恋をした。曇りの日の、お昼休みの屋上。友達が休みだからと、お弁当を1人で食べようと来た屋上。そこには先客がいて…。彼が手を空へ向けなにかのマークを描くと、手を伸ばした先の雲から光がさしてきた。その光をうける彼の姿が本当に綺麗で。夢かと思った。だって小説とか漫画とかでしか見ない、魔法使いが目の前にいる。彼のことは知っている。学年で人気者の相崎 晴一くん。私からしたら遠い存在の男の子。
「綺麗…。」
初恋をした。人気で綺麗な男の子に。きっと片思いで終わるであろう、恋をした。
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3月。去年まで1年生だった私もあっという間に2年生。仲の良かった友達とはクラスは離れてしまって…。でも唯一知っている名前が1番上にあった。
「相崎…くん。」
なんてことだ。絶対片思いで終わると思っていたのに。少し(と言ってもmm単位)の可能性ができてしまった。いざクラスに行くと、黒板に座席表が貼ってあった。6列6番目まで席がある。私は廊下から2列目の3番目の席。右隣の席が…相崎くん。ひとクラスに36人もいるのに、あ〜しの間の苗字がなぜこんなにも少ないのだ。私は今まで15番目とかだったのに。1人考えながら席に座ると、左隣の男の子が話しかけてくれた。
「あなた麗さん?よろしくね。」」
「えっ?、あ、えと、お願い…します。」
いきなり話しかけられたことに困惑しながらも、とりあえず返事をする。…変だったかな…?
「ははっ!そんなに怖がらないでくれよ。こう見えても動物好きだから。」
「な、なるほど…。」
確かによく見ると、ピアスが大量で、髪も赤茶っぽい色だ。…失礼かもだけど、ヤンキーみたいだ。なんて言えばいいのかわからず、変な空気になってしまった。男の人とあんまり話したことないもんな…。そういえば名前聞いてないかも。聞いて見ようと思ったその時、女の子が近づいてきた。
「ちょっと龍太〜?誰と話してんの?変な空気じゃんw」
さっきから明るい人ばっかり近づいてくる…!もう無理…帰りたい…。というか、この人『龍太』って言う名前なのか。女の子がこちらを向いてこう言う。
「はじめまして!あたし笹川 夢乃!普通に夢乃って呼んで!あなたは?」
笹川ってことは、私の前の席の子だ。
「わ、私は清水 麗…。よろしくね?」
「あはは!なんで疑問形〜?麗か〜。…」
突然黙り込む夢乃…ちゃん。なにか変なこと言っちゃった!?疑問形だったのがダメだった!?う〜どうしよう。前の席なんて関わりありそうなのに…!するといきなり顔をぱっとあげて、
「決めた!うららん!」
と言った。
「…へっ?」
「いやー、うららんいい響き!やっぱりあたしのことゆののんって呼んでよ!」
もしかして、うららんって私のあだ名…?そう思うと嬉しいのか恥ずかしいのか、顔に熱が集まっていくような気がした。
「わ、わかった!」
「いぇーい!もううちら親友〜!」
「おい夢乃。俺のこと忘れてねぇか?」
「あっ、ごっめ〜んw」
そう言って龍太くんと話し始める夢乃…じゃなくてゆののんを見る。茶色くて中が黄色の髪。意外にもピアスはしていなく、イヤーカフをしている。お化粧もキラキラはしているけど、主張しすぎていない感じだ。この2人は前のクラスが一緒だったのだろうか。
「ねぇ麗。」
いきなり名前を呼ばれて、思わず声がうわずる。
「ふぁいっ!?」
「あぁwいきなり呼び捨てしてごめんwえっとなんだったかな…。あぁ、そうだ。晴一には気をつけろよ。あいつ常にピカピカオーラ出てるから。」
「そうそう。うららんには効果抜群だよ〜っ!」
なんかゲームみたいだ。最近人気のアビリティバトル。略してアビバトって言う、能力で戦うバトルロワイヤルみたい。実は私、こう見えて結構強いのだ。頭を使いながら敵を倒すのは難しいが、倒せた時のやったぞ感が他のバトルロワイヤルゲームよりも強い。
「アビバト…。」
考えていたら口に出ていた。ど、どうしよう!絶対変なやつだと思われる…!!
「待って、麗ってアビバトやってんの?」
「え!まじ!?うちらもなんだけど!」
「そ、そうなの!?」
や、やっぱり人気のゲーム!!こんな身近にやってる人がいるなんて!
「俺も〜!」
…ん?今知らない声が聞こえたぞ。思わず声がした方に顔を向けると、ものすごいピカピカオーラで一瞬吹き飛んだような感じがした。
「あら、うららん、晴一のサンシャワーくらったみたい。」
「アビバトの話っしょ?俺もやってる〜。」
「お前の天然サンシャワーで麗がやられたぞ。」
謎の現象が収まって、改めて見る。相崎 晴一。確かにピカピカオーラが出ていて、少し近づきにくい。染めていないのに少し茶色い髪、髪と同じ色の瞳。チャラいと言うか、ヤンチャって感じだ。
「ねぇうらっちー、俺に勉強教えてよ。」
「………え?」
まさかの一言に、何故かゆののんと龍太くんも固まっていた。彼は座っている私の目線に合わせて、改めて言った。
「勉強教えて?」
片思いしてる人の顔の近さと、言っていることを理解するために使った頭が、秒でショートしてしまった。というか、うらっちーって言ってた?
「う、うららんしっかり!晴一はなんでもできそうに見えるだけで、実際はなんにもできないから!」
「そーそー。俺ができるのは運動だけー。」
とりあえず、勉強を教えてあげればいいのか。これから。でもなんでだろうか。少なくとも、補習しているのを見たことがない。
「でも補習していないよね?」
「うん。でも違うんだよ〜。」
そう言って龍太くんの方を見る。これは…彼がなにか知っていそうだ。
「龍太くん。なにか知ってるでしょ。」
すると明らかに龍太くんはギクッとしたので、ますます怪しい。ゆののんも怪し〜!と言いながら龍太くんを見る。しばらくの沈黙の後、龍太くんはこう言った。
「う、麗が来週の月曜日に夢乃みたいになったら教えてやるよ!」
「あー、言ったわね!大丈夫うららん!あたしが手伝うから!」
そうなると私たちの方が有利だが、龍太くんは何も言わない。ということは、どんな手段を使ってもいいのだろう。でも今はそんなことより、晴一くんのことだ。
「ねぇ、勉強って…。」
そう聞こうと思ったら、ちょうど先生が来てしまった。みんなが各々の席へ座ったのを確認して、先生が話し始める。そのうちに、自己紹介の時間となった。じゃんけんで、後ろからになったので、さっきのメンバーだと、龍太くんが最初だ。
「高峯 龍太っす。誕生日は7月18日。趣味はカラオケとか、ゲーム。彼女ぼしゅーちゅー。じゃ、よろしくお願いします。」
なぜか言っていることは普通なのに、なぜかチャラく聞こえてしまった私の耳は、おかしいのだろうか。そしてさっきのメンバーで、次は私。
「えっと、清水 麗です。誕生日は12月26日。趣味は、ゲーム、読書です。景色の写真集をよく見ています。よろしくお願いします。」
ふぅ。緊張した。自分のことなのに、なんだか不思議な感じだ。次はゆののん。
「よっす〜!笹川 夢乃でっす!誕生日は2月5日!趣味はたくさんありまーっす。みんなよろ〜☆」
なんかゆののんらしい…。きっと友達とかたくさんできる…というか、いるんだろうな。私もあんな感じになれたらなぁ…。そして最後は晴一くんだ。
「相崎 晴一です〜。9月1日生まれの、O型です。好きな食べ物はたくさん、嫌いな食べ物もたくさん。趣味は外にいること。よろしく〜。」
ゆ、緩い…!屋上の時はあんなに綺麗で、こう…儚い?感じだったのに。晴一くんって、不思議な人だな。まるでアビバトのPSSRキャラの無能力の子みたい。そんな感じでHRも終わり、私たちはまた集まった。(と言っても、席が近いからそんなに移動はしない。)その時にさっき聞けなかった勉強について聞く。
「あの、晴一くん。勉強ってどんな感じで教えればいいの?」
すると晴一くんはふと考える仕草をして、
「まあ、明日忘れてなかったら言うよ。」
といった。自由な人だ。でもギャップ萌というのがよく分かった気がする。
「ねね。うちらミール交換しとこうよ!」
ミールは俗に言うメッセージアプリだ。まだミールを交換した友達は10人もいないので、個人的にはとても嬉しい。
「じゃあ俺グループ作っとくわ!」
龍太はそう言うとメモにグループ作成と書いていた。
「じゃあグループの名前はアビリティ部だね。」
晴一くんはそう言って、龍太くんのスマホに書き足した。勝手に構われて龍太くんは苦虫を噛み潰したような顔をしたが、「それもそうだな。」と言って、残していた。
「んじゃ、また後でね!」
そう言ってゆののんは帰っていった。それを見て龍太くんも、
「お先ー。」
と言って帰っていった。私も電車の時間的にもうでないと間に合わない。
「じゃあ私も先、帰るね。」
そう言うと、晴一くんは私の手を掴んでこう言った。
「俺も連れてって〜。」
まぁ断る理由もないので、晴一くんを引っ張りながら歩く。階段ではヒヤヒヤしたが、ずば抜けている晴一くんの身体能力で何とかなった。どうやら駅の近くに家があるらしく、電車に乗るわけではないようだ。
「んじゃ、またね〜。」
そう言って帰る晴一くんを見送って、さっきまで一緒に歩いていたんだ。と改めて実感する。
その日、私はベットで『みんな駅の方に行くなら、みんなで帰れるな。』とか、『歩いてる途中のカフェ、みんなでいきたいな。』とか、『ミールの会話とアビバト面白かったな。』と思っていた。ただ、晴一くんと帰ったことに関しては、恥ずかしすぎて喋れなかったこととかを思い出してしまうので、なるべく考えないようにしておいた。…ほんと、自由な人だったな。 また明日、みんなと話そう…。
conuioue to next time…
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