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カチ、カチ、カチ、ボーン、ボーン、ボーン……
(……?)
古びた柱時計の重厚な時報が遠くに聞こえる
耳の奥に響く音を何度となく味わったところで、夢を見ているのだなと私は思った
だって私の部屋には柱時計なんてないし
ぼんやりとした意識で、枕元に落ちているはずのスマホを探す
「むぎゅっ」
(ん?え?何か柔らかいの掴んだ?)
「おう。なんと情熱的なお嬢さん!」
オペラ調のバリトンが高らかに歌い上げた
驚いて目を開けると、なんと私は燕尾服の小人を掴んでいるじゃないか!
「何……!?」
上体を起こすと、見慣れたような、見慣れない光景が目に飛び込んできた
部屋は煌々とライトアップされていたが、確かに私の部屋だ
しかしクローゼットにはリボンがかけられているし
照明にはシャンデリアよろしく、色とりどりの宝石が下げられており、
照明の下では小さな貴婦人たちがワルツを踊っていた
机に重ねられた参考書には、小さな音楽団が腰掛けてそれぞれに楽器を奏でている
どこからきたのか分からない柱時計にも、小人たちがクリスマスツリーのような電飾を巻いている最中だったが、何故か柱時計が「俺は金平糖のほうが好きだから、今すぐ交換しろ」などと小言を言っていた
手元の小人がにんまりと笑って言った
「お誕生日おめでとうございます。
お迎えにあがりました。お嬢様」
#創作小説 #テラーノベル