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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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アルメリアは、気に入った女の子の人形一体の購入を決め、オーダーメイドでは男の子の人形を作ってもらうことにした。

女の子の人形はシルに何処と無く面差しが似ており、一目で気に入ってしまったのだ。この女の子の人形の支払いだけでも自分でするつもりだったが


「これぐらい払わせていただきたい。公爵令嬢に支払わせたとなれば、パウエル家末代までの恥です」


と、リアムがおどけながらそう言ったので、お言葉に甘えてプレゼントしてもらうことにした。


女の子の人形の受け取りは、男の子の人形が仕上がったときと同時に受け取ることにして、その日はお互いに屋敷に帰った。


リアムが最初に言ってた通り、オーダーメイドで人形を作ってもらうためには、何度か工房に通い、こちらが仕上がり状況を確認して調整する必要がある。とのことだった。

それはここの職人のこだわりだそうで、そうしているうちに人形と持ち主との間に絆がうまれ、人形に魂が注がれることとなり、人形の表情がより豊かになるのだそうだ。


なんにしろ週に一度は工房に通わなくてはならなくなった。これについてリアムは


「私が君にプレゼントするのですから、週に一度工房に通う際には必ずご一緒させていただきたい。決して退屈な思いはさせません」


と、言った。


アルメリアは少し戸惑った。工房に出かけるだけならそんなに時間も取られないが、その都度リアムと出かけるとなると、そのまま帰るわけにはいかないだろう。

そんなことを考えていると、リアムが見透かしたように提案する。


「ではこうしましょう。工房に寄ったあと、君と共にクンシラン領を見て回る。というのはどうでしょうか? そして、時々は領地内の店に立ち寄り視察ついでにお茶や食事をするのです。これなら領民の様子もわかります。いかがですか?」


アルメリアはリアムの必死な説得に負けた。


「それでよろしければ」


そう返すと、リアムは嬉しそうに微笑みながら左手を胸に当てて礼をした。


「アルメリア、ありがとうございます」


こうして、週に一度リアムと人形工房に通うこととなった。


工房に寄ったあとは、リアムの言った通り領地内を見て回るか、クンシラン領地内でお茶するのが二人の恒例となった。

そうしているうちに、二人はお互いをファーストネームで呼ぶくらいには親しくなっていた。


一か月と半月ほど工房に通ったころ、リアムから


「たまには庭園に出かけませんか?」


と言われ、一度ぐらいなら気分転換に良いかもしれない。と、それを快諾した。


庭園内を散歩していると、日差しが優しく差し込み暖かな陽気で、ひらひらと紋白蝶が庭園の花に誘われ舞っていた。


「あら、もうサルビアが咲いてますのね。綺麗ですわ」


花壇を見ながら、アルメリアは微笑んだ。


「ええ、最近は暖かくなりましたからね。そうか、君が初めて私の執務室に訪れてからもう三か月以上も経つのですね」


そう言ったあと、ふと思い出したかのようにリアムは言った。


「そうそう、君のおかげでパウエル領騎士団も、だいぶ風通しは良くなりました。まだまだ手を入れるべきことは沢山ありますが、それでも以前よりはまともになったのですよ。クンシラン領と比べればまだまだなのですが。それにしても、クンシラン領は本当に素晴らしい。アルメリアが統治しているお陰でしょう」


アルメリアは苦笑した。


「リアム、私一人の力で成している訳ではありませんのよ? それにやはりどんなに正しいと思ってやっていても、目が曇って間違ってしまうこともありますわ。だからそれを客観的に見極めることのできる者を置くようにしてますの」


リアムはアルメリアが達観した考えの持ち主なのは知っていたが、それでもそこまで考えているとは驚きだった。


「それは具体的にどの様なことでしょう?」


リアムはそう言いながら、ゆっくり話を聞きくつもりで、アルメリアの手を引き近くのガゼボにエスコートした。アルメリアはそれにしたがい、ガゼボの椅子に腰掛けると話し始める。


「不正が行われていないかどうかを不定期にチェックする独立機関を設立してますの。でも賄賂を渡す者や、それを受け取ってチェックを意図的に操作する不届き者がでてくるかもしれませんから、本当に信頼できる者にしかまかせられませんけれど」


リアムは大きく頷く。これは自分の組織でも必要な機構だろうと考えた。


「素晴らしい考え方ですね、是非うちの騎士団にもそういった機構を設立したいものです」


すると、アルメリアは苦笑する。


「でも設立当初は『我々を信頼していないのか』と、多少恨まれることになりますわよ?」


リアムは軽く首を振った。


「そんなものは気にしてはいけません。やましいことがなければチェックされても問題ないはずです。それに自分の身の潔白が証明できるのですから、そちらの方が大切なはずです」


リアムがそう言うと、アルメリアは困った顔をして言った。


「そうなんですけれど、やはりチェックされるとなると士気に関わりますもの。それで考えたのですけれど、悪いところばかりチェックされるのは気分の良いものではありませんでしょう? だから同時に素晴らしいところもチェックして、点数がトップクラスの部署には少額ですけど報償金と、一年間称号を与えることにしましたの。その称号があると、アンジーのお店の商品がほんの少し安く買えますのよ」


そう言って微笑む。リアムはこの話を聞いていて、やはりこのパウエル領騎士団のを変えて行くには、アルメリアの知識や考え方は必要だと思った。そこで意を決してアルメリアに尋ねる。


「アルメリア、無理を承知で聞きますが、相談役として正式にパウエル領騎士団にきてもらえませんか? もちろん、事業の方も兼任でかまいません。とにかく今の我々騎士団には、アルメリアの知恵と知識が必要なのです」


いきなりの勧誘にアルメリアは面食らった。質問や相談をされたときにはいくらでも答えようと思っていたが、相談役と言う肩書きがついたら今後は迂闊に物が言えなくなるだろう。それでも相談役を引き受ければその恩恵の方が大きいのはわかっていた。


「相談役だなんて、随分責任重大な立場ですわね」


そう言ってしばらく考えてからアルメリアは大きく息をはいて呼吸を整えた。


「わかりました。お引き受けしても良いです。ですが、まだ領地でやらねばならないことがありますの。お時間いただけるかしら?」


リアムはあからさまに嬉しそうな顔をさすると、満面の笑みで言った。


「もちろん待ちます。引き受けてくれてありがとうございます」


そう言うと、立ち上がり深々と頭を下げた。

 

悪役令嬢は救国したいだけなのに、いつの間にか攻略対象と皇帝に溺愛されてました

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