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呆れ果ててるばっちゃん、滅茶苦茶心配そうに見てくるフェルとカレンを前にしてちょっと怯んだけど私の決心は変わらない。
「アリア、中心部でオメガ弾を爆発させたら木っ端微塵になるかな?」
『少なくとも現状から細分化されるのは間違いありません。中心部に空洞がありますし、オメガ弾の威力ならば内部からの崩壊を引き起こすことも可能です』
「細かく砕けたら、危ない破片だけトラクタービームで引っ張れば良いよね」
具体的には地球へ向かう破片を退けて後は放置だ。多分木星辺りの重力に引っ張られて別方向へ飛んでいく筈。地球が無事なら問題にならない。
『地球単位で一キロ未満ならば可能です。しかし、敢えて問います。ティナ、正気ですか?』
「私は正気だよ」
『内部のスキャンデータがあるとは言え、ギャラクシー号でもギリギリの幅を高速で飛行する必要があります。ナビゲーションは行いますが、極めて危険であることは確実です。未開の惑星のためにティナが命を懸けるのは合理的な判断とは言えません』
「放置したら文明が一つ滅びるんだよ。アードからすれば銀河の反対側の未開惑星でも、地球人の皆さんと交流した私にとっては他人事じゃないんだ」
『非合理的です』
「誰かを助けたいって気持ちに嘘は吐きたくないんだ。ごめんね、アリア」
『……サポートはお任せを』
納得していない感じかな?ごめんね。
「ティナ……」
フェルが不安げに私を見てる。
「ごめん、フェル。毎度毎度心配ばっかり掛けちゃって」
「……ううん、気にしませんよ。だって、そんな無茶をするのがティナなんですから。でも、ちょっとだけ文句を言いたいので、ちゃんと帰ってきてくださいね」
「あはは、お手柔らかにお願いしたいなぁ……」
フェルからのお説教が確定したなぁ。涙目で言われるからダメージが大きいんだよね……。
「カレン、巻き込んじゃってごめんね?」
「謝らなきゃいけないのは私達だよ、ティナ。良く分からなかったけど、地球のために無茶をするんだよね?」
「んー、やりたいからやるだけだよ」
別に見返りを求めてる訳じゃないし、私にとってこの事態を放置すさるなんて選択肢はそもそも存在しない。
「はぁ……ティナちゃんは頑固だからなぁ。しっかりサポートするから、ちゃんと帰ってくること。まだ死ぬには早すぎるからね?」
「ありがとう、ばっちゃん」
皆と挨拶を交わして、私は格納庫にあるギャラクシー号へ乗り込んだ。何だか久しぶりな気がするよ。システムを立ち上げて、発進準備を整える。
「アリア、オメガ弾は?」
『既に搭載されています。時限信管に設定しました』
「ありがとう」
『貴女をサポートすることが私の存在意義ですので』
『ティナ、もうすぐフロンティア彗星と接触しますよ』
フェルだ。
「分かった。行ってくるね、フェル」
『行ってらっしゃい、ティナ』
次の瞬間、ハッチが開いてギャラクシー号が星の海へ飛び出した。大きな彗星が視界に映る。こんな時じゃなかったら、ゆっくりと観察したかったんだけどなぁ。
『目標を捕捉、ナビゲーションを開始します』
ディスプレイにデータが映し出される。これ、狭くてグネグネしてるけど……いけないこともないっ!
『発射ーーーッッ!!』
ばっちゃんの声が聞こえた瞬間、プラネット号のビーム砲とミサイルランチャーが火を噴いた。高性能な火器管制システムのお陰でビームやミサイルは寸分違わず同じ場所に着弾。フロンティア彗星の空洞に繋がる穴を開けた。いや、狭いなぁ!
「いくよ、アリア!」
『はい、ティナ』
一気に出力を上げて穴へ飛び込んだ。直ぐにライトを付けて……いやいや!なにこれ!?
「うわっと!?」
トンネル内部は狭くて突起物も多い!ライトがあるとは言え、これじゃあデータだけが頼りだ!
『警告、減速を推奨します!』
「そんな時間はないよ!このままいく!シールド出力を最大にして前方へ集中!」
トンネルは真っ直ぐではなくて上下左右の起伏があるから飛ぶのが。
「うわっ!?」
突起に左ウイングがちょっとだけ接触して衝撃が走った。
『ティナ!』
「大丈夫!今のはちょっと危なかったけど!」
迫力満点だよ!本当に!
『間も無く目標地点です』
「オメガ弾発射用意!誘導は任せたからね!」
『お任せを……!?ティナ!』
「なに?わぁあっ!?」
突然真後ろで爆発が起きた!何が!?
……センサーに反応!?
『センチネルドローンを検知!真後ろです!数は一機!』
背後のモニターを見ると、エイみたいな形のセンチネルスターファイターが映し出されていた。何でこんなところに!?
『ティナ!速やかな離脱を!』
「このまま進む!引き返すなんて出来ない!」
『しかし!』
「アリア!シールドの半分を後ろに回して!いくよぉ!」
センチネルスターファイターは緑色のビームを撃ってくる。突起物を避けながらビームを回避するなんて無理ゲーも良いところだよ!
『目的地点です!』
「発射っ!!!」
目的地にたどり着き、オメガ弾を発射。アリアが誘導してくれたお陰で、目標の岩壁にミサイルが突き刺さった。
「時限信管停止!今すぐ起爆させて!」
『ティナ!?』
「早く!こいつを宇宙へ出したら地球が!」
彗星内部は外部との通信が遮断されている。でもこのスターファイターを外に出したら、応援を呼ばれる!地球が危ない!
『っ!起爆します!』
次の瞬間、目映い光と共にオメガ弾が大爆発して、背後から爆炎と衝撃波が迫るけど!
「わぁああああっっっ!!!」
最大出力で加速、突起物に接触してゴリゴリシールドが減衰していくけど、構うもんか!まだまだやりたいことはたくさんあるんだからぁあっ!!!!
目映い光と共にフロンティア彗星は大爆発を起こし、粉々に砕け散る。
「はぁ……!はぁ……!はぁぁぁ……!死ぬかと思ったぁ……」
『シールド消耗率九割を越えました。無茶が過ぎます、ティナ。この後お話があるので覚悟するように』
「アリアからもお説教かぁ……センチネルは?」
『爆発に巻き込まれて爆散したのを確認しました』
「良かったぁ……はぁ……」
間一髪脱出に成功したティナは安堵しつつ、視線を前に向けた。そこには最大望遠で小さく映し出された青い地球が映り。
「……良かった……」
彼女は安堵するのだった。