テラーノベル
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「……キスマーク、どの辺がギリギリバレへん?」
流れるように組み敷かれ、俺は全てを彼に委ねる。
上から見下ろす元の前髪がハラリと落ちて、その隙間から覗く瞳は、どこか獲物を定める獣のようにも見える。
「……またつけようとしてんの?」
「ふふッ」と喉を鳴らして笑ったかと思えば、ちゅっと鼻先に愛らしいキス。
ほんま、この子は天性のいたずらっ子や。
「だって、俺のもんって印つけとかな、もとちゃんフラッと違う人のとこいってまいそうやもん」
「え!? あんなに熱烈な告白したのに、俺そんな信用ない!?」
「俺の事すぐ好きになったし、旅館でも好意持たれて満更でもなかったやろ?」
「っ、それは……っ、んんっ……!」
そんなん、不可抗力やんか。
言い返そうとした言葉は、元の喉の奥から漏れる「ジュッ」という湿った音に掻き消された。
鎖骨のすぐ上に、チクリと鋭い痛みが走る。
「……元、待って……あかん、そこは……っ」
薄い皮膚を吸い上げられ、熱が一点に集まっていく。
鏡を見なくてもわかる。そこにはきっと、明日になっても消えない鮮やかな愛の印が刻まれている。
「……誰かに聞かれたら、『好きな人につけられました』って言うんやで?」
「もう! ここ絶対見えるやん!悪い事禁止言うたやろ!?」
「ははっ、ごめんってぇ」
いつまでも笑いが収まらない元に、「いつまで笑ってんの?」と つられ笑いをしながら尋ねると、元は幸せそうに目を細めた。
「……昨日の朝は、こんなことになるなんて思ってなかったなぁ……って。急展開すぎて、今さら頭がついていかへんわ」
「ふふっ、好きあってる2人が恋人になるのに遅いも早いもあるかよ」
「あ、それ、昨日俺が言われて嬉しかったやつの一つや」
「たった一日で友達からグレートアップしたけどな」
重なる体温を感じながら、二人の目が合って、また笑いがこぼれた。
数日後。
空とはんちゃんを呼び出して報告すると、はんちゃんは自分のことのように飛び上がって喜んでくれた。
「やろ!? 俺、最初から二人は絶対お似合いやと思っててん!」
でも、至って普通だった元の俺への告白については、はんちゃんはどうしても納得がいっていないみたいやった。
「俺にはあんなおかしな謎解きカード送っといて、もとちゃんにはそんなすんなり?」なんて不満げに言われたけど。
でも、その前後の所々で見せた、はんちゃんの言っていた通りの「おかしな様子」は、俺も何度も目にした。きっとこれからもその愛らしい行動をずっと見せてくれるんやろし。
はんちゃんが俺のことを『ヒーロー』と呼んでくれるなら、はんちゃんは間違いなく俺たちの『キューピット』やな。
そして。
俺らの楽しい旅行をこれでもかとかき乱してくれたはずの空が、人知れず「影の立役者」になったことは、間違いなさそうや。
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