6月。大雨の中、◯学生の私は学校から下校していた。
傘をさしているのにも関わらず、大きな雨粒は 私の身体全体をびしょ濡れにし、早く帰りたいな。とばかり考える。
そんな時、一匹の蝶がよろよろと雨に打たれながら傘へ入ってきた。思わず私は蝶に手を差し伸べ、蝶が安心して休憩が出来るスペースを作った。
手に蝶を乗せ、家の玄関までついてしまった。お別れをさみしく思うが、中々手から離れてくれない。少しつよく腕を振っても、しっかりとくっついている。
仕方がないので私は蝶と家に入ることにした。
蝶を潰さないよう、慎重にカバンを下ろし、しばらく蝶のことを見ていた。黒く、少し緑がかった、美しく大きな蝶。蝶を見ている時間はとても楽しかった。
だがそろそろ親が帰ってくるので、流石に蝶を外へやらなければいけない。
突然、私の中に、変な感情が生まれた気がする。目が蝶にしか離せない。欲望がどんどんと強くなる。
私の欲望を、
私は受け入れた。
私は、手にいる蝶を片手でぐしゃりと握りつぶした。その瞬間からほんの少しあとから、気味の悪いドロリとした液体が、握った手から溢れでた。気持ちの悪いけど、とてつもなく気持ちがいい。
蝶の羽が折り曲がっている。綺麗な粉が、いろんなところについていて、少し邪魔に思うほどだった。
さっきまで命のあったものが私のしょうもない興味で今、さっき亡くなったと考えると、首筋あたりから腕までぞわりとした感覚が襲った。
この蝶のことが、とても美しいと感じる。とても。とても美しい。蝶を触るとシャリっという感触が、生き物を感じさせた。
だがもうその美しさは消えてしまった。
私はゴミ箱を持ってきて、虫を捨てた。跡形もなく、親にバレないように。ゴミが部屋に落ちていることなんて、親はとても考えられないだろうから。