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ガタンゴトン。
電車内。 その日、僕は何故か他ハウスの名探偵と居た。相手は何も話さないしとにかく仏頂面で顔色一つ変わらなくて怖い。だけどやな雰囲気はしなかった。不思議だなと思う。
沈黙が流れてもう数十分そろそろ気まずくなって来て僕から声を上げようと決めて勇気と知恵とコミュ力を上げる為に頭の中でシュミレーションしているとまさかの名探偵から声をあげた。「おい。」その一言だけで聞き惚れてしまいそうな美声が僕の耳に透けて通る。
??「はっ、はい!」
??「お前…少し俺の服を買うの手伝え。」
??「え…?」
千ト「ふんふふ〜ん。」
僕は今絶好調まっしぐらだ。
それが何故か。
それは…
左手「千ト、随分楽しそうじゃん。」
右手「えぇ、良い兆しです。」
今日はネットショッピングで買った右手君、左手君とお揃いのネックレスが届く日!
凄く楽しみでこんな朝早くから起きてしまった。今の時刻は6:30分。僕からしたら早起き過ぎると言っても過言ではない時刻だ。
千ト「あ!ネックレス届いたのかな?はいはーい!!今出まーす!」
ガチャと扉が開く音が鳴り、扉の穴はどんどん広がる。やがて扉の穴は広がりきり、ナイトアウル事務所のインターホンを押した人の姿が露わになる。僕は途端に驚いた。
その姿が配達員さんでは無かったからというのもあったが僕はその姿をよく知っていた。
青髪に耳に着いている無数のピアス。見蕩れてしまいそうな綺麗な顔立ち。 そして全てを観察ているかのような青い美しい 瞳。
ホークアイズ名探偵 司波仁だ。
千ト「う、うわぁああぁあ?!」
少しの沈黙、意識が戻ったかの様に叫ぶ僕を観て少し肩を震わせる司波仁。少し驚いてしまったかな。後から考えるとなんだか申し訳ないくなりそうだ。だが今の僕に司波仁さんを匿う余裕は無い。驚きと怖さに涙が込み上げて来て鼻をひくひくさせながら爪を切っていた右手君にダイブした。パチンッ。爪切りの音が鳴る。ビックリして爪を間違えて切っちゃったみたいだ。「ヒュッ」と右手君が息を呑む音が聞こえる。それを見ていた左手君は腹を抱えている。右手君にも申し訳ない事してしまったな。そう思いながらも僕は右手君に抱きついて大泣きしてしまった。右手君はそれを見て「ふぅ。」と息を吐きながら僕の頭を撫でてきた。不意に撫でてくれた手を見るとさっき切っていた爪が見えた。深爪させてしまったな。と僕は思う。明らかに他の爪よりも短い。そんな事を思っている内に涙はみるみる引っ込んで行く。少し冷静になったであろう僕を見て左手君はパイナップルが刺さったナイフを僕に突き出してくれる。もう季節ではないけれど左手君が食べさせてくれるフルーツは全部美味しいからきっとこのパイナップルも凄く甘くて美味しいのだろう。
千ト「あーん。」
僕がそう言って口を開けると左手君が僕の口の中にパイナップルが刺さったナイフが入る。口いっぱいに広がる甘さがほっぺたを落としてしまいそうだ。凄くジューシーで美味しい。こんなに美味しいパイナップルがあるんだな。
千ト「あっ…」
僕は思い出した様に一言声を上げる。
(そうだ。司波仁さんだ。)
完全に忘れていた司波仁さんの事を思い出したのである。ふと、玄関の方向に視線を向ける。
司波仁さんはまだ居るのだろうか。
いや、きっと居る。
いきなり大声を出して驚かせておきながら事務所に戻って行き、こんなに待たせるなんて司波仁さんはきっと怒っている。そう思うと玄関まで足を運ぶ勇気が無くなって次第に怖くなってきてどうしよう。と、右手君に視線を送る。すると右手君はパチッと瞬きした後、こくっと首を縦に降る。右手君は優しい大きい手で僕の涙を拭った後、僕を左手君に預けて玄関へと向かった。僕は内心ドキドキしていた。勿論、司波仁さんが怒っていそうだからというのもあるが、右手君は司波仁さんと仲が少し悪かった様に思えたからだ。事務所のリビングと玄関は繋がっていて玄関から事務所に入ればすぐにリビングに行ける様になってるから多分右手君、左手君も来客がだれなのか分かってる筈だと思うけど…大丈夫かな?と思う僕をそっちのけに右手君は勢いよく扉を開けた。ガチャ。そんな音が事務所に鳴り響く。
右手「これはこれは。ホークアイズの。」
右手「態々我々に何用ですか?司波仁。」
仁「……少し…ここの名探偵に用がある。」
右手「ほう?ではその用とやらをお聞きしても?」
仁「皇千トには言うようにしよう。」
そんな乾いた会話が続く中、僕はドキドキしていた。話してる内容も丸聞こえだし、司波仁さんが僕に用なんて珍しいにも程がある。司波仁さんは他ハウスと絡まないで有名だ。なんせ司波仁さんは孤独主義者だ。仕事でも無いのに他ハウスの名探偵に用事があるなんてあり得ないと言っても過言ではない。
仁「悪い様にはしない。」
右手「貴方…分かっていますか?それは私達ナイトアウルに貸しが出来るということですよ?貴方らしくもありません。」
仁「あぁ。確かにそうだな。一見してみれば杜撰だろう。」
うぅ。本当に僕に何の用なんだ。司波仁さんの考えてる事は誰にも分からない。なんせ司波仁さんはネスト序列21位、ホークアイズの名探偵なのだ。ネスト序列50の僕達からしてみれば近しくて遠い存在だ。まぁ、僕の方が歳上だし先輩なんだけどね!半年差だけどその事に変わりはない。ふと、左手君を見てみると司波仁さんを睨み付けていた。かと思うと、左手君は僕の方を見てクスクス笑い始めた。
左手「千ト〜、モテモテじゃぁ〜ん。」
揶揄う様にそう言うと左手君はまたニヤニヤしている。
千ト「もぅ!司波さんにモテても嬉しくないよ!」
左手「ふぅ〜ん?じゃぁ、どんな奴なら嬉しい訳〜?」
また左手君は僕の事を揶揄ってきた。
んもぅ!そう思いながらも返答する。
千ト「好いてくれるのは有難いけど、僕は左手君と右手君が居ればそれでいいよ。」
これは本心だ。本当にそれだけでいい。
いつか離れる事があるのは知っているけれどでも今は幸せだから。それでいい。もしも生まれ変わるならまた左手君と右手君の隣で居たいと願うばかりだけれどそれは所詮、神様の気まぐれだ。神様からしたら僕達の願いなんてちっぽけなのだ。気に入ったら叶えてやるし気に入らなければ叶えてやらない。それだけ神様からしたら僕らはどうでもいい存在だ。僕は黒いからきっとこの願いを神様は叶えてくれない。
…せめて僕にも親しい人が出来れば。
少しは二人に依存するのを辞められるだろうか。……いや、無理だ。親しい人が出来た所で僕はもう止まらない。止められない。
…………。
今度季節のフルーツを買おう。
きっと右手君と左手君はよろこんでくれる。
そうだ。そうしよう。
右手「千ト。司波仁が話があると。」
千ト「う、うん!分かった!!」
千ト「えと…僕に何か用ですか……?」
仁「あぁ、外に出るぞ。」
千ト「えぇ?!今からですか?!」
午後3時。
結局朝だったし、司波仁さんとは待ち合わせ時間や場所を決めて貰った。
司波仁さん曰く、「いつでも良かったんだが今日が珍しく平日だから来た。それだけだ。別に今からとも言わない。来てくれるならそれでいい。ただし今度は待たせるなよ。」との事だ。
駅前広場。人が凄く混み合っている。
本当はこんな細菌がいっぱい飛び交ってそうな場所来たくなかったけれど電車に乗ると言うならば仕方が無い。それに司波仁さんにまた貸しを作ってしまう。そうなってしまえば右手君、左手君は困るだろうから。それだけは阻止したい。僕の意思はただそれだけだ。
駅前広場をキョロキョロしていると司波仁さんを見つけた。この人混みを見つけるのは流石に大変で早く来たは来たんだけど見つけるのに時間がかなりかかってしまった。
僕は即座に司波仁さんの所に駆けて行く。
千ト「あの…待っちゃいました……?」
仁「…いや全く待っていない。」
嘘だと分かった。
かなりの時間を待っただろう。
きっと僕に気を遣ってくれているのだ。
仁「……さっさと行くぞ。」
少し照れくさそうにガシガシと後頭部を掻く司波仁さんを見て僕はなんだか少し警戒と緊張が解れた気がした。ほっと胸を撫で下ろした僕を見て司波仁さんも何故かほっとしている様に見えた。意図も何も分からず司波仁さんに言われるがまま着いていく。切符を買い、改札口に通し、ホームに降りるとナイスタイミングとでも言うべきだろうか。電車は丁度そのタイミングで来た。大きな音を鳴らしながら電車は止まった。司波仁さんは「行くぞ」と言わんばかりに僕の手を引っ張り電車の中に引き摺り込む。
電車の中は平日なだけあって案外スカスカで僕は少し安心した。これで飛沫が飛ぶ心配はあまりしなくて無くなったからだ。
仁「…もぅすぐ発車する。座らないのか?」
親切にも司波仁さんは僕に座る事を促してくれた様だった。
千ト「あ、ありがとうございます。でも誰が座ったか分からないし…」
その後、司波仁さんは少し考えた後、「そうか。」と一言だけ言い放ち、僕の手を引いた。
ストン。僕は司波仁さんの膝の上に居る。
…?膝の上……?………膝の上…………?!
え…?!なんで?!僕が同様を隠しきれていない事に気付いたのか、司波仁さんはくすくすと僕を愛らしげに笑った。
仁「ここなら誰も座ったことがないぞ。」
そう一言言い放ち、司波仁さんは黙りこくってしまった。それから数十分は経っただろうか。どうしよう。かなり気まずい…。意を決して自分から声を掛けようか…いや、逆に迷惑に思われるかも……?どうしよう。そんなことを思っていると司波仁さんが口を開けた。
仁「おい、もぅ着くぞ。」
千ト「あ、は、はい!あ、あと…!」
仁「?」
千ト「何処へ…」
仁「俺の服を買いに。」
千ト「へ?」
拍子抜けした声が漏れる。
まさかそれだけの理由で僕を連れ出したなんて夢にも思わない。だけどなんだか胸がぽっとなった気がした。お買い物…ちょっと楽しみかもしれないな。そうだ。右手君と左手君のお洋服も買ってあげよう。たまには生で見るのも悪くない。そう思った僕であった。
【あとがき】
中途半端ですみません。
初めまして主の瓜時。です。
とりあえず仁千ですね。推しカプ。
仁大とかも良いけどね。
でもやっぱり縦大だ。
うん。話がズレました。
人気は出ない事間違い無しですね。
次回か次々回にはRも出るかもです。
もしお手に取って下さった方居ましたらありがとうございます。嬉しい限りです。
それでは4,310文字お疲れ様でした。
乙っす。