テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
白骨りゅう
Joker🃏
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
アルヴァン家の城は、朝日の光を浴びるたびに、王家の威厳を示していた。
その壁や塔には、代々の王族や魔法使いたちの偉業が刻まれ、城全体が誇り高く、冷たい美しさをたたえている。
広間では、王家の子どもたちが次の試練――「魔法試験」を受けるために集まっていた。王家の血を引く者として、魔法の才を示すことは当然の義務とされる。
ツバキ・ヨル・アルヴィンは、双子の姉ボタンの隣で、少しうつむき加減に立っていた。胸の奥がざわざわと落ち着かない。自分だけが、何もできないことを知っているからだ。
「ツバキ、大丈夫だ」 カトレアお兄ちゃんの声が静かに耳に届く。
「できなくても、お前が悪いわけじゃない」
「そうそう」 ハスお兄ちゃんも肩をすくめながら言う。
「魔法は後から目覚める者もいる。焦ることはない」
ツバキは小さく頷く。
お兄ちゃんたちの声が、心の支えになった。
庭の花や城の塔を見上げながら、胸の奥に希望の光を見つけたいと願う。
試験が始まる。光の玉を生み出す基本魔法―― 双子の姉ボタンは指先をかざすだけで、美しい光を生み出し、宙に揺らす。
大人や兄姉たちから賞賛の声が上がる。
しかし、ツバキの手は空をかくばかりで、何も生まれなかった。
胸の奥が締め付けられ、思わず小さくつぶやく。
「……どうして僕は……」
母ローズはツバキをちらりと見て、冷たく鼻で笑った。
「ツバキ……やっぱり、王家の血を受け継いでいるとは思えないわね。何もできないなんて……本当に残念だわ」
ツバキは唇をかみしめ、涙がこぼれそうになる。
「ごめんなさい……」 でも、言葉を口にする前に、成瀬さんがすっと膝をつき、そっと弟の肩に手を置いた。
「ツバキ様、魔法だけで価値が決まるわけではありません」 成瀬さんの声は穏やかだが、揺るがぬ温かさがあった。 「あなたには、あなたにしかない力があります」
ツバキは小さく息をつき、成瀬さんの手の温もりに少し救われる。 しかし、その穏やかさも長くは続かない。
庭に出たツバキは、双子の姉ボタンに抱きつき、震える声でつぶやいた。
「ごめんね、ボタン……僕、魔法ができない……守るって言ったのに……」
ボタンは鼻で笑い、目を細めて冷たく言った。
「あんたみたいな役立たずの弟と一緒にいるなんて、まったく信じられないわ。王家の恥よ。ほんと、見ていて情けなくなる」
ツバキは胸がぎゅっと締め付けられ、言葉が出ない。 その顔は震えていたが、目には少し涙が浮かんでいた。
「黙れ、ボタン」 カトレアお兄ちゃんが低く静かな声を出す。
「ツバキは、俺たちの大事な弟だ。誰よりも大事なんだ」
ハスお兄ちゃんも歩み寄り、ツバキの反対側にしゃがむ。
「そうだ、ツバキ。魔法がなくても、俺たちはお前を守る。絶対にだ」
ツバキは涙をこらえながら、少しほっとして微笑んだ。
心の奥に、兄たちがいてくれる安心感が広がる。
ボタンは舌打ちし、冷たい笑みを浮かべた。
「……ずるいわね。こんな役立たずまで、お兄ちゃんたちに甘やかされて……。あんた、本当に生きてて恥ずかしくならないの?」
その言葉に、ツバキは胸が張り裂けそうになるが、カトレアお兄ちゃんが肩に手を回す。
「泣くな、ツバキ。ボタンが何を言おうと関係ない」
「そうだ」 ハスお兄ちゃんも力強く頷く。
「泣かせたやつがいたら、絶対に許さない」
成瀬さんもそっとツバキの背をさすり、優しく声をかける。
「大丈夫です、ツバキ様。私がいますから。あなたは一人ではありません」
ツバキの胸には、兄たちと成瀬さんの温かさが確かにあった。
城の冷たい視線、母の侮辱、そしてボタンの意地悪がどうであれ、この腕の中だけは――居場所だった。
しかし、城の影の部分は静かに動き始めていた。 王家の光と栄光の裏で、孤独と苦悩がツバキを待ち受ける──。