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「もういい……。これ以上、君らを巻き込みたくないと言っているんだ!」
ホテルの薄暗い一室、クラピカの叫びが響いた。
彼の瞳は、隠しようもないほど鮮やかな「緋色」に染まっている。
復讐心と過剰な任務のストレスで、その精神は限界を超えていた。
机の上の資料を荒っぽく払い除け、クラピカは頭を抱えて座り込む。
「私の問題だ……。私の、同胞の……! 外部の人間が、気安く踏み込むな!」
向けられた激しい拒絶。
だが、部屋の入り口に立つゴンは、一歩も引かなかった。
それどころか、いつも通りの真っ直ぐな足取りで、荒れ狂う嵐の真ん中へ歩み寄っていく。
「クラピカ」
「来るな……ッ!」
クラピカが顔を上げた瞬間、ゴンはその両頬をぎゅっと、力いっぱい手で挟み込んだ。
「……え?」
あまりに唐突な行動に、クラピカの思考が止まる。
至近距離でのぞき込んできたゴンの瞳は、怒っているわけでも、怯えているわけでもなかった。ただ、深く、澄んでいた。
「クラピカはさ、一人で戦ってるつもりかもしれないけど。俺たちは勝手にクラピカを心配するし、勝手に助けたいと思ってるんだよ」
「それは、君たちのエゴだ……」
「うん、エゴだよ。でも、友達が苦しんでるのを放っておくなんて、俺にはできない」
ゴンはそのまま、クラピカの額に自分の額をこつんとぶつけた。
「……緋色の目、綺麗だね。でも、今のクラピカはすごく悲しい色をしてるよ。復讐も大事かもしれない。でも、それと同じくらい、俺たちと笑う時間も大事にしてほしいんだ」
ゴンの手のひらから伝わる、驚くほど温かくて、迷いのない体温。
その温度が、クラピカの逆立った神経を少しずつ解かしていく。
「……ゴン。君は、いつもそうだ……」
クラピカの目から力が抜け、ゆっくりと元の茶色い瞳に戻っていく。
彼は小さくため息をつくと、ゴンの肩に力なく頭を預けた。
「……すまない。少し、疲れているのかもしれないな」
「うん。だから今日はもう寝なよ。明日の朝、ミトさんのレシピで美味しいお茶淹れてあげるからさ」
ゴンの屈託のない笑顔に、クラピカは降参したように微かな笑みを返した。