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stpr 紫橙 様
誤字脱字注意
日本語おかしい
紫視点
雨の音が途切れなく窓を叩いている。
配信が終わったスタジオは静かだった。
さっきまで笑い声で埋まっていた空間が嘘みたいで、その静けさが妙に落ち着かない。
俺はソファに座ったまま、向かいのくにおを見ていた。
楽しそうに水を飲んでいるだけ。
それだけなのに目が離せない。
最近ずっとそうだ。
気付けば視線で追っている。
誰と話しているのか。
誰に笑いかけているのか。
そんなことばかり気になってしまう。
自分でも面倒だと思う。
でも止められない。
「こた?」
不思議そうに名前を呼ばれて、我に返る。
「何?」
「いや、さっきからずっと見てるから」
見ていたことに気付かれていたらしい。
くにおは小さく笑った。
その笑顔が好きだ。
だからこそ苦しい。
その笑顔を自分だけに向けてほしいなんて。
そんなこと考える資格があるのかもわからない。
「今日さ」
くにおがペットボトルを弄びながら言う。
「配信中ちょっと機嫌悪かった?」
心臓が跳ねた。
図星だった。
機嫌が悪かったわけじゃない。
ただ。
「ゆうくんと仲良かったじゃん」
気付けば口から漏れていた。
くにおは目を丸くする。
「え?」
「だから」
言葉にすると幼稚すぎて嫌になる。
けれど今さら取り消せなかった。
「楽しそうだったなって」
くにおは数秒黙ったあと、ふっと笑った。
優しく。
全部見透かしたみたいに。
「もしかして嫉妬?」
「……違う」
即答した。
即答したのに説得力がない。
くにおはますます笑う。
「こたわかりやすい」
「うるさい」
顔を逸らす。
認めたくない。
けれど本当は認めている。
嫉妬だ。
情けないくらい。
少し誰かと仲良くしているだけで落ち着かなくなる。
楽しそうに笑っているだけで胸の奥がざわつく。
自分でも重いと思う。
だから言わないようにしていた。
ずっと。
「俺さ」
くにおが静かに口を開いた。
「こたが思ってるより、こたのこと見てるよ」
その言葉に息が止まる。
視線を戻す。
くにおはまっすぐこちらを見ていた。
冗談じゃない顔だった。
「配信中もそうだし」
「……」
「今日だって、なんか元気ないなって思ってた」
胸が苦しくなる。
そんなふうに見られていたなんて。
知らなかった。
「だから終わったら聞こうと思ってた」
優しい声だった。
優しすぎるくらい。
だから余計につらい。
期待してしまう。
手を伸ばしたくなる。
もっと欲しくなる。
「くに」
名前を呼ぶ。
声が少し掠れた。
くにおは首を傾げる。
その仕草さえ愛おしい。
「なに?」
「……あんまり期待させるなよ」
くにおは一瞬だけ目を見開いた。
雨音だけが聞こえる。
静かな空間。
誰もいない。
逃げ場もない。
「期待って?」
そう聞き返されて、笑いそうになる。
本当にずるい。
本人は無自覚なのかもしれない。
でも俺は違う。
もう誤魔化せないところまで来ている。
「俺、くにおが思ってるより余裕ないから」
初めて口にした本音だった。
くにおは何も言わない。
ただ黙って聞いている。
だから続けてしまう。
「誰と話してても気になるし」
「……」
「楽しそうにしてると見てしまうし」
胸の奥が熱い。
苦しいくらい。
「帰るって言われるだけで寂しい」
言い終わった瞬間、自分でも驚いた。
ここまで言うつもりじゃなかった。
沈黙が落ちる。
失敗したかもしれない。
そう思った時だった。
「……嬉しい」
小さな声。
顔を上げる。
くにおは少しだけ照れたように笑っていた。
「そんなふうに思ってくれてたんだ」
その表情を見た瞬間。
張り詰めていたものが全部ほどけそうになった。
離したくない。
誰にも渡したくない。
ずっと隣にいてほしい。
そんな感情が胸いっぱいに広がる。
だけど。
本当に大事だからこそ。
無理に掴むことはできない。
俺はただ静かに笑った。
「……ほんとずるい」
「またそれ言う」
「だって事実だろ」
くにおは楽しそうに肩を揺らした。
その笑顔を見ながら思う。
たぶんこれからも嫉妬する。
独占したくなる。
勝手に不安になる。
それでも。
こうして隣で笑ってくれるなら。
もう少しくらい、この苦しさも悪くないのかもしれなかった。
窓の外では、まだ雨が降り続いていた。
コメント
1件
リオンです。第1話読了。雨音の表現が雰囲気をまとっていて、閉じた空間の緊張感がとても好きです。「見ている」という視線がお互いに向かっている構造がすでに美しい。くにおが「俺さ、こたが思ってるより、こたのこと見てるよ」と返す瞬間、じんわり来ました。期待させないでくれという紫の台詞に、全部出し切った感があって、でもまだお互いわかってて誘ってるような駆け引きが甘酸っぱい。この距離感、続きが気になります。
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むつら
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まるもち 多忙
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