この話は1話から3話(遭遇・無意識・異変)のお話の別視点のお話です。Another storyと言えるかも分からない…ご期待に添えなかったらすみません。
前までのお話を見てない方はそれらから見るのをおすすめします。
mgr side
今日は仕事も早く終わり、家の近くを散歩しているといきなり大雨が降ってきた。慌ててカバンに入ってた折り畳み傘を取り出してさし早く家に帰ろうと足を速めた瞬間ふと目にはいった見覚えのある姿。
「…舘さん?」
思わず声をかけるとびっくりした様子でこちらを見る彼。その顔色は悪かった。
「何してるんすか?風邪引きますよ?」
と声をかけるものの舘さんは自分のことはおろか、人の心配をする始末。とりあえず家に連れて行こうと手を差し伸べると思わずといった感じで舘さんは俺の手を掴んだ。その手を握り返して少し引っ張りながら家に向かった。
家に着き、まずはびしゃびしゃな彼の髪や服を拭いた。拭かれてる本人はびくともせずどこか遠くを見つめていた。ある程度拭いた後、若干手遅れだろうなと思いながらも彼をお風呂場に押し込んだ。そして彼がシャワーしている間、濡れた服を選択したり掃除をしたりして過ごした。ひと段落したところで舘さんが戻ってきたが髪が濡れたままだったので乾かした。あまりにも動かないので心配になって顔を見ると、彼は口を噛みしめて何かに耐えているようだった。…後で何があったか聞いてみよう…口の堅い彼が話すとは思わないけど。
そんなこんなでもう夕飯の時間。何か食べたいものがあるか聞いたら
「………腹減ってないからいらない。」
と言った。流石にそれはまずいのでこちらで勝手に作ることにした。
「…いらないって言ったのに…」
という声はガンスルー。何を作ろうか迷ったが、そういえば舘さんうどんが好きって言ってたなと思い冷凍のうどんをゆでて二人で食べた。お腹すいてないと言った彼には少し少なめにした。
2人とも食べ終わって舘さんをソファーに座らせたあと、後片付けをした。舘さんはぼーっとどこかを見つめていた。後片付けも終わり舘さんの隣に座った俺はまず明日の仕事について聞いた。どうやら夕方からのラジオ収録だけらしいので今日は泊めることにした。そして恐る恐る
「…何か抱えてることでもあるんですか?何か力になれることがあるなら言ってください。」
と言った。すると彼は下を向き、泣きそうな顔で「……疲れたんだよ。」
と言った。そして諦めたように言葉を紡ぐ彼を見てられなくなって
「今言ってくれたように舘さん疲れてるんですよ。逃げ出したくなるくらい。でもそこまで頑張った舘さんは本当にすごいと思います、お世辞なしで。だから今くらい泣きましょうよ。先輩後輩関係なく。溜め込む方が辛いっすよ。」
と言って傍にあったタオルを彼の目にあて、抱きしめた。すると彼は声を殺して泣き始めた。時々出てくる嗚咽に何度も胸が痛くなりながらひたすら背中を撫でた。暫くしたら舘さんは落ち着いてきたようで、そのタイミングを見計らって彼を横にして、目に冷たいタオルを当てた。ふと気になって体調はどうか聞いた。すると彼は少し顔をゆがめて
「…頭、痛い、かも。」
と言った。よく見たら顔も赤くなっている。熱を測ると思った以上に高い数値がでて顔をゆがめる。
「…これは…舘さん聞かない方がいいかも。」
「……何度?」
「…言っていいんすか?」
「うん。」
渋々
「…38.1度です。…今までよく平然な顔してましたね…」
と言うと彼は泣きそうな顔で
「…明日…どうしよ…」
と言った。マネージャーに確認すると言って電話しにいくと彼は少し寂しそうな顔をした。すぐ戻ろうと決意し、電話を終わらせた後、一応メンバーのグループメールにも舘さんが熱をだしたことを報告する。するとすぐに既読が付き、彼を心配しているメッセージが届く。やっぱり彼は愛されてるなと思いながら戻って電話の内容を報告する。すると彼は顔を歪め一筋の涙をこぼした。
「……迷惑、かけた…」
…そうだった。彼は自分が思っている以上にメンバーに愛されているのに気づいてなかった。迷惑なんて思ってないのに。なんとかしてこのもどかしい思いを伝えようと
「舘さん…あなたは強い人だからできれば周りに迷惑をかけたくない…って思うこともあると思います。…でも俺たちがしてるのは迷惑じゃなくて心配です。舘さんは不安になるくらい努力をする人だから。無理してないか不安で心配なんです。…ほら、みんな迷惑だなんて言ってないでしょう?」
と言ってからさっきまで見てたグループメールを見せた。舘さんはそれを暫く見つめるとボロボロと涙をこぼした。その様子を見て少し安心した。
「…これで俺たちがどれほど心配してるかわかったでしょ?自覚して下さいね。…じゃあ今日はもう休みましょうか。」
そう言ってから舘さんを抱き上げた。自分で歩けると俺の腕でもがいていたが
「駄目でーす。病人は大人しく抱かれといてくださーい。」
と言うと大人しくなった。なんか可愛い。そしてベッドに降ろして電気を消すと途端に眠そうになった舘さんに
「舘さんおやすみなさい。」
と声をかけると
「…まって、、目黒…」
と引き留められた。
「どうしました?」
「…あり…が…と…」
小さな声で言ってそのまま眠りについた。
「…やっぱり舘さんには適わないな。」
とつぶやいた後、頭痛薬飲ませるのを忘れてたことに気付いたが本人は眠りについていたので大丈夫だろうと思い、彼を起こさないようそっと部屋を出た。
コメント
5件
実体験も混じっているのかな?もしかしたらご本人も辛い経験をされたのかな、と感じます。描写がとてもリアルで洗練されている気がします。とても心動かされた作品です。素晴らしいかったです
神作………すごいですね!こんなにも泣けるのはナンカ…上手く言えないですけどいいですね!
ありがとうございます😭