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#ちょんまげ
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目が覚めたとき、最初に感じたのは温もりだった。
「……ん」
まだ眠気の残る頭で、ぼんやりと状況を理解する。
身体に回された腕。ぴったりとくっついた体。規則正しい呼吸が、耳元で静かに響いている。
――ああ、そうだ。
昨日ターボーが泊まりに来て、それで……
そこまで思い出した瞬間、一気に顔が熱くなった。
「……っ」
思わず布団に顔を埋める。
全部、思い出してしまった。キスも、触れられたことも、名前を呼ばれたことも。
「……恥ずかしい」
小さく呟いたつもりだったのに。
「何が?」
すぐ後ろから声がして、心臓が跳ねた。
「っ、起きてたの!?」
振り返ると、ターボーが少しだけ眠たそうな顔でこっちを見ていた。
「ちょっと前にな」
低い声。少し掠れていて、朝特有の色気がある。
ずるい。こんな状況でそんな声出されたら、意識しないわけがない。
「……なんで起こしてくれなかったの」
僕がむくれて言うと、ターボーはくすっと笑った。
「気持ちよさそうに寝てたから」
そう言いながら、僕の髪を軽く撫でる。その手つきが昨日の延長みたいで、また胸がざわつく。
「……体、大丈夫か」
ふっと、少し真面目な声になる。
一瞬言葉に詰まって、それから小さく頷いた。
「うん…ちょっと変な感じするけど、平気」
正直に言うと、ターボーは安心したように息を吐いた。
「そっか。無理させてないならいい」
その言葉に、胸がじんとする。
本当に、この人は優しい。
「……ターボー」
名前を呼ぶと、「ん?」とすぐに返事が返ってくる。
「昨日、ありがとう」
ちゃんと伝えたかった。
「怖かったけど…でも、すごく安心できた」
ターボーの目が、少しだけ柔らかくなる。
「そりゃよかった」
短い言葉。でも、その中にちゃんと気持ちがこもってるのがわかる。
少しの沈黙。でも、気まずくはなかった。
寧ろ、落ち着く。
「……ちょんまげ」
「なに?」
「キスしていいか」
朝から何言ってるんだろうこの人は。
そう思うのに、嫌だとは思えなかった。
「…いいけど」
小さく答えると、すぐに顔が近づいてきた。
触れるだけの、軽いキス。
でも、それがやけにくすぐったくて、嬉しくて。
「……もう一回」
気付けば、僕の方からそう言っていた。
ターボーが少し驚いた顔をして、それからふっと笑う。
「朝から甘えすぎだろ」
「……ターボーが先に言ったんじゃん」
そう返すと、「確かに」と素直に認める。
それから今度は、少しだけ深いキス。 でも昨日みたいに激しくはなくて、あくまで優しくて、ゆっくりとしたものだった。
「……ほんと、かわいいな」
そんなことを言われて、思わず顔をしかめる。
「僕、三十四なんだけど」
「知ってる」
即答だった。
「それでもかわいいって言ってんの」
ずるい。こんなの、何も言い返せない。
「……ターボーだって、かっこいいよ」
言い返すつもりで言ったのに、なんだか負けた気分になる。ターボーは少しだけ目を細めて、「ありがと」と笑った。そのまま、またぎゅっと抱き寄せられる。
「今日、休みだよな」
「うん」
「じゃあ、もう少しこのままでいようぜ」
耳元でそう言われて、僕は素直に頷いた。
外はもう朝なのに、ここだけ時間がゆっくり流れているみたいだった。ターボーの胸に顔を預けながら、僕は目を閉じる。
昨日よりももっと近くなった距離。触れられる度に、ちゃんと安心できる。
「……好き」
小さく呟くと、すぐに頭の上から声が落ちてきた。
「俺も」
短くて、でも確かな言葉。その一言で、胸がいっぱいになる。
はじめてをあずけた夜の、その次の朝。
それは、少し気恥ずかしくて、でもとびきり甘くて。
これから続いていく日々を、そっと予感させるような時間だった。
END