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前回に引き続き、今日も新選組についてとりあげます。
日本史BL学研究者のなかでも新選組を専門にする人の数は圧倒的に多く、秀逸な論文も多数ありますので、機会があれば図書館で読んでみてください。
新選組と言ったとたん、モブ子さんたちの目の色も変わりましたね。
やはり人気の高さを実感しました。
研究対象としては面白い新選組ですが、当検定対策講座としては困りどころでもあるのです。
いかんせん、隊士の人数が多すぎて出題要素が絞り込めない……。
そのため今回は最王道の説と、数か月前に発表されたばかりの新説をご紹介しましょう。
新しい用語も出てきますので、しっかり覚えてくださいね。
前回述べましたので、概要は省略します。
男ばかり、ひとつ屋根の下。
死と背中合わせの緊張を強いられる武装勢力です。
そこに「滅びの美学」も加わった、BL学的に萌えポイント満載な集団といえるでしょう。
隊士の数を覚えていますか?
そうです。局長近藤以下、最盛期で230名。
従って、カップリングは無尽蔵です。
とりわけ鬼の副長と恐れられた土方は、どちらにしろ格別の人気を誇ります。
この場合「どちらにしろ」というのは、攻・受どちらにしろということです。
新選組の主要メンバーは多摩の試衛館という剣術道場出身であり、とりわけ近藤と土方の絆は強いです。
さきほど王道と言いましたが、そうです。
ここでご紹介するのは近藤×土方、あるいは土方×近藤の組み合わせです。
同じ人物で攻受が逆転することを、専門用語で「リバ」といいます。
「リバーシ」の「リバ」ですね。
BL検定でも出題する可能性のある単語なので覚えておいて損はないです。
話が逸れましたが、近藤・土方です(「リバ」の可能性を考慮して、ここでは「×」は使用していません)。
下級とはいえ武士の子弟らが多かった試衛館で、近藤と土方は農民出身です。
幼いころから苦楽、あるいは夢を共有したことでしょう。
ここで、大切な用語「幼なじみ」が入ります。
よいですね。尊いですね。
同時に、昨今急速に存在感を増してきた説として、ひとつのキーワード「NTR」があります。
「NTR」とは何か。
その説明の前に、まずは王道である近藤と土方──とりわけ土方に主眼をおいて解説しましょう。
色白で鼻筋が通った……今でいうところのイケメンであった土方は、多摩で薬の行商をしているころから女性にモテたといいます。
この講座では女性がらみのエピソードは割愛しますので、興味のある方は図書館へ行ってください。
京でよい仲になった太夫もいたそうですが、土方は生涯結婚はしません。
新選組を率いる己の役職に没頭するため──それもあるかもしれません。
ここで王道ともいえる論文をご紹介しましょう。
土方が結婚をしなかったのは、近藤を一途に想い続けていたためというものです。
なぜなら、ふたは幼なじみ。
今や局長と副長という立場ですが、誰よりも強い絆で結ばれていたのです。
土方が、あえて「鬼の副長」と呼ばれてまで厳しく隊をまとめたのは、近藤を支えるためなのです。
しかし、近藤は少々抜けたところがあります。
有名な刀と騙されて、大金をはたいてニセの刀を買ったというエピソードは有名ですよね。
そんな近藤なので、土方の想いに気付きません。
会津藩との交渉を一手に引き受ける政治的能力を持ちあわせていながら、なのにちょっとお馬鹿なところもある近藤のことを、土方も可愛いと思ったのかもしれません。
土方が抱きしめていた想いも、友情と愛情の狭間──友情の延長線上にあったと見るのが妥当だと論文では述べられています。
ならば、土方の秘められたクソデカ感情は一体どこへ向かえばよいのでしょうか。
話を戻します。
ここでもうひとつのキーワード「NTR」が出てくるのです。
「NTR」……つまり「寝取られ」。
「NeToRare」からきている用語で、近年勢いづいているジャンルでもあります。
近藤への想いを秘めた土方、これはプラトニックといえばよいでしょう。
新説では、そんな土方に迫る第三の男に注目しました。
ここは、BL学界がかねてから研究対象としてきた汁だくのオトナの関係です。
相手はこの際、誰でもよいのです。
そこ、静かにしてください。
誰でもいいと言った途端、ブーイングですか。
まぁ、分からなくもないですが……。
聞いてください。
重要なのは、近藤への想いを抱えたまま他の男に抱かれるという構図なのです。
新説をテーマにした論文もいくつかありますが、NTR候補として総長山南や三番隊組長斎藤らの名が挙げられることが多いようです。
ここで近藤、土方と並んで有名な沖田総司の名をあえて外したのは、土方にとって沖田は試衛館時代からの可愛い弟分という存在だからです。
ですが、五歳下の可愛い弟的存在が想いをこじらせてのベッドインという展開も大いにありえます。
そうです。
土方NTR展開は何でもアリなのです。
土方の姿態が見られるなら、このさい相手は誰でもいいという考えで識者の考えが一致したそうです。
ここに「総受け」という概念が成立するのです。
BL学界でも謎とされているのですが、人気のある人物ほど、この総受けの対象になりやすいという統計も出ています。
総受け──説明するまでもありませんが、複数相手(ときに全員)に対して行為等で受け手となることを指します。
口で説明するのは容易いですが実質、相当な負担がかかるはずのこのジャンル。
受の何パターンもの行為を見られるとあって、史学に限らずBL学としても人気のジャンルとなっています。
可能性としては新選組隊士230名全員を相手に設定することもできますが、この場合の王道パターンとして何名かの幹部を対象とするのが一般的です。
しかし、BL検定合格を目指すみなさんに、BL学のなかでも邪道と評された新説をひとつご紹介しましょう。
土方が名も知らぬ隊士から迫られるというシュチエーションです。
少々特殊なジャンルで、これを「モブ攻」といいます。
受より地位や役職の低い相手、ときには名も知らぬようなものが強引に迫るということで、弑逆性を煽るこのシュチエーション。
少数ですが熱心な愛好家がいます。
BL学において御法度な「汚」が介在しても許されるのが、このジャンルの特徴ともいえます。
ヒゲですら、一部を除いて許されないBL学。
やけにツルツルな肌の男性や、睫毛の長い男性の行為を研究するのがこの学問の特徴なのです。
しかし「モブ攻」に関しては、この限りではありません。
ヒゲ、汗、体液など、汚ければ汚いほど萌えるという特殊な性癖の持ち主が集中する傾向があるのです。
特殊すぎて、これまで日本史BL検定でこのテーマは取り上げられたことはありません。
ですが、何が起こるか予測不可能なのがこの検定の難しいところです。
おそらく今年あたりこのジャンルに関する問題がでるのではないかと踏んでいます。
なので、みなさんはモブ攻×土方受で小論文を書く練習をしておいてください。
二回に渡って新選組を取り上げましたが、重要性を理解していただけましたか。
次回は戦国時代の武田家についてBL学的見地から説明します。
みなさん、予習してきてくださいね。