テラーノベル
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「……好きです。付き合ってください」
「……はい。お願いします」
夢にまで見ていた状況に、わたしは今、実際に立たされている。
森田くんの視線と、わたしの視線が重なる。胸の奥がじんわりと温かくなった、その瞬間。
「ひゅーひゅー!」
突然の声に驚いて振り返ると、プリクラで落書きをしていた3人が、こちらを見てニヤニヤしていた。
「あっ……!」
(そうだ、みんなもいたんだった)
2人きりではないという事実を思い出した途端、顔が一気に熱くなる。思わず後ずさりしようとした、そのとき。
森田くんが、ぐっとわたしの腕を掴んで、距離を縮めた。
「……嶋村さんと、付き合えました」
森田くんは、3人に向かってそう言った。
何が起きているのか理解できないまま、さらに近づいた距離に、頭が追いつかない。
「え……? え……?」
「ごめん、嶋村さん。実は、3人には協力してもらってました」
「え、そうなの……!?」
森田くんは3人に協力をあおいで、わたしと2人きりになれるタイミングをずっと待っていたらしい。
しかし、わたしは「友達はわたしが誘ったのに……?」と思い驚きを隠せなかった。
その反応を見て、事情を知っていた佐藤くんが口を開いた。
「森田さ、嶋村さんと仲いい女の子に連絡して、一緒に遊びに来てほしいって頼んでたんだよね」
「え、知ってて、わたしの誘いに乗ってくれたの!?」
「そうだよーん」
ピースをしながら、友達はにっと笑った。
……何も知らなかったのは、わたしだけだった。
「じゃあ、付き合えたってことで、うちらは邪魔だろうから、お暇するね!」
「えっ」
そう言い残して、3人はその場を颯爽と去っていった。
気づけば、その場には、わたしと森田くんだけが残されている。 呆然として、開いた口がしばらく閉じなかった。
「ふふっ」
森田くんが、小さく笑う。
「な、なに?」
「いや……嶋村さんの、そんな顔、初めて見たから」
はっとして、慌てて口を閉じた。
「……あんまり、見ないでね」
「ふふ、かわいい」
そう言われて、胸がきゅっと鳴る。
森田くんの笑った顔は、あの時のままだった。
わたしたちは店を出て、夜の道を、2人並んで歩き始めた。
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