テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「ねえ滉斗」
「ん?」
「今、好きな人いる?」
あの頃と同じ質問。
でも意味は全然違う。
滉斗は少しだけ考えてから、正直に答える。
「いない」
間を置いて、続ける。
「ずっと、いなかった」
和葉の目が揺れる。
その言葉の重さを、ちゃんと理解する。
今度は滉斗の番だった。
「和葉は?」
和葉は少しだけ笑って答える。
「いないよ」
そして——
一歩、近づく。
あの頃はできなかった距離。
でも今は、できる。
「でもね」
声は震えていない。
まっすぐだった。
「ずっと好きな人はいた」
滉斗の呼吸が浅くなる。
逃げない。
もう逃げないと決めたから。
和葉は続ける。
「ちゃんと忘れようともしたし、別の人も好きになろうとした」
「でも無理だった」
一歩、また近づく。
「滉斗だったから」
静かな告白。
あの頃とは違う、覚悟のある言葉。
滉斗はゆっくり息を吐く。
もう、言い訳はない。
守るための距離も、もう必要ない。
「…遅すぎだろ」
少しだけ笑う。
でも目は真剣だった。
「ほんとだね」
和葉も笑う。
涙は出ていない。
代わりにあるのは、確かな決意。
滉斗は一歩踏み出す。
今度は、止まらない。
86
322
58
「俺も、ずっと好きだった」
あの時の続き。
止まっていた言葉の先。
「やっと、言える」
距離がゼロになる。
でも今回は、“越えてはいけない線”じゃない。
ようやく許された距離。
和葉は小さく笑う。
「じゃあ今度は、ちゃんと進めるね」
滉斗は頷く。
「ああ」
もう、止める理由はない。
時間も、立場も、全部越えてきたから。
遠回りしたぶんだけ、確かな気持ちになった。
夕焼けじゃない、夜の街の中で——
今度は、どちらも振り返らなかった。
隣にいるのが、当たり前になったから。
「ありがと」
「ん?」
「忘れないでいてくれて」
「だって…好きだったから」
コメント
4件
うわぁ、好きだ
読み終わりました……最後の「だって…好きだったから」で、ぐっときましたね。あの頃と違う、大人になった和葉さんと滉斗さんの「今度はちゃんと進めるね」という台詞に、遠回りしたからこそ掴めた確かさを感じました。タイトル通り、本当に綺麗な最終話でした。お疲れ様でした、Liella🍏さん🌷