたらしい。
だが、見てしまったんだ。
モブリットさんと親しげに話している男の姿を。
ハンジ班の班員でもない、モブリットさんの同期でもない、全くの無関係なのに!
きっとモブリットさんに特別な感情を抱いているはず。生かしておくわけにはいかない。
だが、前と同じ手段ではバレてしまう。 人の犯行だと思われてもダメだ。
かといって巨人に容疑を押し付けることも出来ない。
…火だ、火を使おう。
ここの兵舎にはモブリットさんが来たこともニファが来たこともない。
二人が巻き込まれることはないはず。
他は別に巻き込まれてもどうでもいい。
今度はあんなヘマはしない。 今度はもっと巧くやってみせる。
誰にもバレないように、疑いがかからないように。
夜、例の男の部屋に忍び込む。
私は元々、気配を殺すのが得意なので、特に男が起きる気配も無かった。
部屋に必ず置いてある蝋燭があるはずだ…見つけた。
迷いなくその蝋燭を燭台ごと床に無造作に置き、
マッチで部屋に火をつけた。
これで蝋燭の消し忘れによる事故としか思われないはずだ。
窓を開け、茂みに向かって飛び降りる。
一見無謀だが、この方法しか思いつかなかった。
飛び降りると同時に窓を閉めようとしたが、やはりこれは難しい。
少し閉まっただけでも及第点としよう。
そうして、一階の自分の部屋に窓から入る。 完璧だ。
これならモブリットさんにもバレないはずだ。
深夜ということもあり、なかなか悲鳴はあがらなかったが、 やっと聞こえてきた。
こういう時は部屋に起こしにくる兵士がいるはずだ。
アリバイ作りのためにも、このまま部屋にいた方がいい。
「おい起きろ!火事だぞ!」
「…か、火事?」
我ながら、人生一番のアホ面だったと思う。
だが、こんなアホ面で言われた言葉を復唱するような奴が犯人だとは、
誰も思うまい。
ひとまず、私は外に避難した。
自分が放った火で死ぬなんて御免だ。
死亡3名、重症1名、軽傷5名。
死体はかろうじて男女の区別がつく程度の状態だそう。
だが、避難者の中にあいつの姿は無かった。きっと殺せた。
点呼が済み、ひとまず他の兵舎で寝させてもらえということになった。
私は、迷わずニファの部屋に行く。
「へぇ、それは災難だったね。けど、ヘルタが無事でよかった」
「うん…けど、死亡者のうちのひとりが…多分、私と仲が良かった子なんだ」
「…そうだったんだ」
「巨人に殺されたならまだ分かる、だけど…ひとりが蝋燭を消し忘れただけで…」
私はそう言って涙を流す。
前半部分で嘘は言っていない。本当に、彼女が巻き込まれるとは思わなかった。
まさか、部屋の扉の建て付けが悪くなっていて逃げ遅れたとは。
だけど私に後悔はない。
モブリットさんをちゃんと守れたんだから、それで十分なのだ。
「…ていうか、本当に私の部屋でいいの?」
「……え?」
「いや…仲良い子が死んじゃった時に、こんなこと言うのもあれだけど…
私、モブリットさんの部屋がどこだか知ってるよ」
「…本当?」
ニファが、私を元気付けようとして言った言葉。
これこそ、私が狙っていた言葉。
もちろんモブリットさんの部屋の場所なんて既に知っている。
でも急に行ったら怪しまれるはずだ。
なぜ自分の部屋の場所を知っているのか。
だがニファに連れられて来たというなら納得してもらえるはずだ。
兵舎が焼けて自室で寝ることが出来ない兵士を、
モブリットさんが放っておくわけがない!
ニファが扉をノックすると、モブリットさんがすぐに出てきた。
「副長、夜分遅くに失礼します」
「ニファ…と、ヘルタか。どうした?」
「実は、私の兵舎が火事で燃えてしまって…別の兵舎の人に頼んで
寝させてもらえと言われまして…」
「なら、ニファの部屋で寝させてもらえばいいだろう」
「お言葉ですが、私の部屋は散らかっていまして…」
そうは言ってもな、と呟いてから、モブリットさんは腕を組む。
やはり、私は疑われているのだろうか。
背筋が冷たくなる。
「男の部屋で寝るのは嫌だろう。そうだ、リーネの部屋でも…」
「いえ、そんな…」
「とにかく、私はもう眠いので部屋で寝させて頂きますね!では!」
「ニファ!?」
気を利かせたつもりか、ニファはさっさと部屋に戻っていってしまった。
少しの間気まずい沈黙が続き、私は口を開く。
「モブリットさんって、男なんですか?」
「…は?」
低い声が頭に響く。
その声には、戸惑いと…若干の怒気。
やはり、本人がコンプレックスに思っていることを言うのは不味かったかもしれない。
「…中で話そうか」
「……はい」
モブリットさんは、多分怒ると怖いひと。 そう思っていた。
どうやら大当たりだったらしい。
地雷を踏むどころか思い切り踏み割ってしまったが、大丈夫だろうか。
いや、マイナスにマイナスをかけるとプラスになるという話もあるし、
このまま突っ切ればきっと、きっと良い方向に向かってくれるだろう。
「…君は、なぜそう思った?」
「何がですか」
「さっき聞いただろう、私が男なのかと」
「だって…男じゃないんでしょ…知ってますよ私。
噂も流れてますよ、毎日毎日思春期の男共が騒いでますよ。
モブリットさんなら頼めば一回くらい抱かせてくれるんじゃないかって…」
そう言い終わる前に、モブリットさんは私から目を背けた。
顔は、普段より少し赤くなっているように見えた。
「それは知らなかったな…で、君はその男をどうしたんだ」
「どうって、どうも…」
「前の毒物混入と今回の火事、どちらも君がやったんだろう」
「…」
「そんな奴なんて放っておけばいいだろう。
確かに、言われて気持ちのいい言葉ではないが 結局は口だけの奴らだ」
「…」
「そもそも、なぜ君が私に構うのか…」
「だって!モブリットさんが男に無理矢理強姦なんてされたら!!!!
私耐えられないです!!!!!!」
モブリットさんが、驚いた顔で固まる。
そうだ、私なんてモブリットさんからしたら数回会っただけの
所属の班も隊も違うただの兵士…
そんな女に急にこんなこと言われたら、驚くのも当然だ。
この人は自分の魅力に気付いていない。
きっと、実行に移していないだけで私みたいな人はたくさんいるのだろう。
「…なんで」
「理由なんてないんです…私モブリットさんのことがほんとうに好きなんですよ。
だから、変なやつに変なことされてほしくなくて…
お願いです私を嫌いにならないでください」
私が一歩前に進むと、モブリットさんは一歩後ろに下がる。
これは、目に見えて分かる拒絶のサインだ。
なんでだろう。私のこれは真実の愛なのに。
どこで間違えた?
私が殺ってなければあの男共はモブリットさんに
言葉に表せないほどのひどいことをしていたかもしれない。
全部暴いて、ナカを抉って、欲望を全てぶつけて
それは全部私がモブリットさんにしたいこと。
だけど全部モブリットさんがされてほしくないこと。
あれ?前提から矛盾しているようだ。
おかしい。
「ねえモブリットさん…私のこと覚えていてください」
「さあ…うっかり忘れてしまうかもしれない」
「なら抱かせてください 一生忘れられないようにしますから」
返答はない。
だが言葉が無くても拒絶の意が伝わってくる。
斜に構えた瞳で、断じて否と。
「なら せめて手だけでも触らせてください」
「……それくらいなら…」
人間というのは意外に単純な生物だ。
大きい頼み事をして断られた後に別の頼み事をすると、
あっさり承諾してくれることが多い。
今回もそうだ。
ああ、なんて綺麗な手だろう。なめらかで美しい手。
長くて綺麗な指。男性らしい、少しごつごつとした骨の質感。
それを感じながら、私は素早くジャケットの内ポケットに入れていたナイフを取り出す。
モブリットさんの反応も速かった。流石は調査兵団のベテラン兵士。
足でナイフを持っている手を蹴られ、私はあっけなくナイフを落とす。
すぐに両手首を片手で掴まれ、身動きがとれない状態にされた。
「あは…そんなに足高く上げちゃ、はしたないですよ」
「君は言っていることとやっていることが、全て矛盾しているな」
「…えぇ?」
「気付いていないのか」
私はもうモブリットさんのことしか考えていなかった。
それくらい好きなんだ。それくらい。
全部モブリットさんのためにやった。
全部モブリットさんを想ってやった。
「モブリットさんは綺麗なひとです」
「…」
「だから、資格がないとか言わないで。人を好きになることに資格なんていりません。
そうじゃなきゃ…恋に狂わされた私が、馬鹿みたいです。」
実際、私は馬鹿だったのかもしれない。
産まれた時から、頭のネジが三本くらいぶっ飛んでいたのかもしれない。
私がもっとまともな奴だったら。
普通にモブリットさんと仲良くなって
恋人まではいかなくても…よく会って話す仲にはなれたのかもしれない。
その後、私は憲兵団に連行された。 十年の投獄。
毒物の件を含めたらもっといったのだろうが、
憲兵団は自分達が犯人を間違えたということを認めたくないらしく、
毒物の件の犯人は依然変わらず料理長ということになっている。
多分、私が捕まっても何も変わらない。
みんなモブリットさんのことを好きになってしまうから、
その中に私のような奴がいればすぐ同じことになる。
純粋にモブリットさんを好きになる人もいるだろうし、
あの身体である以上、穴目当ての人もいる。
もしかしたら、無理矢理抱かれるかもしれない。
そんなの私が許せない…
あれ?私、モブリットさんにもっとひどいことしようとしてたような…
the bitter end
“Excessive love doesn’t make anyone happy.”
コメント
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勢いで書いたので絶対読みにくい文章ですが 私にしてはハッキリ受けがカントボーイである描写を入れた小説なので 是非頑張って読んでほしい所存。(拷問)