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「続いての種目は、2年男子による二人三脚です!2年男子は準備をお願いします!」
私たちは先輩たちと別れたあと、再び応援席に戻ってきた。
「きた!孤爪くん出る!」
小春は隣で放送を聞いて目を光らせる。
そっか、小春も、知ってたんだ。
隣でワクワクスタートを待つ小春を見て、自分にまた嫌気がさした。
なんで知ってるんだろう。話したのかな。
と思ってしまう自分に。
私はふと、小春が話していたことを思い出した。
『私、孤爪くんに告白しようかな。』
きっと小春は、告白のタイミングを考えているんだろうなと思う。
何となく、小春は孤爪くんに、この体育祭で告白する予感がした。
小春ならきっと上手くいくだろう。
だって、こんなに可愛い。
ふいに小春の笑う顔を見て、涙が出そうになった。
「そういえば、広瀬くんもこの種目出るって言ってた。」
私はそんな暗い気持ちを消すかのように、話題を変えた。
「そうなんだ!じゃあそれもしっかり見なきゃね!」
私は微笑みながら頷いた。
「よーい、ドン!」
1走者が同時に走り出す。
うちの学校の二人三脚は、1周200メートルのトラックを使って、1組100メートルおきに交代していくリレー方式だ。
トラックのコーナーとか難しいけれど、さすがは男子と言った感じで、難なく走り抜ける。
しばらく周回が続いた。
赤の方にも、白の方にも、広瀬くんと孤爪くんはまだ見つけられなかった。
二人三脚は終盤に差し掛かり、徐々に周りが盛り上がってくる。
「孤爪くん来ないな〜、最後の方かな?」
背伸びをしながらキョロキョロと孤爪くんを探す小春。
「どうだろう…広瀬くんも見当たらないけど…。あ。小春、見て。」
私は応援席とは向かい側を指さした。
残り3組の所に、孤爪くんと広瀬くんが見えた。
偶然にも、2人は同じ走順だった。
孤爪くんは3組の男子と、広瀬くんは同じクラスの男子と肩を組み、向かってくる走者を待っている。
小春も見つけたのか、顔をほんのり赤らめて胸元で手を握っていた。
孤爪くんは、私と同じことを小春にも、言ったのかなと、不意に思う。
孤爪くんだって、こんな可愛い子から応援されたいに決まってる。
孤爪くんが私にあー言ったのは、孤爪くんの優しさ…。
「さぁーアンカーまであと2組!今!白組と赤組、僅差でタスキが渡されました!」
私はハッと我に返る。
広瀬くんたちの3メートルほど後ろを孤爪くんたちが走る。
私たち白組は勝ってる。勝ってるのに…。
「頑張れ、孤爪くん。」
隣で小春がそう囁いた。
「おっと赤組!加速して追い上げます!」
やばい、抜かれちゃう。
広瀬くんを応援しなきゃなのに。
いや…私は。
頑張って…孤爪くん____。
心の中で、私は呟いた。
「赤組が一気に追い上げる!そしてー!おっと白組少しよろけたか!?
「抜いたー!土壇場の土壇場で白組を抜いたー!赤組がリードし次の走者にうつります!」
走り終わった孤爪くんは肩で息をしながら、足に繋がった紐を解いていた。
小春はとても笑顔で、孤爪くんを見て、手を叩いていた。
私も、一緒に叩きたい。
孤爪くんに、凄いって言いたいのに…。
「おい広瀬どうした!?」
「…え?」
「広瀬、どうした、立てるか!?」
「えっ…?」
「ゴール!赤組が差をつけて今ゴールしましたー!」
奥側のテントから、ピストルの音が鳴り響く中、応援席側の生徒たちの視線は、先生に肩を組まれて運ばれる、1人の男子生徒に集まっていた。
「え、なに怪我?」
「抜かれる時踏まれたんじゃない?よろけてたし。」
「3組の金髪じゃないほう、足引っ掛けたように見えたぞ。」
後ろの野次馬が、ザワザワと噂する。
「××…あれ、広瀬くんじゃ….って、××!?」
私はゆっくりと後ずさり、気づくと走り出していた。
野次馬たちをかき分けると、目の前に夜久先輩が見えた。
「あ、○○っ、さっきは…っておい!」
私は夜久先輩に話しかけられたが、足を止めなかった。
夜久先輩ごめんなさい。急いでるんです…。
本人に聞こえもしないことを私は心の中で呟いた。
私は息を切らし、一度止まって肩を上下に揺らす。
胸騒ぎがした。
嫌な予感がした。
よく分からない恐怖心が、自分を襲った。
私は再び体制を起こし、広瀬くんが運ばれた保健室へ走った。
広瀬くん…お願い…無事でいて。