テラーノベル
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「世界都市さんは忙しい」
※世界都市擬人化
“イレギュラー”
「休んでください」
「無理」
東京はしかめっ面で睨んでくる
「説得力ないかもですけど、風邪気味の時にオーバーワークはダメです」
わーまじ説得力ねぇー…
「いっつもそうやって働いてんのはお前の方だろ」
そう言うと一瞬怯んだが直ぐに言い返してきた
「実際…それで僕倒れた前科あるし」
「あー…この間のやつな」
あの時はあれこれ大変だった
こいつがぶっ倒れて…その後は仕事の穴埋めで物凄く多忙で…
危うくこっちが限界を迎えるところだった
「その件はごめんなさい。」
小さくなって謝罪してくる姿はまるで子犬。
身長差や体格差のせいで余計に小さく見える
「でも、ヨークさんも無茶すれば同じようなことに…」
心配してくれているのはわかってる
わかった上でだ
「今日は緊急の会議だから休むわけにはいかねぇんだよ」
この手の会議は大体が重要な発表を控えていることが多い
とてもじゃないが、欠席するわけにはいかなかった
それもたかが風邪ごときで。
東京はそれでもまだ何か言いたげだ
「……はぁ…」
そろそろ時間だし行かなければならない
早くしないと間に合わなくなる
そうなれば同じ会議に出席するロサやDCにグチグチ言われるのは目に見えていた
腕時計を見る
このくらいの仕草で察しがつくだろう
「あの、やっぱり」
効果なしかよ
「はー…あのなぁ…お前みたいに俺が体調管理できてないわけじゃねーだろ?」
東京は驚いた顔をすると俯いてしまった
やべ。ちょっと言いすぎたか…
ここは謝っておかなければ後々面倒なことになる
「悪ぃ。さすがに言いすぎ…」
顔を上げさせようと肩に手を置こうとした瞬間。
パシっ
手に痛みが走る
思いっきり払われた。驚きで動きが止まる
「もういいですよ。勝手にすれば」
「…は」
それだけ言って廊下の奥に消えてしまった
表情はわからないけれど明らかに怒っていた
確かに言葉選びは酷かったかもしれない
ただあそこまでキレるか?普通
その前にこっちは”時間がない”と合図してたし
謝罪もした
段々と鬱憤が溜まってきた
“勝手にすれば”そう言われた。なら勝手にしてやる
時計を見ると会議開始時間の10分前
移動する時間を込で考えるとギリギリだ
走るか
気だるい体を精一杯動かした。
会議が始まってから1時間程が経過していた
終わるのは30分後。
あと30分でようやく抜けられる…
抜け…られる…?
視界がグラッと回った
机に腕を置きして体を支える
少し前から自覚はしていた。疑う余地もなくこれは風邪が悪化している
体は重く、顔は熱い。微熱程度だろうが、今の状況にはこたえるな
時計を見る。まだものの1分しか経ってない
「なぁーニューヨークはどう思うんだい?」
DCが横から聞いてくる。今は会議の案件なんかどうでもいい
「あー…お前の案でいいんじゃね、?」
できるだけ体力を消耗しないように応えた
「ほらー!じゃ、これは俺の案で…」
「いやどう考えてもダメでしょ、ちょっとニューヨーク。ちゃんと言ってやってよ」
ロサがこっちにふってくる
いつもならまとめてくれるのはありがたいが今はお節介…
「…そうだ…な」
正直今すぐにでも会議室から出て寝込みたいところだが…
そんなことを考えているうちも症状は酷くなっていく一方だ
違和感があった喉が唾を飲む度に痛む
夏場の為に冷やしてある会議室の室温は寒くてたまらない
くそっ…。今倒れたりなんかできるかよ…
大人げない。痩せ我慢だと分かっている
それでも、あんな大口叩いておきながら無理でしたなんてそんなみっともない真似はできない
だが、そんな思いとは裏腹に目の前の風景が歪み出した
脳裏に東京が浮かぶ
あいつの言うこと…聞いときゃよかった。
「…ニューヨーク、?」
ロサの声が聞こえる。意識はそこで途切れた
眩しい光に目を開けた
目を開いてすぐそこの天井は見覚えがある
知っている。この部屋は…
以前、東京が倒れた時に運んできた部屋。
つまり医務室だ
どれくらい寝ていたのだろうか。外はもう暗くなっていた
はぁ…やっちまったな
不甲斐ない自分に呆れながらも体を起こす
会議の際よりずっと軽かった
が、片方の足だけ妙に重みを感じる
ハッとして見ると東京がベットにうつ伏せて寝ていた
なんでこいつが…
様子を見に来て…疲れていたなら、こんな所でうたた寝しないだろう
起こして事情を聞きたいが、目を覚ました東京を前になんて声をかけようか
やはり謝罪から?
しばらく考えていると、スライド式の扉がガラッと開いた
「あら。起きました?」
入ってきたのはロンドン
うわ。こいつにだけはこういう所見られたくなかった
つか何しに?また嫌味でも言うのか
質問には答えずに視線を逸らす
「あなた、39.0度も熱が出てたんですよ。よく耐えてましたね」
「は」
さすがに無視はできない
39.0度?
体感的には37.0度前後と予想していた
遥かに上。
そりゃ体がふらつくわけだ
「…自覚なしですか。まぁ、体力があるのはいいことですが」
ロンドンはうんざりした様子で部屋のドアにもたれる
「無理も程々に。あなた昔から自覚しないで発熱していることが多いので…体調管理だけはしっかりしなさい。」
なんだか親に言い聞かせられた感じがする
ロンドンは部屋を出ようと扉に手をかけたが止まった
後ろを振り向いて言った
「…東京にはお礼を言っておきなさい。貴方が倒れてからずっとここに居たんですから」
は?
それだけ言って部屋から出て言った
え?ずっと?
今の時刻は窓の外の様子から見て最低でも
午後6時。会議が終わったのは午前12時半
いや…途中で倒れたのだから午前12時か
その間ずっと?
つまり6時間はここにいたことになる
仕事はどうしたんだろうか。
そもそも喧嘩した相手にそこまで尽くす意味がわからない
ほっとくだろ普通は。
東京を改めて見ていると、視線を感じとったのか
重そうな瞼を開いた
「…あ…れ…いつの間に寝て…」
頭を抱えながら起き上がるとこっちを向いた
「…あ、よかった。起きたんですね
もう辛くないですか?」
東京の声は少し掠れていた
「…なんで…お前、喧嘩した相手にそんな尽くせんだよ」
疑問が口をついてでた
言ってしまった。
「え?……だってヨークさん、僕が倒れた時も面倒見てくれたじゃないですか」
さぞ当然のように言う
いや…状況が状況だろ…
お前は1時間しねぇうちに目覚ましたし
はてなマークしか出てこないようなアホズラの俺を見て東京はふっと吹き出した
あー…もうほんっとお前は…
「…はぁー…」
ため息をついてベットに倒れ込む
なんだかバカバカしくなってきた
てかさっきから普通は普通はって考えてたけど
「東京は普通じゃねーんだよなぁ…」
「え?」
「あ、」
また言ってしまった。風邪のせいだろうか
「え、今ディスりました?」
「いや…なんつーか、考え事してて」
「いや絶対悪意ありましたよね」
ホントのことだが信じて貰えない
「ねぇって。」
むくれている東京を見て、不機嫌だったロンドンの事を思い出した
あ、そうだ。言わないと
「なぁ東京」
「なんですか。どうせ僕は普通じゃないですよ」
まだご機嫌ななめなご様子だ
「違ぇって…」
体を起こして向き直る
「ごめん」
「へ?」
「素直にお前の言うこと聞いてりゃこうはならなかったし、それから…クソロンから聞いた」
東京はずっと呆気にとられている
「起きるまでずっとここに居たんだろ。…ありがとな」
「……」
なんだろう。こんな機会が初めてだからかどこかむず痒い感じがする
しばらく沈黙が続いた
東京は黙っているが、怒っている雰囲気ではなさそうだ
「……ヨークさん」
「今回は俺が迷惑かけたし、仕事でもなんでもやりますよー…」
「いや、そうじゃなくて」
絶対仕事を手伝えと言ってくると思っていたが
「なんだよ」
「…ありがとうって英語でもう1回!」
「…………は?」
見当違いすぎて驚きが隠せない
まぁ別にいいけど…
「……thanks」
「you’re welcome」
………それがやりたかっただけかよ。
やっぱりこいつ普通じゃねぇー…
「まじでお前面白ぇ…」
「え」
「つか仕事どーした」
「…」
「トーキョーくん?」
「……よろしくお願いします」
「…HAHA…all right.」
オマケ
ロンドン「世話が焼けますね…まったく」
パリ「おつ〜。なんだかんがいって仲いいよねーあの二人♪」
ロンドン「まぁ歳も近いですからね。……ところでパリ、看病していた東京はともかく、あなた仕事は?」
パリ「お願いします!!」
ロンドン「お断りします」
パリ「え…」
コメント
2件
東京ちゃんお母さんみたいだね〜癒やされる〜 東京ちゃんは後で仕事地獄かな?ww