ごめんなさいごめんなさいごめんなさい1週間以上過ぎました絶対絶対次は守ります
※脱字と誤字をお許し下さい
後チョコの要素ほぼ無いです重いですドロドロです
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
2月14日。それは誰しも一度はソワソワしたであろう1年で最も真っピンクなイベント、バレンタインデー。勿論、俺もホストとライバーを両立しているので毎年姫に貰ったり配信したりが定番だった。が、今年は例年と一味違う。何せ大事な恋人が出来たのだ。
しかも、男で、一回り下の、先輩ライバーである剣持刀也。
ずっと前から気になっていた。俺の時だけ違うあの特別扱いの様なものに心が浮ついたのをよく覚えている。まだ未成年な筈の背中は頼もしくて、誠実で、博識なのが分かる口調が大好きだった。思ったよりガチめの恋をしてしまっていて一度は断ち切ろうと試みた時もあった。だが、いつかの遊園地に誘った時にいきなりハグをしてしまい、泣いた所をあちらから告白をされるという形で俺の恋は実った。まだ付き合って3ヶ月程だが関係は良好で、先月同棲を初めたばかりだ。
剣持刀也こともちさんは付き合ってから分かったのだが、恋人を甘やかすのがいくらか好きなタイプらしい。普段収録をしている時や配信の際は前とあまり変わらないのだが、2人っきりになった瞬間「かわいい」だの「大好き」だのいつもならあからさまに媚びだと跳ね除けるであろう言葉を俺に躊躇なく言ってくる。社長に前相談したら普段も相当ですけどねぇと苦笑いされたがそんなん比べ物にならないぐらい甘やかされるのだ。たまったもんじゃない。
こちら側としては12も下の男にどろどろに溶かされるのかってレベルの声で愛を囁かれるのが癖になりそうで怖いのだが、俺は普段から愛情に貪欲な為ずっと止められずにいる。
……と、話が逸れてしまったから一旦戻すとそんな甘やかされっぱなしなのは年上としてもホストとしても流石にプライドに傷が付くので、バレンタインに手作りのチョコを作っておもてなしをしようと心に決めたのだ。何かともちさんへのプレゼントを渡す事は多かったものの、この前偶然見つけたサイトに”恋人への贈り物は手作りが1番!”と言うキャッチコピーが貼られていてピンときてしまった。疑う余地もない、何故なら俺だってどんなに高くて好きなブランドでも彼の手作りの方がよっぽど嬉しいし価値があると感じていたのだから。
そうと決まれば早速スマホを片手にカレンダーの予定表に【休】と書き入れる。ホスト業は何度か謝れば許して貰えるだろう。配信は昼にやれば良い。もちさんは多分その間学校に行ってるからそこが絶好のチャンスなのである。そして、肝心のお菓子作りだが完全に未経験だったので[簡単に作れるお菓子]で手当り次第検索してみる事にした。画面をスクロールしながらあーでもない、こーでもないと目を凝らしていると、ふいに1つの記事に惹かれてそれをタップする。
「”恋人の理性を無くすチョコタルト”?何やろコレ…」
そのお菓子の名前に興味を持ち材料を見てみると聞いた事のない物ばかりで世の中広いんやなぁ…と感心した。にしても”恋人の理性を無くす”と言うのは一体どう言う意味なのだろう。それ程美味しいと言う事なのか、はたまた本当にそういう感じの……?
「…………………………これ、作ってみるかぁ」
興味本位でしかないがもちさんは甘い物好きだからチョコタルトは妥当だろう。そ、それに、こ…効果も、気になるし!決してやましい気持ちとかないかんな!!ほんまに!!
そう自分に言い聞かせて足りない材料を何とかネットや人づて経由で掻き集める内にその日はどんどん近づいていった。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
今日は2月14日。誰がなんと言おうとバレンタインである。
僕達男子高校生は思春期真っ盛りという事もあり大体の生徒は1年で最も心が浮つく日だ。まあ、この学校に女子生徒はいないから期待してもほぼ意味は無いけど。僕自身、これまでこのイベントにさながら興味は無かったのだが今年は違う。なんてったって恋人が出来たのだから。それもとてつもなく可愛くてしょうがないぐらいの、年上の男、No.1ホストである不破湊。
_____まあ分かっている。彼はそもそもホストと配信者の掛け持ちだからチョコを渡すことなんて考える暇もないだろう。きっとくれるとしたら自分達が普段見る値段よりも0が2つは多く付く高級なお菓子を買ってきそうだ。それでも、それでももしかしたらあるかも知れない。彼の手作りのチョコを食べてみたいと頭を悩ませながら放課後になっても机と睨めっこしているとクラスメイト達がバタバタと音を立ててこちらに駆け寄ってくる。何だ何だと慌てて聞いてみれば、やや興奮気味の口調で話してきた。
「剣持!!お、お前校門にいる超絶美人に呼び出されてるぞ!?いつからあんなスーパーモデルみたいな彼女出来たんだよ羨ましいぃ!!」
「……は?」
超絶美人に呼び出されている?嫌な予感しかしないが一体誰だろうか。偶に来るガクくんなら大体知っているだろうしこの前社長と甲斐田くんも来たからこの反応はしない筈だ。というか彼女って言う限り男じゃないよな。モデル体型の女性の知り合いなんていなかったと思うが……淡々と頭で整理しながら急いで校門向かう。
視界で捉えた先には、大勢の学生に囲まれて困り果てている恋人の姿あった。
「良いじゃないですか〜まだアイツも来ないから行きましょって!」
「や〜…すみません、遠慮しときますわ」
「釣れない事言わないで下さいよー」
「にゃはは……」
明らかにナンパされている。確かに彼は男で僕より少し背も高いのだが何せ物凄く細い。
体重だって僕が軽々運べるレベルだ。加えて顔立ちも中性的だからかよく女性と間違われることは度々あるのでこちらも否定はしない。まあ、例えそれが勘違いであっても自分の恋人を困らせているのが僕ではないのは面白くないのだが。
何度か喋った事はある奴らにふつふつと怒りが湧いてきてどうしてやろうかと考えていると、こちらの存在に気づいたふわっちはさっきまで曇らせていた表情を一気にぱぁあっと言う効果音が着きそうなほど輝かせてナンパしていた奴らに目もくれずこちらへ向かってくる。ぴょこぴょこと跳ねながら両手を広げる動作に飛び付かれると確信してキャッチ出来るようにこちらも手を広げた。
次の瞬間、彼の体がふわっと浮いて答えるかのように自分も足を動かし彼を難なく受け止める。思ったより受け止める時の威力はない。それ程にこの人は軽過ぎるのだから。そんな事も知らずに僕の腕の中でご機嫌に鼻歌を歌っている姿はまさに幼い子供と同じだ。愛おしくて自然と頭に手を伸ばせばその手にもスリスリと顔を擦り付けてくる。猫じゃんか。かわい。
「どうしたのふわっち、お迎えに来てくれるなんて珍しいね」
「んぁ〜…今日バレンタインやから、手作りチョコ作ったの。頑張って作れたから嬉しくて……」
「え、嬉しい。僕に早く伝えたくて来ちゃったんだ?」
「うんっ」
「っーーー〜〜!!」
ちょっと待って欲しい、ほんとに。ただでさえチョコを貰えるのが素直に嬉しいのに手作りでしかも頑張って作れたこと伝えたくて来ただなんて。
可愛さのキャパオーバーが過ぎるだろ。どれだけ僕を振り回せば気が済むんだよ、全く。とにかく今は早くここから立ち去らなければ。次いつ彼が狙われるか分からない。彼に帰りましょうと言って腕を離してもらう。それに寂しそうな顔をするのに耐えられなくて2人きりになったらねと伝えて校門を出る。さっき声を掛けていた奴らの方を向いて思いっきり睨みを効かすとヒッ、と言う声が聞こえてきた。
____何だ、ただの腰抜けじゃんか。もうこれで後をつけてくることはないだろう。ホッと胸を撫で下ろして彼の方を見た。
「そう言えば珍しいと思ったけど…ホスト業とか配信はどうしたの?」
「ん〜頑張ってお休みにしてもらっちゃいました。配信は昼にやったから今日はフリー!もちさんはバレンタインに配信しないっすもんね?」
そう言っていかにも暇ですと手をヒラヒラさせて伝えてくると同時にこちらの様子を伺うように見つめてくる。勿論、と返そうとしたがふと動かされていた彼の手に目が止まった。両手に僕と同じような包帯が巻かれてある。一瞬お揃いにしたのかと思ったがこの人の事だ、もしそうであれば見て見てと自分から告発するだろう。ならばきっと……
「うん。勿論しないよ…..ねぇふわっち、その手どうしたの?」
「んぇ?あ、あぁこれっすね〜……オーブンで取り出す時ちょっと火傷しちゃってぇ」
「は!?!?」
「にゃはは!大丈夫っすよーもう痛みもあんま無いし…」
「いやそう言う問題じゃないから!!…はぁ、ちゃんと見せて」
ただの火傷ならそんな包帯巻く程になる訳ないだろ。何だよちょっとって。絶対大火傷じゃんか。と言いそうになるのをグッと喉奥に押し込んだ。多分問い詰めたってはぐらかされるだろうし、こう言う時の彼は頑固だから聞き入れてくれない。少し躊躇うも素直に見せてくれた彼にありがとうと伝えて手に視線を移す。右手はともかく左手は少し血が滲んでいる。ん?血が滲んでる??
「も、もちさん?そんなジロジロ見られても困っちゃ…」
「何なのこの血。火傷で血が出る程なのがちょっとな訳ないじゃん」
「!ぁえ、……っ、それはぁ~…ぇ、えーっとぉ………」
隠していたことがバレてしまった子供の様に視線を逸らしてあぇ、とかんぁ、とか言葉になっていない発音を零し続けている。暫くその様子を無言で見つめていると観念したのかしょぼんとした顔で話し始めた。
「その…お菓子作り初めてだったから、ちゃんと動画みながらしたんやけど中々上手くいかんくて、怪我増えちゃった…….家にある救急箱はもちさんが普段使ってる包帯しかないんやもん。めっちゃ巻きにくかったし時間かかったけど、そのおかげか最後の最後でお菓子上手く作れて、嬉しくて、褒めて欲しかった..から、…………」
「………………」
「ご、ごめんなさい……迷惑やったよね。こんな子供みたいな事して……えっ、わ!?」
彼の話を聞き終わる前に思わず抱きしめていた。だって可愛過ぎるだろ。何だよ褒められたかったからって。普段あまり自我を出さない彼が、自分勝手なんて言葉が似合わないあの彼が。そんなんもう怒る気も失せるし沢山褒めるしかないじゃんか。愛おしさで胸がギュッと締め付けられる。それと連動するように抱きしめていた手に力が入っていく。
「……ふわっちはさぁ、もっと我儘言って良いんだよ?貴方の優しい気遣いが出来るところは好きだけど、こーゆー時はもっと自我だしてくれたらなって思うんだ」
「!でも……」
「でもじゃないの。沢山言って欲しいし、迷惑だって思ってないよ。寧ろ言ってくれた方が僕は嬉しいんです。ただ僕の為に怪我はして欲しくないかな……ね、分かった?」
「……っあぃ」
曖昧な返事の代わりにおぼつかない手が背中に回されて了承を得たと感じる。このままキスをしたっていいのだが何せここは外なのだ。人気が無いとは言えいつ誰が此処に来るのかも分からない状況なので早く帰ろうとまだ傷が痛むであろう手を優しく繋いで家路へと向かう足を早めた。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「~~~♪、っとよーし出来たぁ」
鼻歌を歌いながらまだ湯気が立っている鍋に蓋をする。
あの後帰って渡したチョコタルトを美味しそうに食べてくれたもちさんは今風呂に入っていた。心配だから僕も夕飯手伝うと言ってくれたのだがいつもの作るだけだから大丈夫だと無理言って何とか折れてもらった。
_____まぁ、あんま納得言ってないって顔だったけども。シンクに洗い物を出して棚からお玉と冷蔵庫から味噌を取り出す。チラッと上の段にある残りのチョコタルトを見て思い出したが、気になっていた効果も美味しいと言うだけで自分の想像していたものではなかったようだった。
ただ、想像以上に量が多かった為かあと2切れほど残っているのだが。
ちょうど小腹も減っているし後で食べようと思いながらこちらも取り出して机の上に置いておく。味噌を手に取り鍋の蓋を開けて溶かしていると段々と香る暖かい家庭の匂いに鼻先が擽られて思わず目を細めた。
お玉で掻き混ぜて再び蓋をしていると急に首の方に重しがのしかかり腰をガッと掴まれて抱き寄せられる。
______その正体は紛れもない風呂上がりの彼だった。
「…んぁ、っ……も、もちさん?」
「ん…………ふわっちまた痩せた?」
「ぇ、いや、別に、最近は………」
「ふーん……そっか」
力の差では俺の方が強い筈なのに最近本気で振りほどいてもビクともしなくなったのは何故だろうか。…俺だっていっぱい筋トレしてるのに。
それでも、成長期の彼はそういう事もあってか最近はもう身長を追い越された様な気もする。パッと見こそ分からないがキスする時に足のつま先を上げる仕草が追加されたのはごく最近の話だ。手は元々剣道部だからかがっしりしていて実は俺よりも大きい。どんどん大人へと近づいてくる彼にキュンと胸が高鳴ってしまう自分がいるのは秘密だ。
「っ、……ッふ、もちさ……手つき、やらしっ………」
「………………」
「…なっ、んか言えや……ッ…っは、ぁ…もぉ……ごはっ、んれきたからぁ…!」
腰を掴んでいた手が弱い所を撫で出す。どうにか体を逸らしたり腕を離せと抵抗してもそれが解かれることはない。次第に項あたりに顔を埋めたもちさんはすんすんと匂いを嗅いでくる。そのこそばい感触と腰からのもどかしい刺激が快感に繋がって声を上げないように踏ん張るしか無かった。
おかしい
いつもならこんな強引にする事は無いのに。食事前にキスでもしようなら顔を赤くして怒っていたのはそっちなのに。何故だろうかと考えようにもジワジワと這い上がってくる気持ちよさから頭に霧がかかって上手く思考が働かない。
「ねぇ、湊さん」
「あ”ぅ♡……………………ッ?」
彼の甘くてドロドロした声が耳にかかって奥がギュンギュンと歓喜する。夜の行為の時に聞くあのいっぱい褒めてくれる声、おれが大好きで堪らない声。それに加えて下の名前で呼ばれたらもう、我慢なんて出来ない。
「チョコ、美味しかったです……でも」
「?………ッんむ、ぁ」
唇を片手で掴まれて机の方に向かせられる。そこには食べようと思っていた2切れのチョコタルト。それを見て流石の俺でも察した。
あ、まずい。もしかして、これは
「これ、何盛りました?」
効果はホンモノだったらしい。
俺がした事に怒っている訳でもない。その声はどちらかと言うと…興奮しているかのような。ふぅ、と荒く息を吐くのが次々に首へとかかって体が震える。それに気付いてなのか顔を彼の方に向かせられてお互いの表情がしっかりと見えてしまう体勢にさせられた。恥ずかしい、こんなん、全部丸見えやんっ…!!
「ぁ、……っ♡、……ッ」
「……湊さん?ねぇ答えて。何盛ったの?これ」
「ん”ぅ♡!、……ッは、はぁ……な、にも……」
「何も?」
「う”ぅ〜ッ♡、………ぁの、おこらん?♡」
「怒らない、から。早く」
待てない、と言わんばかりの顔で見つめてくるもんかだら思わず目を逸らす。その間も腰への柔い刺激が怠ることは無くて、喋る度に喘ぎ声が漏れてしまう。
「……っ、……ぁ♡、……ぇとぉ、……ッ♡」
「うん」
食い気味な頷きに更に顔を赤くしてしまう自分の体が恨めしい。
「……ネット、で……その、「恋人の理性を無くすチョコタルト」って、あったから…も、もちさん、いつも余裕そうだし…みたいおもってぇ……ッ?」
「…………へぇ?湊さんには、僕余裕そうに見えてるんだ」
___まずい。これは完全にスイッチが入った声だ。しかも、嫌だと言っても止まって貰えなくて危うく堕ちかけた時の。1番酷く甘やかされたヤツ……
全くもって良くない。何故なら俺には今日休んだ分の仕事が明日あるのだ。別に午後からだから良いのではと思うかもしれないが一日中犯されたんやぞ前、絶対断んなきゃ終るヤツやん。
「ちょ、も、もちさん?!……っ♡♡…ご、ご飯!ね?冷めちゃうから!」
「大丈夫、後で食べれるよ」
「(後って言っても明日になってるやろどうせ…!!)」
慌てて強く押し返そうにも逆にその手を優しく包み込まれてしまう。
逃がさないと言う意思が込められたその手は握り方こそ優しいものの力は可愛いさの欠けらも無い。まだろふまお塾でしたかつての腕相撲の時の方がマシだ。
本当に怪我していた手に対して異常な程に過保護だった人と同一人物なのだろうか。
いや、それを気にする程の余裕がないのか。相当あのチョコタルトは効果が絶大だったみたいだ。沢山食べさせた事を後悔する。目の前の相手が何を企んでいるのかも知らずそう考えていると再び机の方に指を指されてそっちを見る。
「………………?」
「ふふ、これ後で食べる気だったんだよね?」
いや、と反射的に否定の言葉が出るも「ならどうして冷蔵庫から取り出したの」と言われれば言い逃れも出来まい。そして机の椅子に座らされて背後を盗られたら完全に詰みだ。右手にフォークを掴まされて思わず口元が歪む。本当に食べるのか、と。でも、今背後にいる彼に全部食べさせたらそれこそ明日の仕事も休まないといけない事になりそうだ。
「いただきますは?」
「ぃ…ただき、ます」
やるしかない。震える手でフォークを握り締めてタルトへと突き刺した。
_____あぁ、この時意地でも止めとけば良かったものを
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「ぁ”う♡♡っは、はぅ”♡♡まっ”へ♡♡ね、とやぁ♡♡とまっへ、ってぇ”♡♡♡」
「ごめん………ちょっと、今日はむり…か、もッ」
「ん”ぁ?!♡♡ふぁ” ぁ”、 あ” あ ” あ ”あ”♡♡♡…ぉ♡んきゅ”♡♡っきゅ〜〜〜————— !!♡♡♡♡」
「んきゅって…………はっ、かわいい鳴き方♡」
「!っはぁ♡♡…んぇえ”♡♡かわい♡か♡♡ないっ♡♡♡!!」
ヤバい。本当にヤバい。こんな激しいの知らないっ!!
いつもなら、正常位でいっぱい褒めてもらいながら緩やかな快感を受け取る。それなりに甘くてふわふわするようなものだった。それで十分過ぎる位満足してたし、刀也だってそうだと思ってた。だが、蓋を開けてみれば理性を無くしたこの男はそんな生ぬるい刺激じゃ満足出来ないようだった。膝の上へと招かれて対面座位の体勢になり彼の熱い肉棒が奥深くを突く。その暴力的なまでの快感に声を我慢しようとしても強すぎる所為か脳が処理しきれずひっきりなしに甘い声が出てしまっていた。8等分したタルトのうち6切れは彼の腹の中にある。残り2切れを食べたのは俺だがこのタルト、とんでもない効能の媚薬だったのかもしれない。内側からせり上がってくる熱気は止むことも無くむしろ悪化するような勢いで全身を支配している。もういい、だめ、なんてうわ言を吐くが身体は更なる高みを欲している。最奥をもっと掻き乱して欲しくて堪らない。こんなにも酷く乱れている自分よりも食べた彼は当然相当な訳で。今まで見た事ない程の獣のような、雌を目の前にした雄のような、その欲を欲で塗りつぶした顔は普段の凛とした涼しい顔と掛け離れていて自分が今誰に愛されているかしっかりと分かってしまう。
そう、だから今中がぎゅうぎゅうと締め付けているのは俺のせいじゃない。
決して、ときめいたとかそんなのやない。
「…考えるくらい、よゆうあるんだ……ッ?」
「あ”ぅぅ♡♡?ぁッ♡♡…ぁ あ、あ、あ”、あ”♡っ〜〜ー♡♡」
身体を持ち上げられてズルルっと抜かれてしまう。その小さな刺激にもビクビクと反応してしまう身体が恨めしい。急に無くなった圧迫感に寂しさを感じて後ろが切なげにぱくぱくしているのを自分でも実感する。さっきまで突かれていたソコはぽっかり空いてしまった感覚に囚われていてどうにか埋めようと収縮を繰り返していた。そんな俺を見て彼はフッと笑うと耳へと手を伸ばし顔を近づけてくる。
あ、キスされる。
そう思った時既に遅し。耳を塞がれて自分よりも熱く触れたら溶けてしまいそうな舌が自分の口内を犯していた。ぢゅる、ぢゅうぢゅう♡と長い舌が、己の舌を吸う音が、ダイレクトに耳に響く。元から耳が弱い俺は彼の強調のおかげで見事立派な性感帯へと成り上がった。聴覚からも快感が生まれるそれに腰がカクカクと動いてまた体が熱くなる。
恥ずかしいと感じる余裕もないままどうにか止めてもらおうと彼を叩こうとしても、怪我して包帯を巻く手では拳を握る事も愚かもっとと強請るようにそっと肩を掴む事しか出来無かった。それをそう受け取ったのかは分からないが舌の動きが更に激しくなる。酸欠もいい所でそろそろ視界が真っ白になりかかっていた所をやっと放してもらう。は、ふぅ、っう、と息の仕方も忘れて酸素を取り入れるのに必死になっていると耳の奥へと指が入り込んできて喉がひくんと震えた。グリグリと掻き混ぜられてしまえば脳内にばちっ、ばちんと電が走りあられもない声が出てしまう。
「っ、ふあ”ぁ”ぁ”♡♡…は、っぁ♡そ、りぇ♡やめぇえ”♡♡♡…んぅ、ふぅ、っ♡♡ぅ”〜〜〜ーーッ!!」
「耳だけでイったんだ、変態だねぇ」
「っ”♡♡……??♡♡♡…♡♡♡♡、♡♡」
「あ、飛んじゃったかな…おーい湊さん。まだ僕イッてないんだから頑張って」
___頑張れ、という癖に首噛むの止めてくれへんかな。噛む刺激でもしんどいってのに。
飛んでいた意識は再び挿れられた事で戻ってくる。激しく律動して帰ってきた彼のに媚びを売る自分の肉壁が恨めしい。いつもならちゅ、ちゅと赤い花を咲かせる場所には痛々しい程の噛み跡があちこち残っていた。
キスマだけでも隠すのが大変だってのに噛み跡なんて。もう当分仕事を休む事にしようと決心する他無かった。いつしか見えるとこに付けるなと怒ったらそれが狙いだと返された事がある。身体中に跡を残すのでさえ独占欲が強いなと思っていたのに噛み跡をそれ以上に付けていく彼は一体どれ程のドス黒い感情を隠していたのだろうか。
少し前に聞いた、ひとりの姫の言葉を思い出す。「ねぇミナト、知ってる?恋人に飛び切り甘い人程執着が強くて愛が重いんだって〜」その時はへぇーそうなんだ。くらいとしか思って無かったが今思い返すと納得がいく。
酷くされたことが無い、痛みを与えられた事がないこの身体を本当は気の向くままに犯して愛して。
骨の髄まで美味しく頂くのを望んでいたのであろう。そのどうしようもない醜い想いをぶつけられているのに嬉々として受け入れてしまっている俺も同罪だ。まさかチョコで彼の本音が聞けるとは思っていなかった。
「….ぁ♡♡、ゅ?と、やぁ♡♡?」
腰の動きが止まり抱きしめられたかと思えば掴んでいた手を掴んでスリ…と撫でてくる。包帯をしているのが俺で、していないのが彼という普段と対称的な事実にまで興奮してしまう俺は末期だ。手の至る所を指で追って傷口に当たりビクッと体が震えた箇所を捉えて優しく撫でながらも離さない。
「……この怪我が、僕の為にしてくれたってのは分かってる。でも、その傷つけたのが無機物だってのにも嫉妬するんだよ、僕ってのは。今日会いに来てくれた時のナンパ野郎も、仲のいい友人でも、例え家族でも…僕は、貴方に触れるなんて許せないし僕のものだって知らしめてやりたい。優しくしたいのに、甘やかしたいのにイジメてやりたい。…言っとくけど、こんな歪んだ愛にしたのは湊さんのせいだから」
彼の表情が見えない体勢からでも分かる声色と言葉に一瞬背筋が凍る。きっと今彼の瞳に光は宿っていないだろう。…長年の直感が、そう告げている。
「は…とう、やぁ♡ あ”♡あ”♡ あ” ♡ あ”♡♡??ぉ”♡っうぅ♡♡…んぇ”♡んぉう♡♡」
声を掛けようも、突如として与えられた快楽に口に出たものは全て喘ぎ声へと変わってしまう。さっきまでの刺激とは違う、ぱちゅん♡ぱんっ♡と肉のぶつかり合う音とお互いの荒い息遣いが部屋に木霊する。激しくなった動きに意識が飛びそうになっていると、しっかりと両手で俺の手を掴んでいた右手が一本離れ口元へと近づき薬指が口内へと侵入する。
「ん”ぅう”♡♡ぉ”……あがっ♡ん゛ぁ♡♡」
「ふふ、すっごい可愛い」
くすっと柔らかく笑う顔はあどけなくて可愛らしいのにやってる事は全く可愛くない。鋭く尖る八重歯に指をふにふにと押し付けられる。
「……んひゃに、ひてんのぉぉ”♡♡♡?」
「噛んで」
「……ぅ♡?」
「僕の指に、思いっきり噛み痕残して……お願い」
懇願するようなその声に思わず体が震える。何を考えているのかよく分からないまま甘噛みしていたのを辞めて口を閉じる。ガブリと第2関節の付け根辺りに歯を立ててがじがじと強弱も付けずに痛めつけてやると、上から低く唸った声が聞こえたと同時に中指が入り込み上顎へ触れてくる。息が苦しい中、噛むのに必死になっていると、不意に彼の動きが止まった。
「?」
「ふふっほら……血、出ちゃったね」
そう言われて漸く気付く。彼の指に付けてしまった痛々しい歯型に、血が滲んでいる事に。慌てて咄嗟にごめんと言おうとするが彼はそれを気にする様子など微塵もない。どちらかと言えば目を細めてどこか嬉しそうな声色である。
___もしかして、それが狙いなんじゃないか。俺を傷つけた物にまで嫉妬して、自分が俺を傷付けられないなら、傷付けさせて、その手を怪我した俺と一緒にしたかったのでは。と、良からぬ考えが浮かんできてしまって体がまた震える。今度は興奮からじゃない、彼への底知れぬ恐怖だ。どうにかこの仮説を否定して欲しくて、情けない声で彼の名を呼ぶ。
「…と、とや?とや、とやぁ!」
ああ、今俺はきっと相当怯えた顔をしているんだろうな。彼の黒い瞳がこちらを捕える。その色はハイカカオよりも濃ゆく、甘く溶けていた。
「…………なぁに?」
砂糖を煮詰めたようなあの甘い声が聞こえる。あ、これは多分俺の言いたい事に気付いてる。…そして、その返事は言わなくたって分かった。
否定なんてする訳が無い。彼は俺のことが本当に大好きで、それでいてその歪んだ愛を上手く隠して、俺に愛されるように頑張っていたのだから。
その真実に辿り着いた俺は彼を褒めようと口を開く。
「おれも、ッ♡♡おれも……♡とうやが、だいすきやから♡」
「っ!…………ほんとっ、どこまで僕のことを喜ばすの?」
「……んへへ♡…あっ、んむ♡♡」
返事を返す前に唇で塞がれてしまう。口内に溢れた鉄の味が広がって少し苦しい。目を閉じて感じていると腰を引き寄せられグッと奥まで入ったかと思いきやどくどくと白濁を吐き出されて彼が達したんだと分かった。
___もう、こういう興味本位での失態はしないようにしよう。
そう心に決めて彼…刀也に身も心も全てを溶かされた。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++
『もしもしーおはようございます不破さ〜ん!昨日あげた素材どうだった?』
「…?甲斐田くん、僕ですけど」
『あれっ、もちさん..?あ、すみません間違えまし「ねぇ、その話詳しく教えて」
『えぇ…?』
「お返し、楽しみにしててね湊さん」
コメント
11件
やばい。好きです。いつも最高をありがとうございます。
無事死亡←(言いたい事多すぎでこれしか出ません)
素晴らしすぎて涙出そうになった 本当に好きですいつも応援してます🫶