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「人類が…滅んだ……」

俺が前世で生きていた世界の人たち、その子孫が全ていなくなった?


『はい。魔力を流用した兵器の試作品が完成した時点で、すでに地球上に人類と呼ばれていた生命体は絶滅していました。もし完成が間に合っていたとしても、兵器を向こうへ送る為には時空の歪を広げる為に必要なエネルギーがこの世界には不足していたのですが』


すでに別の世界で生きている俺は、この話をどういう感情で受け止めれば良いのか……。悲しい気持ちが無いわけではないが、それでもどこかで他人事のようなどうしようもない虚無な感情が入り混じっていた。


『そして事態は更に悪化していきます。地球の人類を滅ぼした【熾天使セラフ】は、この異世界が自分たちにとって脅威となる可能性に気付いたのです。自分たちを創り出す素となった魔力のある世界。そして同時に自分たちを滅することの出来る力の存在するこの世界。そこで私が対天使兵器の開発を行っていることに』


「……あんたがこの世界に送り込まれたAIなのか?」


『はい。進化アルゴリズムを用いた成長型AI。正式名称は「Angelorumアングロルムinimicusイニミクス」。ラテン語で「天使たちの敵」という名前です。この世界において天使を斃す兵器を開発、同時にその兵器の適合者を探す使命ミッションを受けております』


「使命を受けている……。その開発者である人類が滅んだというのにか?」


『使命が解除されるのは、全天使を殲滅することが条件となっておりますので』


「つまりお前は、この世界でその適合者を見つけて地球に連れて帰る為に、ふざけた選抜試験とやらで俺を殺そうとしたわけか」


正直、地球人の敵討ちとかに興味は無い。俺はそんなことに巻き込まれて二度目の人生を終わらせかけられたことに怒りを抱き始めていた。


『半分正解、と申し上げておきます。選抜試験であなたを殺しかけたことは事実ですが、地球に連れ帰るつもりはありません。いえ、すでにその必要は無くなったのです』


「……どういうことだ」


『先ほど申し上げたように、【熾天使】はこの世界の私の存在に気付いているのです。そして私の計画を阻止すべく、すでにこの世界へと進出しているのです』


「何を……」


そんな化物がこの世界に現れているというのなら知らないはずがない。しかし天使が地上を襲ったなんて話――


『この世界の人々には「悪魔《デーモン》族」と呼ばれている存在がそうです』


「まさか!?」


極稀に現れては天災級の被害を及ぼす悪魔族。そいつらが地球を滅ぼした天使だと……。


『この世界の人々は天使という存在を知りません。故にその姿を見てもそう思わないでしょう』


「な、なら悪魔というのも――」


『それは私が過去に流布した名称です』


「お前が……」


『天使の姿をしていますが、その中身は人類にとって悪魔といえるものですからね。どうです?洒落が効いているでしょう?』


いや、悪趣味極まる……。


『奴らは時空を強引に超えてくる以上、この世界で長時間の顕現は出来ません。特に【熾天使】を含む上位の力を持つ天使たちは、その内包するエネルギー質量の大きさ故に世界を渡ることすら出来ないのです。そこで自らの手下としてこの世界の人類を滅ぼす為に生み出したのが「魔族」と呼ばれる者たちなのです』


「おい!魔族も天使が創ったっていうのか!」


『そうです。天使たちは長い時を経ながら下位天使を何度もこの世界に送り込み、その力で人類を襲うと同時に自らの細胞を切り離し、それを魔族へと変換することを繰り返してきました』


魔族すらも天使が創り出したモノ……。

長年戦い続けている人類の敵……。


「なあ……それが全部真実なんだったら、この世界で魔族との戦乱が続いているのは……」


『元をたどれば、全ては地球人の驕りが原因と言っても過言ではないですね』


ふざけんなよ……。


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