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・ヘタリア×コナンのクロスオーバー小説です
・コナン要素の方が多いと思います
・なるべく気をつけますがキャラ崩壊注意です
・小説初心者です
・表現のおかしい部分もあると思いますがご了承ください
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オレは高校生探偵、工藤新一。
幼なじみで同級生の毛利蘭と遊園地に遊びに行って、黒ずくめの怪しげな取引現場を目撃した。
取引を見るのに夢中になっていたオレは、背後から近づいてくるもう1人の仲間に気づかなかった。オレはその男に 毒薬を飲まされら目が覚めたら――体が縮んでいた。
工藤新一が生きていると奴らに知られたらまた命を狙われ、周りの人間にも危害が及ぶ。だからオレは阿笠博士の助言で『江戸川コナン』と名乗り、奴らの情報を得るため、父親が探偵をしている蘭の家に転がり込んだ。
小さくなっても頭脳は同じ。迷宮なしの名探偵。
真実はいつも一つ!
「――昨夜未明、東京都渋谷区で発生した殺人事件について、警察は連続殺人の可能性があるとみています。」
テレビの画面に映し出されたのは、夜の渋谷の街並み。多くの人々が行き交う中、警察車両や捜査員が現場を封鎖している様子が映し出されていた。
「またか…」
アナウンサーの冷徹な声が響く中、コナンはテレビの画面に視線を固定していた。先月の初め、新宿で発生した殺人事件から連続殺人は始まった――
「これで6件目よね…まだ犯人の手がかりすら掴めていないんでしょ?」
同じくテレビを見ていた蘭が呟く。1ヶ月で6人もの人の命を奪ってきた犯人の手がかりがまだ何一つ掴めていないというのは恐怖そのものだろう。コナンの通っている帝丹小学校も下校時間を早める事態となったのだ。
「犯人は現場にいくつかの証拠品を残していて指紋も検出されてはいるみたいだよ?」
「え!?じゃあどうして犯人が捕まっていないの?」
「警察は国民全員の指紋を持っている訳じゃねぇ。一度犯罪に手を染めた奴か事情聴取された人の分しか無いんだ。だからこの殺人犯は初犯か、一度も捕まった事がないんだろうよ。ま、これだけの事件を起こしてるやつだし後者だろうがな。」
蘭の疑問に黙々と朝食を食べていた小五郎が答える。
「早く捕まってくれるといいね…」
そんな蘭の声に耳を傾けながらテレビ画面を見ていたコナンの視界に1人の男性が映り込む。黒髪黒目でだいたい20代くらいだろうか、一見普通の通行人のように見えるがどこか引っかかる。
「…今の人…..」
「(〇人現場だってのに随分と冷静だな…。)」
「ん?今コナンくん何か言った?」
「ううん、なんでもないよー!」
気取られぬように返事をした後、コナンは急ぎめに朝食をかきこんだ。
朝食を食べた後、コナン達はとある豪華ホテルの前に来ていた。コナンの同級生でもある少年探偵団の一員も一緒だ。
「わぁ〜!!すーっごい大きなホテルだね!」
「うめぇもんあるかな?」
「たっく…あいつら元気だな…」
「まぁ、いいんじゃない?」
ホテルを前にはしゃぐ元太たちを横目にコナンと灰原が軽く言葉を交わす。なぜこんな場所にいるのかというと、このホテルで鈴木財閥が中心となっている展覧会が開催されるということで園子に誘われたからだ。
「…にしても人が多くねぇか?」
周りを見渡すとたくさんの人がホテルの前で待ち構えていた。いくら展覧会だとしても流石に人が多い。それも半数以上が女性だ。
「あら?聞いてないの?」
「…何がだよ….。」
俺が理由を知らないことをいいことに灰原はフフンッといった顔をしている。
「実は今回の展覧会の目玉であるアメリアス・ラピスを怪盗キッドが狙っているとの噂みたいよ?」
「怪盗キッドが!!?」
キッドの名前にコナンが驚きの表情をする。
“怪盗キッド”
世界的に有名で変装の名人でもある。今まで幾度となくビックジュエルを巡りコナンと対峙してきた正体不明の怪盗だ。
「ほら、これ。」
そう言いながら俺に見せてきたスマホの画面には“アメリアス・ラピス”の文字とルビーのような赤色と、サファイアのような青色をした宝石の画像が映っていた。
「なるほど?それでキッドをひと目見ようと大勢の人が集まっているわけか。」
「そゆこと。」
「何の話をしてるんだ?」
コナンと灰原の会話を止めたのは元太だった。
「まさか、ボクたちに内緒で何かをするつもりですか!?」
「えぇ!?そうなの?コナン君。」
光彦の言葉に驚いた歩美がこちらを振り返る。なんでこういう時に勘がいいのやら…。
「そ、そんな訳ないだろ?ここのホテルの料理、美味しそうだなぁって話してただけだよ。なぁ灰原?」
「え?本当ですか灰原さん。」
「え、えぇ..そうよ。どうやら鰻もあるみたいよ?」
突然コナンに話を振られた灰原が慌てて言葉を返す。
「うっひょー!!マジか!?だったら早く行こうぜ!!」
「あ、ちょっと元太くん!」
「え、ま、待ってよ〜!!」
鰻の話に飛びついた元太がホテル入口に向かうのを慌てて光彦と歩美が追いかける。
「ふぅ、助かった…。」
「あなたねぇ…!?」
「わ、悪かったって…」
突然話を振られたことに少しご立腹な灰原を宥める。
「おいこらガキども!!置いていくぞ!!?」
「あ、やべっ!」
小五郎の怒声に灰原とコナンは慌てて入口へと向かう。
――急いで走っていく二人を遠くから様子を伺う不審な男たちがいることにまだコナンは気付いていないようだ。
ホテルのエレベーターで最上階まで上がり、ドアが開くと目の前には広々とした空間が広がっていた。
「広ぇ〜」
会場の広さに皆が驚いているとエレベーター前の噴水で待っていた園子がこちらに向かって来て一言…
「遅いわよ!」
「ごめん園子!」
「わぁ〜園子お姉さん、すっごい綺麗…!!」
「あら、見る目あるじゃない。」
歩美に服装を褒められて嬉しそうだ。確かに普段から高級な服を着ている園子だがドレスを着るのは珍しい。それに今日は化粧もしているようでより一層ご令嬢感が出ている。
「まぁ、今回の展覧会は日本国外から宝石や美術品を集めているから海外の人も多いのよ。だから今回は正装にしなさいっておじ様が…。」
「へぇ〜」
「そ・れ・に!!」
園子がこっそりと蘭に耳打ちをする。
「今回の展覧会の目玉である宝石をキッド様が狙っているのよ!」
「え!?嘘、怪盗キッドが!?」
「「「え!?」」」
「怪盗キッドがどうかしたのかよ?」
噂を知らなかった蘭の声は思わず大きくなってしまい、子供たちにも聞こえてしまったようだ。
「ちょっと蘭ったら!」
「あ、いや、なんでもないよ。」
慌てて誤魔化そうとするも時すでに遅し、子供たちはキラキラとした目でこちらを見ていた。
「もしかして怪盗キッドが現れるんですか!?」
「うそー!本当に!?」
「じゃあオレたちの出番だな!」
「「え゛?」」
子供たちの発言にコナンと灰原は苦悶な表情を浮かべる。
「なぁ…灰原…..嫌な予感がするんだけど…。」
「えぇ、私もよ…。」
そんなコナンと灰原をお構い無しに光彦たちは見慣れたポーズを取り、
「なんてたって!!」
「ボクたち/私たち/オレたちは!!」
「少年探偵団ですから!!」
とアクションポーズを決めた。
そんな彼らを横に園子達はハァ…とため息をつく。
「なんじゃ、やっと来たのか?」
奥の方から現れたのは鈴木財閥の相談役である鈴木次郎吉だ。キッドを捕まえる為、幾度となく対峙してきた人でもある。
「おお!小童も来とったか!」
次郎吉はコナンを見つけると傍に近づき
「実は怪盗キッドから予告状が届いてのぅ。小童の力を借りさせてくれんか?」
と周りに聞こえないぐらいの声量で囁く。
「うん、いいよ!」
次郎吉からの提案にコナンは二つ返事で引き受けた。
「流石、それでこそキッドキラーじゃ!」
「それで、その予告状を見せて貰えない?」
「あぁ、構わんよ。だが、ここで話すにはちと邪魔になってしまうから展示室の方でもいいかの?」
こくりと頷き了解の合図を出すと次郎吉は他の皆の方を振り向く。
「すまんがこの小童に便所の場所を案内してくる。園子よ、他のみんなに館内の案内をしてくれんかの?」
「あ、はーい!」
「なんだよコナン。トイレなら先に行っとけよ。」
「そーですよ。これから打倒怪盗キッドの作戦を考えるんですから!」
いや別に俺が行きたいわけじゃねぇよと思ったが心の奥でぐっと堪えた。
「わりーわりー!すぐに戻ってくっから!」
「こっちじゃよ。」
奥の通路の方へと歩いていったコナンと次郎吉の背中をじっと見ていた灰原は通路近くのベンチに座っている男性と目が合ってしまった。
「あ…。」
男性はぺこりとお辞儀をするとコナン達が歩いていった方へと向かって行った。その様子を見た灰原は、
「私もちょっとお手洗い行ってくるわ!」
と言って男性の後を追って駆け出して行った。
「え、あ!哀ちゃん!?待っ―」
突然の灰原の行動に驚いた蘭が呼び止めようとしたがもう既に姿は見えなくなっていた。
「なんだよ灰原のやつ…」
「まぁまぁ…。」
ムスッと不満そうなの顔の元太を光彦が落ち着かせる。
「さぁてガキんちょ共!この園子様が会場を案内してあげるわ!」
「「「はぁ〜い…」」」
「ほれ、ここじゃ。」
そう言ってコナンが案内されたのは展示室というよりも広い部屋だった。周りを見ると大勢の機動隊員達が忙しなく動いている。そしてスーツ姿の男性が機動隊員達に指示を出していた。
「中森警部、警備の方は順調か?」
「あんたに言われなくても問題ねぇよ。今度こそキッドのやつを捕まえてやる!」
中森警部と呼ばれた男性は警視庁捜査二課の中森銀三警部で、この男もまたコナンや次郎吉と同じく怪盗キッドを捕まえる為に対峙してきた人物だ。
「それで、次郎吉さん。予告状は?」
「おお、そうじゃったな。これじゃ。」
そう言って次郎吉は懐から1枚のカードをコナンに差し出した。カードには、
『深夜零時 西の大地の秘宝を頂きに参ります 怪盗キッド』
という文章と共にお馴染みのキッドマークが描かれていた。本物のキッドの予告状で間違いないだろう。
「ねぇ、西の大地の秘宝って“アメリアス・ラピス”のこと?」
灰原が見せてくれた画像を思い浮かべながら次郎吉に聞いてみる。
「当たりじゃよ。流石じゃな!」
「えっへへー」
「アメリアス・ラピスは13世紀のイギリス王国において、ある王妃が使用していたとされておる。瑛月の雫とも呼ばれており夜明け前の星空の光を思わせる輝かしさじゃ。」
「へ〜」
次郎吉の説明を聞きながらコナンは部屋の中心にある台座の方へと向かって行った。
「あれ…?」
コナンが困惑した声を出す。それもそのはず、何故ならその台座の上には何も無かったからだ。
「どうしたんじゃ?」
「ねぇ、何も乗ってないけどアメリアス・ラピスは別の場所で展示してるの?」
「あぁ、その事か。」
次郎吉は少しため息をつく。何かあったのだろうか?
「実はまだ宝石が届いてないんじゃ。」
「…..え?」
コナンの目がぱちくりと丸くなる。
「届いてないって…どういうこと?」
「まぁ、簡単に話すと届…「届けに来るはずだった奴がまだ来てないんだよ。」
次郎吉の声を遮って説明をしたのは中森警部だった。
「何でも乗るはずだった飛行機が天候で急にキャンセルになったんだとよ。」
中森警部のどこかイラついた口調からその届けに来るはずだった人に対して怒っていることは容易に分かった。
「まぁまぁ、天候で飛行機がキャンセルになったのなら責めたって仕方ないじゃろ。」
「因みに今日までには届くの?」
コナンがそう、次郎吉に聞くと、
「ええ、もちろん。届けに来てもらいますよ。」
と、背後から落ち着いた男性の声が聞こえてきた。
「ッ!?」
初めて聞いた声に思わずバッと後ろを振り返ったコナンは声の主であろう男性の姿を見て固まった。
目の前に居たのは黒髪黒目の20代ぐらいの男性―――そう、今朝コナンが見ていたニュースに映っていた男性だ。
「あなた…は…..!!?」
「どうかされましたか?」
コナンがテレビで自分を見かけたとは知らない男性はコナンが驚いていることに疑問を持ったようだ。
「い、いや…お兄さんのことテレビで見かけたから…。」
「テレビ…あぁ、例の連続〇人の現場ですね?私も朝にテレビを見ていたら偶然映っていて驚きました。」
「偶然あの現場にいたの?」
「えぇ、仕事の帰りに…まさかあのような現場に遭遇するとは思いもしませんでした。」
コナンがテレビで男性を見かけたことを伝えると男性は現場にいた理由を説明してくれた。
「(やっぱただの通行人か…。)」
「んで、あんた誰だ?」
コナンと男性の会話に間を入れたのは中森警部だった。
「おっと、失礼しました。私、こういうものと申します。」
男性は懐から2枚の紙を取り出し、中森警部と次郎吉にそれぞれ手渡した。
「律儀にどーうも……ってぇええ!?」
「なんと…!!」
2人は紙を受け取り、その紙に目を向けた瞬間、目をまん丸とさせ、驚きの声を上げた。
「な、何?どうかしたの!?」
紙を受け取っていないコナンは突然2人が声を上げたことに驚く。
「あんた、これ、本当のことか?!」
「ええ。間違っておりませんよ。」
驚く中森警部に対し、男性は至極冷静だ。こういった反応には慣れているのだろうか?
「ね、ねぇ!ボクにも見せてよ!!」
「おや、失礼しました。ではこちらを…。」
「ありがとう……ッ!!?」
男性から新しく紙を受け取ったコナンは書かれている文字に驚愕する。
『首相統括補佐官 本田菊』
首相統括補佐官とは首相の業務全般を統括する役割を持っている職業の事だ。つまり、この男性は総理の右腕と言ってもいい人という訳だ。
コナン達が驚いたのにはこの文字以外にももう一つある。それは男性の見た目だ。男性はどう見ても20代前半程…この役職に就くにはあまりにも若すぎるのだ。
「やはり…驚かれますよね。」
この反応を分かっていたのだろう男性は苦笑をしながらまだ驚いたままのコナン達を見る。
「え、えっと…本田さん?」
「どうかされましたか?コナンくん。」
「(あれ?名前なんて教えたっけ…?)」
自分の名前を知っていたことに疑問を持ちながらも問いかける。
「あ、いや、なんで本田さんがこんな所に?」
「確かにそうじゃな。いくらヨーロッパの秘宝とはいえ、総理の補佐官ともあろう方が何故こんな所に?」
落ち着きを取り戻した次郎吉もコナンと同じことを思っていたようだ。これに本田さんは口を開く。
「実は届けに来てくれる人が私の友人なんですよ。それに、ヨーロッパの秘宝をキッドに奪われてしまっては“国際問題”にもなりかねませんので。」
そう言ってにっこりと微笑むも目は笑っていない。その場の全員に寒気が走った。
「そ、そうなんだぁ…。」
「ハ、ハハ…。」
“国際問題”。中森警部はこの単語を聞いて乾いた笑いになっていた。
「さて、通路にいては寒いでしょう。そこで聞き耳を立てているお嬢さんも宜しければこちらへどうぞ。」
「お嬢さん?」
本田さんが声をかけた方向を見ると、そこにはドアから顔をひょこっと出した灰原が居た。
「灰原…!?お前、なんでここに…。」
姿を現した灰原がコナンの前へと歩いてくる。
「あなたがまた隠れてコソコソとしているから気になって見ていたらそこの本田さんって人と目が合って、気になったから着いてきたのよ。」
説明をする灰原の顔は少し怒っているようだ。
「わ、わりぃ…。」
「あなたが…灰原哀さんですか?」
「あ…はい!」
本田さんに突然聞かれた灰原は驚きながらも返事をする。
「そうでしたか。それなら私の友人とは馬が合うかもしれませんね。」
本田さんの言葉にコナンと灰原は頭に「?」を浮かべた。
「えっと…それって――」
ヴーヴー
スマホの通知音に気付いた本田さんがスマホの画面を確認すると安堵の表情をした。
「おや、そろそろですかね。宜しければお二人共、私の友人が来たらお話しませんか?キッドキラーくんには色々とお聞きしたいですから。」
「あ、うん!」
言葉の意味を聞こうとしたコナンだったが本田さんに言葉を遮られてしまった。
「そろそろって何がだ?」
「宝石を届けに来る方の事ですよ。今、到着したとメールが来ましたので恐らくそろそろ来るかと…。」
本田の予想は的中。展示室のドアが開かれ、2人の男性が展示室の中へと入ってきた。
そのうちの一人、特徴的な眉毛の金髪翠眼の男性の手にはジェラルミンケースが握られている。恐らくその中にアメリアス・ラピスが入っているのだろう。
「失礼。飛行機のトラブルで遅くなってしまった。」
「まさか急に天候が変わるとはねぇ〜?」
礼儀正しく詫びる男性の横では軽くウェーブのかかった長めの金髪に碧眼を持った男性がやれやれとした顔をしている。
「お久しぶりです。アーサーさん、フランシスさん。」
「よぉ、菊。」
「やっほ〜菊ちゃん!」
アーサー、フランシスと呼ばれた2人は本田さんと軽く挨拶を交わす。その親しそうな様子から2人が宝石を届けに来た人物で間違いないのだろう。
「お二人がアメリアス・ラピスを届けに来た方で間違いないかのぅ?」
「えぇ。間違いありませんよMr.鈴木。」
次郎吉の問いに答えると2人はそれぞれに紙を手渡した。そしてその紙を見た2人はまた目を丸くさせる。
「はぁあああ!!?」
「何となく予想はしていたが…。」
コナンもこれまでの様子から大体の察しはついていた。
「(日本の総理統括補佐官が来るほどの秘宝、届けに来る側も恐らくただものでは無いはずだ。)」
「ねぇ、それ僕にも…「 アーサーさん、フランシスさん、お二人の名刺、こちらの少年にも渡して頂けますか?」
「え?」
コナンが2人の名刺を見たがっている事に気がついた本田は名刺を渡してもらうように促す。
「何でこんな子供に…..って..あぁ、なるほど?」
「そういう事ね。わかったよ菊ちゃん。」
初めは怪訝そうな顔をした2人だったがコナンの顔を見ると納得した表情をする。
「はい、これ。あいつの分もあるから。」
「ありがとう!」
手渡された名刺を見るとコナンはまたもや驚愕して固まる。
「何よ。なんて書いてあったわけ?」
固まって言葉を発さないコナンに痺れを切らした灰原がコナンの持つ名刺を覗き込む。
「って…これ!!」
コナンの持つ2つの名刺、片方には
『イギリス大統領補佐官 アーサー・カークランド』
そしてもう片方には
『フランス大統領補佐官 フランシス・ボヌフォワ』
と書かれていた。
「(やっぱりそうか…。)」
「えっと、改めてご紹介しますね。私は総理統括補佐官の本田菊と申します。こちらが英国大統領補佐官のアーサー・カークランドさん、その隣にいるのが仏国大統領補佐官のフランシス・ボヌフォワさんです。」
本田さんが淡々と紹介をし、2人が頭を下げる。
「初めまして。警視庁捜査二課の中森銀三です。」
「鈴木財閥相談役の鈴木次郎吉じゃ。
して、アメリアス・ラピスはそのケースの中か?」
「えぇ。」
そう言い、アーサーさんがジェラルミンケースを開ける。その中には赤と青が混じったような色の宝石があった。
「これがアメリアス・ラピス…ですか。直に見るとより一層美しさが際立ちますね。」
そう言いながらケースの中を覗いていたのは本田さんだった。
「でしょー!?うちの宝石の中でも一際目立つ子でね!だ・か・ら、怪盗キッドに盗られちゃうと…ねぇ?」
宝石を褒められて嬉しそうだったのもつかの間、フランシスさんは中森警部ににっこりとどこか圧を感じる笑顔で笑いかける。
「それで?警備の方はどうなんだ?」
「あぁ?なんでお前らに…」
「中森警部、構わん。彼らには説明した方が良いじゃろ。」
アーサーさんに警備の事を聞かれ怪訝な顔をしたが、次郎吉さんの発言で渋々説明することとなった。
「あーまず、宝石を置く台には重量センサーと圧力センサーが付いている。宝石の重量が0.1gでも変わると直ぐに警報が鳴る。圧力センサーの方も同じようなものだ。」
「ガラスは防弾ガラスを二重にしているからガラスを割るなんて事は出来ない。そしてガラスと台は特殊なネジで止めており、簡単には外れない仕様になっている。勿論、展示室の外と中には機動隊員を配置する予定だ。」
「失礼。少しいいか?」
「…何ですか。」
ここまで黙って警部の話を聞いていたアーサーが口を挟む。
「この展示室の扉の方はどうなさるおつもりで?」
「警報が鳴った瞬間に扉が閉まるように設定されている。展示台と扉の距離からしてたとえキッドでも間に合わねぇよ。それに扉は一度閉まればパスワードと眼孔認証をしなければ二度と開かねぇ仕様だ。」
「なるほど。」
「んで、もういいか?まだやるべき事があるからな。」
「あぁ、構わない。助かったよMr.中森。」
説明を終えた中森警部は機動隊員達と共に展示室の外へと出ていってしまった。展示室外での警備態勢の確認だろう。すると、それに続いて次郎吉も
「他の美術品の方を見てくる」
と言って出ていってしまった。つまり、今この場にいるのはコナン、灰原、本田、アーサー、フランシスの5人だけとなる。
「さて、5人だけとなりましたし…少しお話しませんか?」
ニコッと微笑む本田さん。何故か彼の笑顔には逆らえないものだ。
「うん、いいよ!ボクも色々と気になるからね…。」
じっと探るような視線を向けるコナン。そんなコナンの様子に気付いた灰原はやれやれとした表情をする。こうなった時のコナンは面倒臭いのだ。
「さてと、何からお話しましょうかね?」
展示室内にある休憩用のベンチに腰掛ける。
「にしてもまさかこんな所で“ホームズの弟子”に出会えるとはな?」
アーサーさんが興味深そうにこちらを見てくる。
「な、何でそれを…!?」
「あれだけ目立てば俺の耳にも情報は入ってくるさ。テロを未然に防いでくれたこと、感謝する。」
ベンチから立ち上がり深々とお辞儀をする。
「ボクは探偵として暗号を解いただけ、感謝されるほどのことはしてないよ。」
2人の会話を聞いていたフランシスがふぅ〜ん?とアーサーの方を見つめる。
「それより、ボクも聞きたいことがあったんだ!」
「なんでしょうか?」
「お兄さん達、随分と日本語が上手だよね!アーサーさんとフランシスさんはハーフって訳でもないんでしょ?」
コナンの視線が2人へと移る。
「お兄さん達、何者?」
コナンの視線が鋭くなっても3人とも少しの動揺も見せる気配は無い。
「ん、あぁ。日本語は菊に教えてもらったんだ。何かと日本とは関わりがあるからな。」
「そうそう!菊ちゃんのとこの美術にはお兄さんも惚れちゃってねぇ〜!」
「へぇ〜そうなんだぁ…。」
2人を見る目線が鋭くなる。
「そういえば…」
今まで静かに会話を聞いていた灰原が話し出す。
「なんで私の名前を知っていたのかしら?江戸川君ならともかく、私のフルネームなんて新聞にも載っていないはずだけど?」
「おや、そんな所に気づかれるとは。でも秘密です。」
本田さんはふふふと少し笑っている。
「あら、そう?」
「(本当に何なんだ…この人達は…。)」
「そういえば坊主はなんでホームズの弟子って名乗ってたの?もしかしてホームズファン?」
ふと、フランシスさんが質問を投げかける。横を見るとアーサーさんが目をきらきらとさせていた。
「(まさかこの人…)」
「うん!そうだよ!もしかしてカークランドさんも?」
「アーサーでいい。」
「え?」
「お前の名前…アーサー・コナン・ドイルから取ったんだろ?いい名前じゃねぇか!」
「!!でしょ!?ボクも気に入ってるんだ!!」
「その歳でホームズの良さが分かるのか!確かにホームズの弟子と名乗るだけのことはある。」
満面の笑みで話すコナンとアーサー、その様子を見たフランシスは自分の発言を後悔する事になるとは思いもしなかった。
その後、再び中森警部らが戻ってくるまでコナンとアーサーはホームズの話で盛り上がるのだった。あとの3人は…ご想像にお任せしよう。