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序章__
沫という漢字の読み方は、「まつ」と「あわ」の二つある。まつは、飛び散る水の粒・しぶき・水のあわを指し、あわは、液体が空気を包んでできた小さい玉・口の端に吹き出る唾液(だえき)のあぶくを意味する。すぐ消えるところから、はかないことのたとえ、つまり比喩に使われるとWebの国語辞典にのっていた。
『まるで私達みたいじゃない?ねぇ、美久璃?』
彼女は病院の四階の一番隅の病室に一人で来ていた。ベットの上で目を閉じている少女を美久璃と呼んだ彼女は優しく話しかけているが、返事は返ってこない。換気をするために病室の窓を開けた。空は雲ひとつない晴天で、病院の中庭の真ん中にある一本桜が満開に咲いている。桜の花弁が少女の鼻に舞い降りた。
ズキズキと痛みが。「さっちゃん。」そう呼ぶ少女の声がその日はずっと、彼女を飽和していた。
これは私と、私の大切な幼馴染の生涯忘れることの出来ない過去の物語だ。
「キャー!!聖乃(ヒジリノ)先輩が登校なさったわよー!」
聖乃先輩、そう呼ばれているのは、長髪の黒髪で制服はボタン一つ空けてなく、スカートも指定された長さできっちりと着こなしている、いかにも優等生という感じを纏った人である。周囲の歓声の中、表情微動だにせず校門から校舎に続く道を歩く彼女の名を聖乃 咲雨(ヒジリノ サクラ)という。私立四葉(シシバ)高等学校に通う高校二年生だ。彼女が校門へ足を踏み入れると学校中がガヤガヤと騒がしくなる。
「今日も美しいなぁー」
「聖乃先輩、おはようございます!」
色んな声が飛び交う中、清冽の女と呼ばれる咲雨に挨拶をする。勿論基本的に咲雨が挨拶を返すことは無い。それどころか表情一つ変えないので清らかに澄んで冷たい状態を意味する「清冽」なんて漢字が使われている。
『………..ペコ』
だか、例外もある。毎日、私にお辞儀をして元気に挨拶してくる彼女を見て咲雨はつられてお辞儀して挨拶を返した。
「キャー!!」
「挨拶返されたんですけどー?!!!」
「えぇー、いいなぁーー」
「私も挨拶されたぁーーい!!」
ザワザワ
ガヤガヤ
咲雨は正直毎日のように騒がしくなるので鬱陶しく感じている。学校の後輩たちが彼女に向かって挨拶をしたが、スルーして咲雨は歩く。私はこの学校では殆ど会話をすることがない。そう、あの時から….。挨拶は咲雨にとって大切な人にしか返さない方がいい、そう助言をくれた友人が二人、この学校にいる。
「おはよう。咲雨ちゃん!」
「はよー。咲雨、今日も人気だなー。なびかねぇ先輩に毎日挨拶するなんて飽きねぇのか?こいつらは」
『陽月(ヒヅキ)くん、光月(ミヅキ)ちゃんおはよう。…..陽月くん、こいつらと呼ぶのはやめた方がいいと思う。』
「そうだ!そうだ!そして、口が悪いっ!!」
そう。この二人が咲雨と今、1番近くにいる友人だ。
自分のことを咲雨ちゃんと呼んだ子が天海 光月(アマミ ミヅキ)という。意地悪な所が少しあるんだけど根はいい子である。咲雨と中学が一緒で仲良くなった。そして、二人は私の過去を知っている、友人である。自分の事を咲雨と呼び、光月ちゃんにひーくんと呼ばれている人が天海 陽月(アマミ ヒヅキ)くんという。
「あぁ、、じゃあ”あいつら”でいいか?あと、光月っ!口が悪いのはクラスメイトが俺ら双子を似すぎて見分けられねぇからそうしてんだよ」
「ひーくん!こいつらも、あいつらも対して変わらないよ!」
「ほぅー、光月?ひーくん呼びは中学で卒業したんじゃねーのかよ!!」
ギャーギャー、ワイワイ….
『はぁ….』
2人は双子で、言動も背も陽月くんが168.5cmの光月ちゃんが168.2cmと余り変わらず、髪型も茶髪で前髪に金色が入っているのも同じな上に美形なので美男美女双子として、この2人も注目の的だ。2人は分かるが….どうして私も注目されているのだろうか。まぁ、私の話は一旦置いておいて、2人の身長は3mm違うんだから同じにするなよ!って陽月くんは威張ってますが笑
『3mmの差なんて見ただけじゃ分からないと思うよ笑』
つい口に出してしまった。急に喋りだしてびっくりされる、そう思った。すると、
「咲雨、ひでぇーなー。」
「咲雨ちゃん!ナイス!!」
どうやら喧嘩の途中で背の話が出ていた様だった。結果的に繋がって良かったと咲雨は胸を撫で下ろした。授業の事を話しながら咲雨は至る所から生徒の視線を浴びながら教室へ入っていく。私と光月ちゃんは2-2で陽月くんだけ隣の2-3だ。一緒じゃなくて少し寂しいけど。着席のチャイムが鳴った….。はぁ、今日は彼女にどんな話をしようか。
(はぁー、やっと授業終わった、、)
一日中、他の生徒の視線を浴びる。だから疲れるのだ。清冽の女と呼ばれているのは一々対応するのが面倒臭いからだ。
「咲雨ー、お疲れ〜。今日も美久璃(ミクリ)ちゃんに会いに行くのか?」
ちょうど、同じタイミングで隣のクラスの陽月くんと会った。
『陽月くんもお疲れ様。うん。今日も会いにいくよ。』
「病院まで送ってこっか?もう暗いしさ」
『ありがとう。じゃあお願いしようかな。』
「まかせろ!」
そう言って私は陽月くんと、美久璃と言う彼女に会いに校門を出た。
ー第一話に続くー
【あとがき】
皆さん、どうも。作者のむらさき。です。新作読んで下さり、ありがとうございました。私の投稿1周年を記念して、2話(序章と1話)同時公開となります。これからもむらさき。を宜しくお願い致します🙇♀️
さて、作品の話に移ります。今回のテーマは「別れと再会」です。テーマの理由も後々分かりますので、ここでは話さないでおきます。お楽しみに😙
今回の物語は咲雨が中心になっていますが、章ごとに主人公を変えていく予定です。そして、この「桜の下で君を沫。」は幼馴染の過去編として出していきますので、美久璃と蒼太の恋愛を書いて咲雨の方を本編として書こうと考えています。長いお付き合いになりそうですが、宜しくお願いしますー
では、また1話で会いましょう!
2023.5.6