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「そっか…!良かった。」東はふわりと笑ってみせると、タブレットこと安楽天秤を制服の胸ポケットから取り出した。安楽天秤の黒い画面と太陽光がギラリと反射する。
「これで人を呼べるんだよ。確か……参加者一覧から呼びたい人を選んで……っと。」
安楽天秤を操作する東の横顔はどこか陰りがある。そんなとこも美しいといえば美しいのかもしれない。恋莉にとって東は昔から「そばにいるのが当たり前な存在」だった。しかしそれは、いつの間にか「一緒に愛の中で心中したい人」に変わっていた。
「(………呼びたい人、か…)」
そっと安楽天秤の画面を付け、参加者一覧をタップする。ズラッと最新順に並んでいる参加者名と、検索ドライブが画面の先で揺れている。検索ドライブに「白夜行」と打ち込み、検索をタップする。
【No.3640 白夜行】
氏名:白夜行 東(びゃくやこう あずま)
年齢:17歳
クラス番号:3年4組27番
所属:生徒会長
【チャット】【召集】【電話】
微かに浮かんだ悪戯心に従い「召集」をタップする。すると『場所』『目的』を入力する画面に移動した。中々に手の込んだシステムだ。
「(…あ、スキップボタンがある。面倒くさいし飛ばそう。)」
スキップできるボタンをタップする。すると東の持っていた安楽天秤が激しく振動し始め、それからアナウンスが流れてきた。
「――No.3659の白菓子 が No.3640 白夜行 を 召集しました。」
「………こら!!恋莉!びっくりするでしょ!!」
東は恋莉の方を向いて、怒鳴る。怒鳴るというより、やんわりと注意すると言った方が正しいか。
「(怖くない。…全然怖くない。)」
「あはは、ごめんね。少し気になっちゃって。」
恋莉が柔らかく笑ってみせると、東は毒気が抜かれたようにふにゃっと微笑んだ。
「(――あぁ、やっぱりこの人は………)」
扱いやすい。
数分後、やってきたのはあまりにも「個」が独立した生徒たちだった。
「生徒会長殿、あとで呼ぶから探索してて!と仰ったのに呼んだのが3分後とは一体どういうことですか?」
そう言って、眼鏡と眼鏡を繋ぐ横棒の部分をクイッと上げる男子生徒。どこかで見たことがあるため、3年生だろう。
「そうですよ!!鴉舞委員長を行ったり来たりさせないでくださいっ!」
その男子生徒の隣を陣取る工業用の手袋を付けた女子生徒――スカート丈が異常に短い。
「ふふふ………アイは、分かりますよ!!これは自己紹介をする流れ!!そして殺人が起きるんですよね!?ドントウォーリー!!アイがユーを守ります!!」
スカート丈は正常であるものの、いろいろとおかしい女子生徒。
「柩さん!殺人とか物騒なことを言ったらダメですよっ!」
その女子生徒の後ろで縮こまる男子生徒。
「(あ~~~…………すっごい不安。)」
もしかしたら東以外にも心中できる人の「キープ」ができると思っていた。しかし、どうだろうか。この惨状を見て「あ、この人好き!心中したい!」と思うだろうか。否、思わない。
「はい、みんな。落ち着いて。」
東が手をパンッと叩くと、騒がしい場は一瞬で沈黙に包まれた。
「さっき九十九里さんが言ったように、自己紹介しよう。先に紹介しておくと、彼女は白菓子 恋莉。俺の幼なじみだよ。」
「…よ、よろしくね?」
恋莉は即座に「守りたくなるようなか弱い笑み」を浮かべる。他人の庇護欲を煽るには手っ取り早い手段のはずだ。
「(このメンツじゃ意味ない気がする~……)」
「ふむ、白菓子さんですね。自分は鴉舞 理心(からすまい りず)といいます。死体解剖委員会に委員長として属していました。異能は「保存(セーブ)」。以後お見知りおきを。」
理心は再びメガネをクイッと押し上げた。この学校の「委員会」とは、通常の学校にもある委員会の他に、死亡遊戯の後処理を担う委員会も存在する。恋莉は一般的な図書委員会に属していて、委員長をしていた。
「五月雨 形無(さみだれ けいな)です!鴉舞委員長と同じく、死体解剖委員会に副委員長として属しています!異能は「溶解(メルト)」です。文字通り溶かすと覚えていただければ。」
形無と理心は「死体解剖委員会」の重役同士。形無は理心と距離が近いが、理心はそうでもない。あまり親しいというわけではないのだろうか。
「(………解剖委員会、か。いくら解剖でもその人の内面は解剖できないよね。)」
「さて、マイターン!!!アイは九十九里 柩(やくもり ひつぎ)です!そう、あの死者が入る「柩」です!!アイは名前が嫌いなので「九十九里」とでも呼んでください!アイの異能は「追跡」、会議委員会の委員長です!」
九十九里…柩はずっと吐き気がするほどに明るい。それにしても、子供に柩と名付けるなんて、随分と不思議な保護者だ。
「あ、えっと…………曇里 夜来(くもり よる)といいます。会議委員会の副委員長です………っ!」
夜来は見るからに気弱な小動物系男子だ。東の次は、もしかしたら夜来が候補かもしれない。もっとも、近くにテンションお化けの番犬がいるけれど。
「あれ?凪くんは?」
「祈雨守先輩は講堂に行くと言っていましたっ!」
そのとき、教室の扉がガラッと開き、1人の男子生徒が入ってきた。
「ご、ごめんなさぁい………講堂でパイプオルガンを弾いていたら遅れましたぁっ……あれ?」
それは白黒の神父服に身を包んだ糸目の男子生徒。
「……えっ、と…こんにちは?祈雨守 凪(きうす なぎ)です。よろしくお願いしますっ!」
その顔は、恋莉から全てを奪った悪魔が人間の皮を被ったかのように不自然な光を放っていた。
コメント
3件
うわ、第3話めっちゃ面白かった!東と恋莉の「心中したい」に変わってる感じがもう...好き。笑 あと死体解剖委員会とか会議委員会のメンバー、みんなキャラ立ってて最高だわ。特に柩さんのテンションお化けっぷりと夜来くんの小動物感の対比がエグい。 最後の祈雨守くんの登場シーン、不穏すぎて震えた...これは続きが気になりすぎる🔥