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深夜、私たちはあのアパートに戻ってきた。
それぞれの部屋に入る前、廊下で少しだけ立ち止まる。
「……栞」
「……何?」
「……これからはさ。壁越しに声聴くの、もうやめにしない?」
光が自分の部屋の鍵を差し出した。
「……引っ越してきたばっかだけど。……隣、空けとくから」
私はその鍵を受け取り、彼の胸に飛び込んだ。
かつては「人生の汚点」だと思っていたこのアパートの廊下。
でも今は、ここが私の、世界で一番愛しい場所になっていた。
翌朝。
私は、新しい靴を履いて、光と一緒にアパートの階段を下りた。
高いヒールの音はもうしないけれど、二人の足音は、未来へと向かって力強く重なっていた。