僕は卒業が怖い。確かに友達はいない。
でも、自分の身勝手な理由で学校に行かずに、小学生特有のノスタルジーも楽しさも感じずにこの学年になってしまった。
夏休みなんだからまだ間に合う、と思う人もいると思う。
だが、既に半袖を着ることさえできなくなってしまっているのにできるわけがない。
夏の暑い中、長袖で公園や駄菓子屋まで走って行くなんて流石に無理がすぎる。
クラスメイトの中には、空が真っ青に染まる下を半袖で走って友達と遊ぶ、なんていう漫画みたいな日々を過ごしている人もいるかもしれないのに。
僕が知っている夏は……、茹だるような暑さに午睡もできそうにない蝉時雨、夏休み最終日の絶望感。
そんな記憶ばかりだ。
こんなに憂鬱なことしかないのに、なんで僕は夏が好きなんだろう?
そうか。幼稚園に通っている頃の夏休みが大好きだったんだ。
友達と食べたかき氷の味が、いまだに記憶から拭いきれないんだ。
いっそ幼稚園の頃から友達がいなかったら、あのかき氷を食べなかったら、僕は夏が嫌いだったのかな?
夏が嫌いだったら……「卒業したくない」なんて、酷く辛い感情に襲われることもなかったのかな?
…そうだ。お母さんにかき氷を作ってもらおう。
頭を冷やせば、きっとこの虚しさの感情の対策も思い浮かぶかもしれない。
確か、いちごのシロップがあったはず。
そうと決まればさっさと氷があるかでも確認するか。
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