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『…イギリスさん、貴方本当にどうされたんですか?』
私は山積みされた書類を目の隅に見定め、隣に座るイギリスさんに問う。
『いえ何も、ただここにいたいだけです』
私の問い掛けにイギリスさんはそう言い微笑みを浮かべる。
『そうですか…まあ別にいいんですが、仕事が出来ないので手を離してもらってもよろしいでしょうか?』
私はスッと視線を下に落とす。
私の右手はイギリスさんに握られている。その上離そうにも離してもらえない。
『…?何故ですか?昔はよくこう握っていたじゃないですか?』
イギリスさんはキョトンと顔をする。
『…確かに昔はそうでしたね、でも今はそんな事をする関係ではないじゃないですか?』
私は小さくそう返す。
確かにイギリスさんの言う事は間違ってはいない。昔、私とイギリスさんは恋人のような関係にあった。
だがそれは昔の話で今は違う。
それに今手を握る場が違い過ぎる。
今は仕事中だ。手を離してもらわなければ仕事が捗らない。
…けれど、イギリスさんは別の意味で解釈してしまったようだ。
イギリスさんはムッと頬を膨らまし、私の手を握る力がミシミシと増す。
『…そんなに嫌ですか?』
私を見据えるその顔は、昔、怒っている時に見せていた顔だった。
『わっ…』
スッとイギリスさんが立ち上がる。
かと思えば、ドカッと私の膝の上に乗り掛かった。
『私は今とても寂しい気持ちです、アメリカばかり見るから…日帝』
『日帝』そう呼ばれるのはいつぶりだろうか?
私はピクッと、不覚ながら反応してしまった。
…急に何ですか、日帝だなんて
私はフフッと笑う。
気付けば無意識のうちにイギリスさんの腰に手が回っていた。
『今ぐらい、あの頃のようにいたいんだ…』
目を細め、そう答えるその男は少しばかり嬉しそうに見えた。
『そうですか…』
私はギュッとイギリスさんを抱き締める。
フワッと、懐かしい匂いがした。
『…少しだけだからな…英帝』
end