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蒸し暑い夏が過ぎて、涼しくて虫も現れないいい季節がやって来た。
きっと周りから見れば最高で最強なこの季節、けれど私は嫌いだった。
『いたいた、秋菜ちゃ〜ん!』
……私の名前にもある、この"秋"という季節が。
「もう!探したよ〜!?」
理由はまた後でにして、一応紹介しておこう。
私の名前を叫びながら走ってくるのは、幼馴染でもあり同学年の夏希鈴菜。
小柄で可愛くて底抜けに優しい、オマケに男子からモテるという 圧倒的ヒロインな女の子。
「…ごめんごめん、先生に呼ばれててさ」
"叶 秋菜" それが私の名前。
根暗で地味、おまけに派手な赤色の目に山吹色の髪という最悪な見た目を兼ね備えている。
まぁ…鈴菜の隣に居たらこんな私は霞んでしまうから構わないのだけれど。
「そっか!…一緒にお昼食べたくて、だめ…かな?」
自分のお弁当を手に持ちながら、恥ずかしそうに首を傾げて聞いてくる。
私が男だったらまんまと鈴菜に惚れていた事だろう。
生憎と女でも惚れてしまいそうな雰囲気だが、私はそんな気を一切起こしていない。
私がひねくれているからだろうか、それは分からないけれど。
「……いいよ?何処で食べよっか。」
「えへへ、じゃあ中庭!」
「ホント好きだね、中庭。この間もそこだったじゃん」
「お気に入りスポットなんだも〜ん!」
─
他愛もない会話を続けて、早くも中庭につく。
中庭には珍しく沢山の人が集まっていて、その誰しもが一点を見つめては騒いでいる。
「わっ、みてみて!」
「写真部の"遙筮 秋廣"先輩だよ!」
遙筮秋廣。
写真部という部活のたった一人の部員であり、学校では1目おかれた存在。
近寄り難いオーラと、皮肉な事にその淡麗な容姿が周りから持て囃される要因だろう。
「……人多いし早く食べて戻ろ、うるさいし。」
「秋菜ちゃん冷たっ!もっときゃーきゃーしたっていいのにぃ…」
「だって私興味無いし…。」
大体写真撮るイケメン?に何をそんな騒ぐ事があるのやら……。
あ。
『……』
やば、目合っちゃった…。
どうか何も無く終わりますように。
たったと軽い足音が響く。
その足音は彼女の前で止まって、下を向いていた彼女に影が落ちる。
『あの……』
ぎゃぁぁぁ!!こっちきたぁぁぁ!!!
えっなに!?なに!?頼むから来ないでよ…!!
「…なんですか?」
『…いきなりなんだけど、写真を撮る被写体になってくれない?』
は!?!?
「…嫌です。」
思わず即答してしまう、隣にいる可憐な美少女ではなく何故私なのか?という疑問しか浮かばない。
『だよな〜〜…』
だよなって…なら初めから聞かないでよ…。
『よし決めた、俺これから君の事ナンパし続ける!!』
ん??
『絶ッ対君の事写真に収めたいんだ、OK貰えるまで何度でも言うから!!』
は???いやいやいやいやいや!!
「ごめんなさい無理です…!!!!」
こうして秋菜と秋廣の 何ともまぁシュールでおかしな日常が幕を開けるのだった。