コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「マスターぁぁぁぁ!!!」
血だらけで倒れている男性に白髪の狐耳と尻尾が生えている私は急いで近づく。焦った表情で男性を上半身だけ起こし支える。
「マスター! しっかり!」
「海奈か……すまねぇ。俺はもぅ……」
「何を言っているんですか!? あなたにはまだ」
マスターは私の頬に右手を添える。その瞬間、私は察した。もぅ、マスターは長くはないと。
マスター……あなたは世界の王。あなたが死んでしまえば多くの犯罪が起きてしまう。
世界の秩序を護るのが役目。
死なせない。絶対に死なせない! しかし、何も出来そうにない。魔法も使えない私に何が出来る?
背負っているアサルトライフル銃しか持っていない。どうする?
「海奈……俺は死ぬ。後はお前が世界の王として世界を奴から護ってくれ。リリカの事も頼む」
「……マスター……私なんかがなれません!」
「お前なら大丈夫だ」
マスターは吐血する。そして、ゆっくり瞳を閉じる。
「マスター! マスター!」
私は必死に呼び掛けながらマスターを揺らす。しかし、マスターは反応なし。
マスターを寝かし、静かに立ち上がる。その表情は怒りに満ちている。
「陸華ぁぁぁぁ!!!!」
近くにいた黒髪で私と同じ狐耳と尻尾が生えている少女黒金陸華に向かって跳び出す。
陸華はにやけている。余裕のある微笑み。
私は右拳を振るうが陸華にあっさりと避けられ、右足で蹴られる。飛ばされて転がる。
体勢を立て直すと、陸華は跳んで右手に持っていた刀の刃先を私に向けて落ちる。
直ぐ様避ける。刀は地面に突き刺さるが陸華はすぐに抜く。
「あたしを殺ろうなんて、お前にできるのか? 魔法も使えないお前に?」
「それでも私はあなたをぶっ飛ばす」
巨悪を討つ。それが世界の王としての使命。マスターから受け継いだからには、例え家族であっても悪を討つ!
「そうかよ。だったら、てめぇを殺すしかないな!」
陸華は左腕を動かせない。それが好都合なのだが、彼女の強さはハンデがあっても劣る事はない。
陸華は刀を振るう。斬撃が私に向かって放たれる。私は横に跳んで避けて、アサルトライフル銃を陸華に向け撃つ。
「嘗めているのかよ!? 轟け! 紅桜!」
陸華の背中に炎の翼が一対生え、右手の刀ごと炎が包む。
彼女の魔法と刀の能力が合わさった姿である。
刀を振るう。炎の斬撃が私に向かう。その威力はすさまじく、私は何も出来ず斬られる。
仰向けに倒れ、胸から出血する。私を見届けた陸華は跳んで去っていく。
「じゃあな、海奈。またいずれ会うだろう」
私は動けずにいる。そんな私に雨が降りだす。まるで私を死へと誘うかように降り注ぐ。
(……悔しいなぁ。私に力さえあれば、マスターは……)
あれから二年が経った。私はひたすら犯罪者を捕まえまくった。中には魔法を使う魔導士もいて、闘う事も余儀なくする羽目になった。
とある建物。私はそこのある部屋にやって来た。
「おぉ。やっと来たねぇ」
赤髪で所々に黄色かかった女子生徒が椅子に座っていた。
彼女は伊南川アリサ。マスターの実の妹で、私の上司。
「伊南川先輩……私は」
「他の人から聞いたよぉ。君はよくやったよ」
「いえ、まだ足りません」
両手を握る。悔しさが混み上がる。気がつくと涙が流れている。思い出してしまう。マスターの事を……マスターと共に過ごした日々を。
伊南川先輩は私を見て、立ち上がり私に近づき、そっと手を頭に添える。
「ありがとね。兄の最愛の人でいてくれて。でも、これからは自分のために生きてね」
涙が止まらなかった。数分間、私は泣き続けた。
マスター……あなたの居ない世界なんて寂しすぎるよ。
それから私は先程までいた建物を後にする。
「行き場がないなら、ここに行くといいよぉ」
伊南川先輩に言われ地図を渡された。その地図を頼りに、私はとあるマンションへとやって来た。
(ここは一体?)
マンションの一角にある号室へ向かい、チャイムを鳴らす。
中から金髪で狐尻尾が生えた左サイドテール少女が扉を開けて現れる。
「どちら様で?」
「ん、黒金海奈。よろしく」
私は右手を差し出す。
「おぉ! アリ姉から聞いていた人だね! ようこそ、我が家へ!」
少女も右手を差し出して、私と握手する。そして、私は中へと入る。
LDKの間取りになっている。綺麗に掃除されていて、とても独り暮らしの部屋とは思えない。
「とりあえず、自己紹介ね。私、伊南川リリカ! よろしくね!」
「うん。よろしく」
ん? 伊南川? マスターや伊南川先輩と同じ名字……それにマスターがリリカを頼むと言っていた気がする。
ダイニングにある机の上の写真を見つける。写っているのはマスターだった。
「かい姉? 大丈夫?」
「えっ?」
リリカにそう聞かれて気がつく。私は涙が流れていた事をーーまたマスターの事を思い出してしまった。
「パパの事、大切してくれたんだね」
そうか。リリカはマスターの娘なんだ。それに少し驚く。
そんな時、リリカのスマホが鳴る。電話のようだ。
「はいはーい。もしもし? あーうんうん。りょーかーい」
リリカは電話を切る。私の手を握り、引っ張る。
「何処に行くの?」
「そりゃー、悪党を懲らしめにだよ」
何がなんだが分からないまま、廃墟ビルへやって来た。
「ここに闇組織の連中がいるらしい。そいつらは違法麻薬の取引していると、アリ姉から」
「なるほど。なら、捕まえなくちゃね」
私はアサルトライフル銃の準備をする。
リリカと私は警備している雑魚の目を盗み、裏にある階段へ向かう。
裏口から中へ侵入して、警戒しながらとある部屋まで行く。
部屋に行くと、私らは角に隠れて様子を見る。どうやら、男が三人いる。中心にいる男がサガ・レッドグリス。私が警察にいた頃に見たことがある。
私らは跳び出す。
「そこの三バカトリオ!」
「ほぅ。バカはどっちかな?」
私らの周りに複数人の男たちが現れる。これは罠だったか……かなりまずいかも。
リリカを見ると余裕そう。すると、窓ガラスが割れて水色髪のツインテール少女が現れる。
「何だ!? てめぇ!」
雑魚たちが騒ぎ立てる。私たち三人に雑魚たちが襲いかかる。
リリカは左手に炎を纏って振るい凪ぎ払う。水色髪の少女は跳び出して、回転しながら刀を振るう。私はアサルトライフル銃を撃ったり、蹴ったり、殴ったりして雑魚たちを倒す。
雑魚たち全員倒れて気絶している。
「ふぅ。全員やったみたいだな。ありがとな、リナ」
「別に。アリサさんからの命令だから」
「つれないなぁ。このこの」
リリカはリナに右膝をつんつんと当てる。怒ったリナに結局頭を殴られる。
泣きながら頭を抑える。
「痛いよぉ。リナぁ」
「二人とも、奴がいない!」
三人が辺りを見回しすと、サガの姿がない。逃げられた!?
「しまった!? 逃げられた!?」
「お姉ちゃんが変な事するから」
「何もしてないよ!?」
私はゴーグル型眼鏡を取りだしつける。ピロローンと鳴り、起動する。
これは様々な機能がある人工AIを搭載したゴーグル型眼鏡。音声機能だけない。
眼鏡を通して床を見ると、AIがサガの足跡を発見する。
私がその足跡を辿る。リリカとリナも気付き私の後を追う。
「かい姉?」
三人は足跡を辿ると、廃墟ビルの屋上に到着した。
足跡はそこから消えている。
「ここまでかも」
「えぇー。逃がしたじゃん」
「お姉ちゃんのせい」
「私のせいじゃないもん!」
頬を膨らませて、口を尖らせて怒るリリカ。可愛い。
私たちは帰宅する事にした。
自宅。お風呂に入ろうとして脱衣場で服を脱いでいると、チャイムが鳴る。
(ん? 誰だろ?)
シャツとパンツだけの姿で玄関の扉を開ける。そこにいたのはリリカだった。
「おぉ。かい姉大胆だねぇ。おっぱい大きいし、エロいぜ」
思わずリリカを殴ってしまう。
てか、この格好で出るのまずかった。リリカだったから良かったけど。
とりあえず、中へ入らせる。
「うぅ。痛いよぉ」
何回殴られるのだろうか? ほんとにマスターの娘か疑われる。
「私、お風呂入るからリビングで待っといて」
「一緒に入る!」
「ん、分かった」
ちょっと待て。一緒に入る!? 流石に私でも引いてしまうよ。
結局、一緒に入る事に……湯槽に浸かる私とリリカ。
リリカは私の胸を見つめる。
「大きいなぁ。どれどれ」
リリカは両手で胸を急に触る。
「ちょ!? 触らないで! あん!」
「軟らかぁーい。触り心地最高! まるでママみたい」
「この……仕返し!」
私はリリカの尻尾を掴む。
「にゃ!? 尻尾はらめぇぇぇ!!!」
しばらくして湯槽にのんびり浸かる。
「どうして、リリカはここを知っているの?」
「アリ姉から聞いてね。一緒に住もうと思って」
「えっ? 一緒に住む!?」
「アリ姉から聞いてない感じ? 私たちさ、今日から相棒なんよ。だから一緒に住む事になっているよ」
はぁ!? 伊南川先輩から何も聞いてないぞ! 相棒って何だよ! 別にこんな可愛い子となら構わないけど急すぎだよ。
風呂から上がり、リビングへ向かう。
「んー。やっぱり、パパの匂いがするぅ」
まぁー、マスターと暮らしていた部屋ではあるから。
「今日からよろしくね。かい姉!」
「ん、こちらこそよろしく」
これが私とリリカの出会い。
マスターが居なくなった世界で私はマスターの娘と出会った。何かの運命なのか?
それは分からないが、私は特別な何かを感じる。
マスター……私はこの子となら生きていけそうです。必ず、世界の王になって、世界の秩序を護ってみせます。天国から見守っていてください。
私とリリカは一緒のベッドで寝るのであった。