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1 - 僕だけの孤独な世界

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2024年11月02日

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夕方。雨が降っていた。雨で濡れた制服が体にベッタリと張り付いていて気持ちが悪い。「寒い…。」

先刻、僕は住んでいた寮を追い出された。僕は寮のみんなから嫌われていた。僕は本当のことを云ってるのにみんなは其れを聞いて顔を真っ赤にしたり青白くしたり殴りかかってきたり突然泣き出したり訳が解らなかった。僕が本当のことを云う度に殴られ蹴られた、僕がみんなの空間に居ると拒絶されている様な気がした。僕は悪くないのに。そんな世界にもう僕は疲れてしった。

僕は川の手すりに足をかけ、手すりに乗る

「この高さなら…死ねるかな」

訳の解らない世界なんてもう御免だ

「御免なさい、父上…母上……」

その時背後から声をかけられた

「ねえ、死ぬの?」

背後を見る。そこに立っていたのは傘をさした4歳ぐらい年下の物騒な男の子がいた

「そうだよ、僕は死ぬんだ。君には関係ないよ。」

男の子はその言葉を聞き、薄気味悪い顔でニヤリと笑う

「じゃあ僕も君と一緒に死なせてくれ。」

「……は?」

なにを云ってるんだ此奴は。僕と死ぬ?

「えぇ〜っと、2人でこの世を去る…その〜…なんて云うんですかねぇ〜……」

「心中」

「そうだそれだよ!!」

もう訳が解らない。死ぬ前にこんな疲れる奴と喋ってるなんて…僕はつくづく運がないんだな

「処で…何故死にたいと思うのかな?」

男の子は先程の様な薄暗い表情をしていた。もういいや。めんどくさいし、どうせ死ぬし

「…僕には何も無かったんだよ。この世界に生まれても何も無かった。両親は死んじゃったし人間関係もめんどうだし、“人は限りなく孤独だ”ってこともね。誰も僕を見てくれない唯一理解しくれた父上と母上は死んじゃったし、今この世界で自分の事を理解してるのは僕だけ、僕を孤独にさせるぐらいならそんな世界とはさよならだよ。」

久しぶりにこんな長時間人と喋った気がする。

それを聞き男の子は少し笑う。僕には其の笑顔が薄気味悪く見えた

「“人は限りなく孤独”か_面白いね。」

そう云い男の子は急に僕の手を掴み、濡れたアスファルトに落とした

ドサッ

「いっ!?つ、冷たっ!一寸何してくれるのさ!!」

そして男の子は先程より大きく笑う

「うふふっ、君はまだ逝けない。否、未だ逝かせないよ。」

逝かせない……?

「一寸、其れってどういうこ…」

男の子が傘を落とし、僕の手を強く引いた。そして突然、唇に柔らかいものが押し付けられる

「んぅっ…!?」

5秒ぐらい経った後、漸く唇を離してくれた

吐息が混じり雨の音すら消えてしまったかのように思えた。近くで見れば色っぽい顔をしていて少し苛ついた。暫くして、男の子が口を開く

「……君の孤独は埋められる。私が埋めてみせる。だから_私と暮らさないかい?」

暮らす……?少々混乱した。慥かに暮らす所には困っていたけれども、いきなり初対面の奴と同棲なんて…

ぽかんとしていた僕だけど少し冗談交じりで云ってみた

「……僕は、別にいいけど…、」

嗚呼、やってしまった…そう答えた時にはもう遅かった。その子は先刻程までの張り詰めた笑みとは真逆で幸せそうな顔をしていた。どうやら此が君の本当の笑顔なんだろう

そんな顔をされては後々断るのができないじゃないか

「では、よろしく……あ、そう云えば、名前は?」

「らんぽ…、江戸川乱歩。」

僕は聞き飽きた自分の名前を口にする

「そうですか…!」

何がそんなに嬉しいのだか、僕の名前を聞いてにこにことしていた

「僕だけ名乗って君の名前は無しかい?」

そうして思い出した様にまた少し笑う

「そうでしたね、私の名前は太宰治です。これからよろしくお願いします、乱歩さん。」

太宰と名乗った男は僕に手を差し出した

「此処では寒いですし、どうせなら私の家に“帰りましょう”。」

こんな奴に僕が理解されるのかも解らない。僕が救われるのかも解らない。僕を本当に愛してくれる保証もない……

─だが、期待してしまうんだ。太宰に名前を呼ばれてから、僕は…─

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