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「おきてよ、ようびねぇ、えんびにぃ!ひ…こわいよお…!」
「う…ん…?モモちゃん?…!え…!」
モモちゃんに呼ばれて目を覚ます。広がるのは炎の海。
「…火事…」
「みんなは…?」
「モモちゃん、いいか、鬼ごっこをしよう。私と艶尾が鬼だ。さあ、走れ!」
「え…でも…!」
「いいから!走れ!桃華!!」
モモちゃんは俺と彩月に強く言われて走り出した。
「あの日と同じだ…」
「無華さんが殺されたあの日と…」
「無華さん!」
「どうしたの?さっちゃん、いっちゃん!」
無華さんは笑顔が素敵な優しい聖母だった。
桃華の実母だ。
私と樹月も母のように慕っていた。
私や樹月が鬼神に襲われそうになっても言葉で制していた。
でも、そんな彼女は鬼神に殺された。
火事の中、身体を拘束され焼け死んだ。
炎の中で私と樹月は助けようとした。
でも…
「私はいいから桃華を…!お願い!さっちゃんといっちゃんが親になって。あんな奴に桃華を任せたくない。それに…桃華もよく懐いてる。」
「子を残して死ぬのは駄目です。無華さんも一緒に逃げるんだ!」
「そうだよ、無華さんが…母さんがいなきゃ嫌だ!」
「お願い…ここももうすぐ火が回る。それに、もう手遅れ。さっきね、毒、飲まされたの。だからどちらにせよ死んじゃう。だから…最後に護らせて!」
私に桃華を抱っこさせて、樹月と共に突き飛ばされた。
その瞬間に焼けた屋根が家を潰した。
叫んだけど、返事が返ってくることはなかった。
そこで聞こえたのは桃華の泣き声と炎の燃える音だった。
「いろにぃ、おきて…おきてよぉ!」
「モモちゃん?…火事だ。」
「彩、みんな連れて逃げるぞ。」
「ああ」
孤児院のみんなを連れて外に出る。
「こわいよぉ」
「どーなるの!」
不安な声があちこちから聞こえる。
「ようびとえんびは?」
彩月と樹月の姿がない。
何処だ?
樹月の怒声が聞こえた。
声の方向を見ると、鎌鼬と猫又が襲ってきていた。
「みんな、“あいことば”分かるね。それを“つうろ”に向かって言うんだよ。」
子供たちは彩月の声で正気を取り戻した。
そして…
「にいちゃんたち,こっち!」
みんなに手を引かれて連れて行かれた。
「どう言うつもり?鎌鼬、猫又?此処に何回も訪れて、挙句火付けるなんて…」
「さあな。それが鬼神様の命令だったから。あと、もう一つの命令は…」
「なんの冗談?笑えないんだけど。」
*口ではそう言ってみたが、おそらく本気だ。*
でなければ、鬼神の側近である鎌鼬と猫又が来るわけないのだから。
「なんで、殺害されなきゃいけない訳?こっちは誘拐された身。逃げたいのは当たり前でしょ。」
「だからだよ。此処の存在が世間に晒されたら、どうなるか、頭のいい君らには分かるだろう。」
口封じってことか…
でも、あっちには聖と仁がいる。きっと大丈夫だ。
「さあ、始めようか。可愛い獣の“殺処分”を。」
「そう易々と殺される気はない。だって、やっと…」
「なら、殺してみろ…!」
「やってやるさ、生きる為なら…護るためなら…」