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夏の穂||フォロバ|低浮
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最終話:繋ぎ直された鎖、二人の王国の始まり
ロンドンのチャリティマッチ会場。薄暗い廊下で、僕は2年分の涙と、寂しさと、狂いそうなほどの愛をカイザーにぶつけた。
掴んだ彼のユニフォームに僕の涙が染み込んでいく中、カイザーは僕を強く、骨が軋むほどの力で抱きしめ返した。
「……すまなかった、ネス。俺が間違っていた」
耳元で響く彼の声は、かつての冷徹な王様のものじゃない。震えていて、ひどく必死で、僕と同じように張り裂けそうな痛みを孕んでいた。
「お前を突き放せば、お前は俺の影から解放されて楽になれると思った。だが違った。お前のいないピッチは、どれだけゴールを決めても、世界中から称賛されても、クソみたいに寒くて退屈だった……!」
カイザーは僕の体を少しだけ引き離すと、その大きな両手で僕の濡れた頬を包み込んだ。見上げる彼の青い瞳には、涙が浮かんでいた。あの、傲慢で完璧だったカイザーが、僕のために泣いている。
「俺を一人にするな、ネス。俺のゴールを、俺の美しさを、世界で一番欲しがって、世界で一番正しく飾れるのはお前だけだ。……他の誰も、俺の隣には立たせない」
それは、かつてドイツの雪の夜に僕たちが交わした、あの狂おしい執着の言葉そのものだった。
「カイザー……っ」「もうお前を離さない。イングランドへ来い、ネス。お前のすべてを、もう一度俺に寄こせ」
「……っ、はい……! はい、カイザー……! どこへだって行きます……あなたと一緒なら、そこが地獄でも、世界の頂点でも構わない……!」
僕は叫ぶように答えて、彼の首にしがみついた。2年間、寂しくて、辛くて、息をするのも苦しかったあの暗闇が、彼の体温によって一瞬で溶けていく。重なった唇は、あのロンドンの冷たい雨の日を、そして離れていた絶望の時間をすべて上書きするように、激しく、深く、お互いの存在を確かめ合った。僕たちは知ってしまったんだ。お互いがいない世界は、どんなに輝いて見えても、ただの空っぽの荒野だということを。
互いを縛り付ける愛の鎖は、引きちぎるものではなかった。もっと強く、二度と離れないように、一生をかけて結び直すものだった。
「これからは、王と影じゃない 」
カイザーは僕の唇に何度もキスを落としながら、熱い瞳で僕を見つめた。「俺とお前、二人で世界の頂点を支配する。……俺たちの、新しい王国の始まりだ、ネス」
「はい、僕の、たった一人のキング……!」
溢れる涙の向こうで、カイザーが最高に美しく笑った。もう二度と、右側の空白に怯えることはない。繋ぎ直された鎖を胸に、僕たちは二人で、誰も追いつけない世界の果てへと走り出す。
その決意を証明するように、僕たちはかつて恋人だったときのように、深く、狂おしいキスを交わした。
離れていた2年間の空白を、寂しさを、そしてお互いへの執着のすべてを埋めるような、息ができないほどの深い口づけ。カイザーの舌が僕の口内を強く蹂躙し、僕もまた彼のすべてを貪るように、何度も何度も唇を重ねる。首筋に回された彼の大きな手の熱さに、2年分の涙が、今度こそ幸せな体温となって溶けていった。
ー完結ですー
読んでいただきありがとうございました。バットエンドにしようかなと思ったんですけど、やっぱりハッピーエンドのほうが良いと思ってハッピーエンドにしました。
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