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<瞳>
振り返るとそこには、松本ふみ子が立っていた。
そして耳元では凌太の「俺が向かうまで会社を出ないでくれ」というメッセージが流れていた。
咄嗟にポケットに手を入れてボイスレコーダーのスイッチを入れた。
「アンタ何なの?」
表情のない彼女は私に恐怖を植え付ける。
凌太と話をしたんじゃないの?
投稿を消すように言われて逆ギレ?
下手に何かを言ったら何をされるかわからないかもしれない。
「甲斐くんを捨てたくせに」
「捨てた訳じゃない」
彼女の口が歪む。
「金を貰って捨てたんじゃない。なのに、旦那に浮気されて捨てられたらまたノコノコと甲斐くんにすり寄るなんていやらしい女」
何を言ってるんだろう?
「あなたの知ってる事実はほんの数パーセントであとはあなたの妄想じゃない」
彼女の眉が吊り上がる。
あまりの言い分に思わず言い返してしまった。
「小田原に行っていたでしょ」
SNSを見たんだろう。だとしたら、誰と行ったかなんて書いてないし映り込むこともしていない。
「SNSを見たのね。行ったことは確かだけど」
「甲斐くんも一緒だったでしょ。わかってるんだから。独り占めは許さない」
「私が誰と一緒でもあなたに関係のないことでしょ。それと同時に凌太が誰と一緒でもあなたに関係ない」
煽るようなことを言ってしまってからマズいと思ったが彼女は急にボロボロと泣き始めた。
どうして?
意味がわからない。
ただ、この場から逃れようとあたりを見るが、周りに人がいなかった。
こういう時に人が通らないなんて。
「わたしはずっとずっと、あんたなんかよりずっと甲斐くんを愛してるの。高校のときからずっと。甲斐くんはみんなのものなのに、あんたが独り占めするから甲斐くんはもうみんなのものじゃない。やっと、わたしも甲斐くんをシェアできたのにあんたのせいで」
「シェア?」
「そうよアンタのせいで。大学の時もアンタが現れてシェアできなくなって、やっとチャンスが来たのにまたアンタのせいで。だからわかったの」
そう言って彼女は微笑みながらバッグからアイスピッグを取り出した。
「あんたが居なくなればいいって」
彼女はゆっくりとアイスピックを持つ手を挙げて近づいてくる。
今すぐ走り出したいが彼女に背を向けて動きが見えないのは怖かった。
逃げなきゃ
そう思った時
「何をしてる」