テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
463
ひより
10,483
#異世界転移
山本乃良
139
#主人公最強
杯雪乃
1,843
「だだばば!」
転生してあっという間に半年が経ち、オルティマは喃語が盛んになってきた。
自分で寝返りや、立って歩けるようになってきた。
感情表現も豊かになった気がして、あやされると笑ったりもする。
(まだ赤ちゃんだけど、少しずつ大きくなってきてるな…)
しかし、レベルはまだ1のままで、転生してからは全く強くなってはいなかった。
恐らくだが、敵を倒して経験値を得ないといけないのだろう。
(早く戦いてぇーなー)
「オルティマ様ー!どこですかー?」
「やべっ、世話係のママゴブだ!隠れろっ!」
ママゴブは本当のお母さんのように、身の回りの世話をしてくれる。
だが、中身45歳の私からしたら、鬱陶しくてたまらない。
前世の記憶を思い出しそうになりながらも、オルティマは自分の部屋の隅に隠れた。
「またどっかに隠れちゃったのかなー?」
ママゴブは別の部屋へ探しに行ってしまった。
(よしっ!なんとかやり過ごせたな!)
オルティマは部屋の隅から出ようとしたその時、何か粘ついたものを触ってしまった。
「ぶば?」
その粘ついたものは、気色悪く蠢いている。
(なんだこれ?)
すると突然、その液状の何かがオルティマの顔へと飛びついてきた。
オルティマは驚き、咄嗟に横に倒れた。
(こいつはまさか!スライムか!)
この魔界に棲むスライムは、知能も無く、一番弱い生物だが、それ故に魔王であるオルティマにも襲ってくる愚か者なのだ。
(ふふふ、スライムよ!お前は私の初めての経験値へとなるのだ!)
オルティマは立ち上がり、スライムに狙いを定める。
「だだだ!!」
そしてオルティマは何度もスライムを攻撃した。
しかし、どれだけ殴ろうとスライムのブヨブヨとした体に弾かれてしまう。
(くそっなんて強敵なんだ!スライムごときに!)
オルティマは机の上に置いてあった、ママゴブの私物である簪を、勝手に取り出した。
オルティマは迷いなく、スライムへ簪を突き刺した。
「ぼぼだ!」
だが、簪は液状の体を貫通し、スライムへのダメージは全くなかった。
(そん……な)
次の瞬間、スライムは簪を体内へ取り込み、スライムの姿は徐々に簪へと変わってしまった。
(え?スライムが簪になった?)
「やぁ!こんにちは!」
(え!?簪が喋った!?)
「僕も驚いたよ!簪に不思議な魔力が宿ってたみたいで、知力が劇的に上がったみたい!」
(え!?私の心の中も読めるの!?)
「読めるよ!さっきはいきなり襲ったりしてごめん」
オルティマは目の前の光景が信じられないほど、びっくりしていた。
この世界に来て、初めて話せる相手だった。
(こちらこそ、ごめんなさい。)
一応、オルティマもちゃんと謝った。
もしかすると、話せる簪のスライムなど、この世界にはいないのかもしれない。
「そうだ!お友達になろうよ!」
簪スライムはお友達になろうと言ってきた。
「!?」
そんな言葉を聞くのはオルティマにとって妙に胸に刺さる。
いや、45歳になるまでずっと部屋に引きこもり、ゲームをしていた前世の孤独な自分は、人生で一度も言われたことのない、信じられないほど新鮮な言葉だった。
(……おっさんに向かって、お友達、ねぇ)
「おっさん??」
(なんでもないよ、お友達になろう!私はオルティマだよ!)
「うん!これからはずっと一緒だよ!僕のことはスラっちでいいよ!」
オルティマは簪を手に持ち、髪に挿し込んだ。
この世界で初めての友達ができた。
それは前世の男にとって、大きな影響を与えたのであった。
コメント
1件
オルティマの赤ちゃん姿と「中身45歳」のギャップが絶妙で、もうニヤニヤしながら読んじゃいました😂 スライムがまさか簪に変化して喋り出すとは思いもよらず、びっくり! そして「お友達になろうよ」の言葉が前世で一度も言われたことのなかったオルティマの胸に刺さるシーン、じんわりきました。初めての友達・スラっちとの関係、これからどう育っていくのか楽しみです!