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足音を立てず、リビングへ向かう子供が1人。
時刻は昼間。
深夜ならまだしも、誰かを起こすまいとして足音を殺している訳でも無く、気付かれたくない一心で、最初からこの世に居なかった者のように、願わくばこの街に命を落としたくは無かった。 と、心に闇を抱えながらも、リビングへと足を運んだ。
昼間というのに、部屋の中は窓から射す光だけを頼りにし、薄暗い空間が形成されている。
窓から覗けば微かに動く者が見えるだろう、人気はそれほど感じられないが、小さな子供が1人、普通、お留守番している良い子の様に皆が捉える中、現状はそんなに甘くなかった。
それさえ、彼がお留守番を任せられたとしたらもっと気が楽だっただろう。寧ろそちらの方が都合が良い。だからこそ、皆がそう捉える。
薄暗く冷えた部屋の中、毛布の中にくるまっていた身を乗り出し、素足を晒す。
母親も父親も居ない家で、1人。
当然、昼ご飯を用意されていなければ、用意してくれる相手も居ない。
泣き喚いた所で無駄だと理解している頭は、今日も生きるべくお腹に入れるものを求めていた。
部屋の空気感、
赤子の頃から持っている小汚くボロボロになった毛布の方がまだ暖かさを持っていたであろう。
それでも小さな足は冷えた地面と接して、段々と温かさを忘れていった。
リビングへ着けば、少し上の方にある机の上に乗ったパンを、1つ頂こうと、足りない身長を補う為に爪先立ちで懸命に手を伸ばす。
冷えた足先が固い地面へと接し、針を刺されたような痛みが伴う。
初めての体験って訳じゃない。もう何度も同じ行為を繰り返している。所詮慣れだろう。
手と何かが触れた感触がした、思い切ってそれを取ってみれば、予想通りパンが手に入った。取れたものの、安堵したが故に後頭部に強い衝撃が走ったと共に、誰も居ない部屋の中に鈍い音が響く。