TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

ブレイバーゲーム

一覧ページ

「ブレイバーゲーム」のメインビジュアル

ブレイバーゲーム

13 - Ep11 風紀委員

♥

31

2024年02月15日

シェアするシェアする
報告する

 夏も序盤、様々なパーティが編成されるキルロンド学寮では、練習試合のような決闘が盛んになってきていた。

 しかし、”魔王の娘” と “王族” を率いる、ヒノトのパーティ “DIVERSITY” に声が掛かることはなかった。

「クソッ!! 俺も試合やりたい!!」

「仕方ないでしょー。誘いも来ないし、私たちから行ってもみんな拒否されちゃうんだから」

 横目に悔しがるヒノトを見下ろすリリム。

 最近では、めっきりリゲルの姿を見掛けなくなっていた。

「リゲル……少し前から授業にも来てねぇなぁ……。何週間、顔見てないんだろ……。名前はあったから、辞めてはないんだろうけど、何があったんかなー……」

「リゲル…………」

 リリムは、寮の階段で言われたことを思い返す。

 当時は、自分のことだけで深く相手の言葉を考えていなかったが、今のリリムならあの言葉の真意が分かる。

「私……先生にあまり名前を呼ばないようにお願いしていたの……。それをリゲルは知ってた。その時は早くその場から逃げ出したくて考えてなかったけど……今考えてみたら、そんなことを知ってるなんて、『リゲルも同じだったから』としか思えない……!」

「え…………つまりどういうこと…………?」

「要は、私たちリゲルの “ファーストネーム” しか知らないじゃない! ってこと!」

 ヒノトは途端にハッとする。

 今まで、考えたこともなかった。

「そうか……。名乗る時、俺は『ヒノト・グレイマン』って言うし、先生もあんまりフルネームで呼ばないから気付かなかったけど、アイツのラストネーム……一度も聞いたことない…………」

 その後、教員室へ聞きに行ったが、本人の意向により勝手に教えるのはNGだと帰されてしまった。

 廊下をトボトボと歩く二人。

「どうすんのよ、リゲルのこと…………」

「考えたんだけど、知られたくないってことは、知られたくないってことだろ?」

「はァ? 何当たり前なこと言ってんのよ!」

「あ、違う! そうじゃなくて……。アイツが、俺たちにも知られたくないことなら、俺たちがそれを無視して知ろうとするのって、どうなのかなってさ」

「それは…………まあ……そうね…………」

「だからこの話はおしまい! きっとアイツもパーティ組んで忙しくしてんだろ! これからさ、闘技場行こうぜ! どんな奴らが戦ってんのか見てみたい!」

 そして、ヒノトはニカっと笑った。

「ハァ…………これか…………」

 その姿に、リリムは大きな溜息を零す。

 リゲルの伝えてきたことをしっかり理解した。

「あ? なんだよ?」

「いーえ、アンタといると、めげてる暇がなくて疲れるなーって話よ!」

 そのまま、バシバシとヒノトの背を押し、そのまま二人は闘技場へと足を運んだ。

 闘技場は、トレーニング施設などと並び、広大な敷地を有しており、公式戦でも使用される為、観客席も数百〜数千人が座れるようになっていた。

「うおー! デケー!!」

 ヒノトがいの一番に来そうな場所だが、初旬の勝手な行動を抑える為、夏まで立ち入り禁止となっていた。

「今は誰がやってんだろう!!」

「えっと……ここに書いてあるみたい。今、13時だからここね。えっと…………『風紀委員』VS『ANARCHY』。学寮の風紀委員のパーティが戦ってるみたい」

「あー、規則取り締まってる奴らだろ?」

 そのまま、雑談しながら客席への階段を登る。

「ハハ、規則取り締まる奴らもブレイバーゲームやるんだなぁ…………」

 歓声が轟く中、他愛もなく話しながら闘技場内を見渡した瞬間、二人の言葉は切られた。

『 ーーーー 風紀委員、渾身の二連勝!! ただいま大将を伏したのは、一年生、リゲルーーー!!』

 会場は、ウワッと盛り上がる。

「リゲル…………!!」

「噂をすればなんとやら……でも…………」

 二人は、唖然とその姿を眺めることしかできなかった。

 その容姿は、真っ赤な髪色から変色し、中心から黒い髪が少しだけ覗かせていた。

「リ、リゲル……元気そうだな…………。あ、ふ、風紀委員に入ったんだな…………」

 動揺するヒノトに、リリムは目を見開いてヒノトの言葉に返答しなかった。

「ヒノト…………リゲルから…… “魔族の魔力” を感じる…………」

「は…………? だってアイツは、炎属性で…………」

 しかし、ヒノトの目にはハッキリ、黒髪が紛れているのがチラチラと映り込む。

 その内、風紀委員長 カナリア・アストレアが、マイクを握って闘技場の中央に現れた。

「今この場に居る学生諸君。我々は『ブレイバーゲームという競技を廃止する』。それに従い、『全てのパーティを我々自らの手で敗北させる』

 そう言うと、キィン……とマイクの電源は切られ、リゲルを含めた風紀委員の四人は去って行った。

「我々が全パーティを敗北って……無理でしょ」

「でも、この前の試合で、三年生の強豪パーティを下したらしいよ……」

 観客席が騒然とする中、ヒノトは駆けた。

「待ってよ、ヒノト…………!」

「リゲルが…………リゲルがなんか変だ…………!!」

「それは分かるけど…………!」

 !!

 ヒノトの前に立ち塞がったのは、

「レオ…………!!」

 王子 レオ・キルロンドだった。

「貴様に話がある。愚民……」

「今はお前に構ってる暇はねぇんだ、退けよ」

 レオはいつもより落ち着いた素振りを見せていた。

 むしろ、一触即発に冷静さを欠いているのは、ヒノトの方だった。

「あっ、あのーーっ!」

 その場を割り込むのは、レオのパーティメンバー、一年生のシールダー、ファイ・ソルファだった。

「ヒ、ヒノトさん…………今まで、レオ様と因縁があったことは聞いていますが、どうかお話を聞いてください…………」

 レオのパーティメンバーとは、まるで思えないビクビクとした態度に、ヒノトの熱は少し冷めた。

「私は、公式戦で、愚兄諸共、貴様らパーティを下すつもりだ。だが、風紀委員は、公式戦が始まる前に、この学寮からブレイバーゲームを消すつもりでいる」

「んで…………だから俺に何の用だよ…………」

「リゲル…………。貴様の友人だな。私も、以前の魔族討伐の折、少しだけ共に行動した」

「あぁ、聞いたよ。お前の馬車に乗って行ったって……。だから急がなきゃならねぇんだ!!」

 レオは、ヒノトの目を真っ直ぐに見つめる。

「奴が使っていた剣術魔法、“炎魔剣” 。アレは、義賊 スコーンの使う剣術魔法だった」

「は…………? じゃあ、リゲルの名前って…………」

 リリムは、先に全てを察し、苦い顔で俯く。

リゲル・スコーン魔族と契約した大罪人の息子だ」

「スコーンの…………息子…………。でも、いや……は……? じゃあ、なんでアイツは風紀委員にいて、ブレイバーゲームを廃止させようとしてんだ…………?」

「落ち着け。今のリゲル・スコーンは、貴様らと関わっていた頃とは違う。風紀委員長………… “元王族” の、カナリア・アストレアにより “洗脳” されている」

「 “洗脳” だって…………!?」

「そうだ。カナリア・アストレアは、雷属性のウィザードだ。この齢にして、上級職を獲得しているのは、この国では奴だけだろう」

「ウィザードって…………魔法職のメイジの上位職か。それに、王族の力で洗脳魔法も強力…………」

「言いたいことは分かったな。私と貴様が対峙する前に、再び、我々の前には打ち倒すべき敵が現れたのだ」

 そう言うと、レオは短剣をバチバチと光らせ、ヒノトの前に掲げた。

「この私自ら、貴様を鍛えてやる。まずは、“防御魔法を破壊” できるようにならねば、話にならんからな」

「ちょっと、勝手なこと…………」

 リリムが制しようとした言葉は、満面の笑みを浮かべさせたヒノトによって切られた。

「マ、マジ!? いいのか…………!?」

「ヒノト…………!」

「リゲルを救うには、カナリアを倒す必要があんだろ? レオの言う通り、防御魔法を破壊できる力は、ソードマンの俺には必要になってくるし…………何よりレオは強ぇからな! 王族で魔力量もあって、剣術も強い奴から教えて貰えるなんて、ラッキーじゃん!」

 ヒノトは笑うと、レオの目と真っ直ぐに向き合った。

ブレイバーゲーム

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

31

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚