【第1話】
田舎と言うほど田舎ではない場所で一軒家に一人暮らしで住んでいる佐野真由美。彼女は今どき珍しい単独魔法少女だ。3065年、世界は1度滅びかけた。隕石が降ってきたのだ。森にある木々、そこに住んでいた動物、ビルや人など、色々なものがその隕石の犠牲になった。しかし、その隕石から運良く生き残った生物達が自分達のできる限りのことをして、頑張って、今、4087年の世界がある。変な話だが事実だ。そこからなんでかは分からないが魔法少女という存在とその魔法少女が討伐する怪物という存在が生まれたのだ。魔法少女は生まれた時からその素質があり、素質なしに産まれてきた者は魔法少女にはなれない。そして、そんな魔法少女の1人が真由美だった。真由美は物心ついた時から魔法少女として小さくて弱い怪物を倒してきた。その頃は魔法少女がとても輝き見えていたが、ある日を境に色々なものが醜く見えるようになってしまい、その時から、(どうして私なんかが魔法少女に選ばれたの?もっといい人はいたはずなのに、どうして私なんかを……)と考えるようになってしまう。
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(4087/04/25)
「……あぁ、早く学校終わらないかな」
八ヶ原高等学校2-Bの教室にて、佐野真由美は今日もそんなことを考えながらほおずえをつき、授業を受けていた。
今年創立120年を迎える八ヶ原高校は、はっきり言ってボロ学校だ。木製のこの学校の廊下は所々黒ずんでいて、柱もちょっと押したらギィギィと音を立てる。窓ガラスにもちらほらヒビが入っており、今真由美がいる教室はホコリが隅っこに集まっていて、クーラーはあまり効かないし、蜘蛛の巣が張ってるし、虫が出るのなんて日常茶飯事だ。だが、八ヶ原高校からすぐの八ヶ崎高校は綺麗で、とても人気のある高校だ。なら、真由美達はなぜ八ヶ原高校に通っているのか。真由美や他の生徒達のほとんどは家の校区が八ヶ原高校で、八ヶ崎高校には通えない。ただそれだけの事だ。ちなみに、校区に八ヶ崎高校が入っているのに八ヶ原高校に行っているやつはただのアホしかいないから注意してほしい。
(4087/4/26)
午前0時、真由美は外に出た。一度滅びかけて、まだ完全には直ってない日本で法律もクソもない。(殺人や強盗などのものはあるが…)だから、高校生が午前0時に外へ出たって誰も何も言わない。そして、真由美が外に出たのは 日課の散歩をするためだ。最近は花粉が酷くて困っている真由美だが、夜はそこまで症状が出ないので割と快適である。(まず、4月の後半に花粉が酷いと言っているのは少し違う気もするが花粉症なものは仕方ない)家から出ると目の前には大きな公園がある。今は使われていない、何のために作られたかも分からない施設と広い野原、それに遊具のあるエリアがある、よくある公園だ。昼間は子供たちが沢山いて、休めるの や の字もないが、こんな時間だと、ここに来る人なんてそうそういないので公園を独り占め出来る。真由美はその公園のベンチへと向かった。正面から入って少し歩いたところにあるベンチだ。そのベンチは茶色く塗られていて目の前に池があり、たまに虫と同席する事になる。真由美はそこへ座った。散歩をする時にここへ座らなかったことは1.2回しかない。池には特に何もいないが、近くに水があるというだけで真由美は少し安心する。なぜなのかは本人もわかっていない。
そのベンチに座って目を閉じ、リラックスしていた。夜中なこともあり、少しウトウトしていた所に近づいてくる人影があった。普段怪物と戦っているということもあり、気配を感じるのには少し自信がある。勿論近づいてきているのも真由美は気づいていた。薄目にしてその人影を見てみる。
「男性っぽいな。成人済みの。」
何か変なことをしてくるような雰囲気でも無かったのでその成人済み男性らしき人影は放置して、また目を閉じた。1番いい体制(座ったまま)を探して少し動いていた。そこに
??「……やぁ」
と喋りかけてくる人がいた。きっとさっきの人だろう。返事をする気はなかったので寝たフリをしていた。きっと寝てると気づいたらすぐにどこかへ行くだろうと思ったのだ。しかし、体感ではあるが10分、20分経ってもその人がどこかへ行ったような感じはしない。というか、返事が来るのを待っているようだ。だが、先程の「やぁ」という言葉以外、何も発しない。「こりゃ負けたな」真由美はそう思った。一応寝ていたという設定なので寝起きのフリをしてゆっくり目を開け、目が慣れるまでの数秒間は目をぱちぱちさせていた。そして寝起きの声を再現しながら
「あれ、誰ですか」
と、言葉を発した。
男性はコチラを見て、スマホをそっと閉じた。
「あぁ、起きた?ごめんね急に」
優しい人そうだと真由美は思い、少し安心した。
「こんばんは。私の名前は_」
コメント
1件
これ「私の名前は_」っていうのは男性です