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君を忘れた日がない。

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君を忘れた日がない。

1 - 忘れられるわけがなかった。

♥

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2025年06月21日

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『君を忘れた日がない』





















赤×水《All赤side》





















高校2年の春。








教室の窓から見える桜の花弁が、まるでスローモーションみたいに落ちていく。








何もかもが、ずっと続くように思えた。











隣の席で笑う水。








幼馴染で、昔から良く知っている筈なのに。








気が付けば、”触れる度”、”視線を向ける度”に、








俺の心臓は騒がしくなる。








水「赤ちゃ ~ ん…、ここの数式、何だっけ…?」








赤「また忘れたの ~ ?笑」








水「……てへッ、」








赤「もぉ ~ ……、笑……ほら、こ ~ やれば簡単でしょ?」








水「んわッ、ほんとに助かった…‼︎やっぱ赤ちゃん凄いねっ‼︎✨」








何て、目を輝かせながら俺の腕をぽんっと叩く。








赤「……ッ、」








その何気ないスキンシップでさえも、








俺からしてみれば全部特別。








好きだって気持ち、言葉にしたことはないけれど、








水にバレそうになるくらい、俺は好きって感情を抑える事が出来なかった。











___でも、あの夏の日。








水「ねッ、赤ちゃん……僕、好きな人出来たかもッ、…」








赤「………はッ……、」








あっさり告げられたその言葉に、俺は頭の理解が追い付かない。








苦しくて、笑えなくて、正直過去1辛くて。








それでも『そっか』って返すしかなかった。








水「でね、その人の事で相談したくて……赤ちゃん、恋愛詳しいじゃん……?」








赤「……詳しくなんて、ないけど」








水「ん ~ ん、赤ちゃんっていつも僕の事分かってくれるから…、頼りになるって言うか……」








頼られる事が、こんなにも苦しいなんて思わなかった。








水の笑顔を守りたい。








そんなん当たり前だけど、その笑顔は俺に向けられるものじゃなくて。








“別の誰かの為”って思う度、酷く辛い感情が心の中に入り乱れる。








だけど好きだった。








堪らなく愛おしかった。








俺の想いはずっと届かない。








どれだけ手を伸ばしても、声を掛けても、








君の目線の先にいるのは、絶対俺じゃなかったんだ。








辛い。








苦しい。








もう辞めてしまいたい。








幾らそう思っても、簡単に人を嫌いにはなれないようで。








唯、ほんのちょっとで良い。









少しで良いから、君が俺の方を向いてくれますように…。











_水に好きな人の相談をされた日から、何日が経っただろうか。








何回泣いたかすらも覚えていない。








あれから少しずつアピールするようになった俺。









いつもより近くで話した。








『疲れてる?』なんて声をかけたりした。








ちょっと差し入れをしたり、








『水の好きな物、いっぱい知ってるよ』なんて、さりげなく伝えてみたり。








それでも。








水は全く気が付く気配がない。








まるで俺の恋心にだけフィルターをかけたように、








無防備に笑って、








俺の心に何度も踏み込んできた。








──そして、ある日。








水「……赤ちゃん、僕…今度告白するって決めたんだ、…」








目の前が一瞬、真っ白になった。








赤「そっかッ……そうなんだ」








水「うんッ。…緊張するけど、赤ちゃんには1番に言いたかったの」








赤「……俺じゃ、だめ?」








口が勝手に動いた。








ずっと抑えてきた気持ちが、まるで堤防を越えて溢れたみたいに。








水が驚いた顔をしてる。








そして、少しだけ悲しそうに笑った。








水「ごめん……赤ちゃんの事、大切な親友って思ってたから…気付けなかった……っ」








なんで水が謝るんだよ。








本当は、俺が謝るべきなのに。











__これが俺の恋物語に幕を閉じた出来事だった。








……そんな筈もなく。








いつも何処かで水の姿を探して、








やっぱり好きなんだなぁ……って自分で再認識して、








でも一緒に居たら苦しくて。








その繰り返し。








卒業式でさえ水の背中を目で追ってたけど、








結局何も言えずに終わった。








それでも。








俺達は大学に入った後も連絡を取り合えていた。








他愛もない話ばかりだったけど、








水の声が俺の生き甲斐だったんだ。








水は結局、高校の好きだった相手には告白出来なかったらしい。








今も恋人が居ないんだとかなんとか。








……なら、まだ可能性あるのか?








そんな淡い期待を抱きながらも、過ぎていく日々。











そして──大学2年の夏。








水「中学の同窓会やるって‼︎赤ちゃん行く ~ ?」








水から届いたメッセージに、心臓が跳ねる。








あの日伝えたままで終わった想い。








如何しても、まだ終われなかった。
















久しぶりのネクタイの締め方に手間取って、








何とか形になった頃には家を出る時間を5分ほど過ぎていた。








赤「……ま、いっか」








軽く前髪を整え、玄関を出る。








水に会えるって知ったあの日から、心が晴れやかで仕方がない。








“会ってどうしたい”ってわけでもなく、








唯、またあの元気の姿を見たかっただけ。











駅前の居酒屋に着いた時には、もう半分以上集まっていた。








それぞれの変化に驚きながら、昔話に花が咲く。








そして、ふと。








水「……ぁっ、赤ちゃん‼︎こっちこっち‼︎」








その声で振り向くと、入口に立っていたのは、








あの頃と何も変わらない笑顔だった。








いや、多分。








少しだけ大人になったかな。








だけど、俺の知ってる水のままでなんか安心した。








赤「久しぶり、元気だった?」








水「うんッ!」








水「なんか赤ちゃん、変わってないねッ…笑」








赤「……いじってる???」








水「い ~ や?いじってないよぉ ~ っ?笑」








赤「いやそれいじってるやつじゃんッ…‼︎」








たったそれだけの会話。








それだけなのに、胸がぎゅっと締め付けられる。








……やっぱり、まだ好きなんだな、俺。
















賑やかな同窓会も終盤、何気なく視線を向けると、








水が1人でコートを羽織っているのが見えた。








赤「水、もう帰る?」








水「うん、ちょっと早めに」








赤「俺も丁度帰るんだけど……駅まで、一緒に行かない?」








水は少し驚いたように俺を見たけれど、








またすぐにあの可愛い笑顔。








水「…‼︎うんっ‼︎」
















あの時の道を、また一緒に歩いている。








こんな風に、普通に並んで歩いて、








もう一度水と笑い合える日が来るなんて、








昔の俺じゃ想像も出来なかったと思う。








高校生の頃__……








水は、ずっと”あの人”の事を見てた。








純粋で真っ直ぐな目で。








俺じゃなく、別の誰かに恋をしていた。








そして、俺はただ横で、それを知っているだけの存在に過ぎない。








そんな日々を、ずっと…変えられないまま、卒業を迎えた。








水「……やっぱ懐かしいね、この道‼︎笑」








赤「ほんとそれ‼︎帰りにコンビニ寄ってさ、2人でアイス買って……、」








水「赤ちゃんは必ずチョコミント選んでた!」








赤「水はバニラばっか食べてたよねっ…笑」








笑い合う会話の中、突然、水の足が止まった。








俺も止まり横を見ると、水は少しだけ俯いている。








赤「……どしたの、?」








水「………あのさ」








赤「ん ~ ッ……?」








数秒、沈黙が落ちた。








冷たい風が2人の間をそっと撫でる。








水「……今も、僕の事……すき、でいてくれてる……?」








――息が詰まった。








耳鳴りのように、会場の余韻が遠くで反響している。








それなのに、ここだけ時が止まったみたいだった。








赤「……そんなのッ…、」








少しだけ目を伏せて、俺は小さく笑った。








この想いを何年抱えてきたかなんて、水には知られたくなった。








赤「……忘れられるわけ、ないよ…」








水「……っ、」








赤「…水があの人の事を好きだなんて分かってた。何で俺じゃないんだろって…ッ、」








赤「……大好きだった、ずっと……ずっと水しか見てなかった」








水「……僕ッ…告白もしてないくせに、ずっと”諦めきれてない”って気持ち残しててッ、…」








水「赤ちゃんの気持ち、ちゃんと見ようとしなかった……」








赤「いいよ、そんなの」








俺は水の肩に手を置いた。








それだけで、少し震えていたのが分かる。








赤「……やっと、好きな人の事忘れられたんでしょ…、?」








水「うん……っ」








あくまで水の場合だけど、”好きな人を忘れられた”って、








簡単に言って”好きな人を諦めた”に近い。








水自身、相当辛いと思う。








忘れるのにも時間かかったんだろうなって。








でもその状況、俺は少しラッキーだなって思っちゃう部分もある。








こんな俺、自分から見ても最低としか言えない。








赤「……水が俺の事、少しでも”好きかもしれない”って思ってくれるならッ、…」








赤「それだけで……、ずっと待ってた意味がある」








水「赤、ちゃッ……」








赤「…高校の頃、何度”好き”って喉まで出かけたかもう分かんないよッ……笑」








赤「でも今は……、好きって言っていい…?」








水がそっと俺を見た。








俺はその目を真っ直ぐ見返す。








赤「好きだよ。今も、これからも、水が笑ってる限り、ずっと大好きだよ……」








言葉が終わる頃には、水の目から、ぽろっと涙が落ちた。








水「……ばかっ、」








赤「…これからはさ、ずっと隣に居ていい、?」








水「……うんッ、ちゃんと隣に居て…?」








夜空は変わらずに広くて、冷たい風が頬を撫でるのに。








こんなにあったかいのは、多分、水が隣にいるからだ。








__俺は、また水に恋をする。



















































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