両親の出会い

「父さんと母さんの出会いはな母さんの不法侵入だったんだよ」

「初っ端から物騒すぎて笑えない」

お兄ちゃんが去年授かり婚で結婚してめでたく子供が生まれた。

その時ふと父と母の出会いについて気になって軽い気持ちで聞いたのは間違いだった。

「まさかの不法侵入……でもその話からどうやって結婚したの？」

「当時社畜だった父さんは、リビングで爆睡してる母さんを放置して仕事に向かったんだ」

「せめて起こしてあげてよ」

「起こすのも可哀想だし、父さん中国語どころか英語もできないから」

「……」

そうだった この人語学力皆無代表と言っても過言ではないレベルにできない人だった。

ましてや中国語しか話せず衝動的に日本に旅行しにきた行動力化け物母さんも語学力皆無。

「で、帰ってきたら母さんがリビングでまだ爆睡してた。起こすのも可哀想だったから毛布かけたんだよ」

「うん」

「そしたら母さんに夜這いされた」

「……あ、え？」

「ちなみにそれ２回目だったんだけど」

「待って理解が追いつかない」

何その急展開？ そんな漫画みたいな出会いあるの?? いやでも……

「まぁ昔の母さん美人だし、胸もでかくてスタイルいいし」

「そういう問題じゃないと思うんだけど……」

母さんの昔の写真を見たことはある。 当時幼稚園児の私でも美人なことは確かだ。

「暫くして母さんの妊娠が発覚して、父さんが責任とって結婚した」

「待って、もしかしてその子って」

「そうだよお前の兄の和真だ」

「やっぱり」

「因みに和真もこの方法で結婚までこぎつけたらしいぞ」

「お兄ちゃん？」

兄は天然で若干馬鹿ではあるが、勉強はできるし運動神経も良くて容姿端麗という完璧人間。

あれ？

「もしかしてうちの家族みんなおかしいの？」

「間違いなくお前が一番まともだ」

いや、そんな真顔で言われても説得力ないけど？

「よく結婚までこぎつけたね……私だったらその勢い任せで結婚とかできないよ……」

「いやお前ならできる」

「……なんで言い切れるの？」

「だって俺の娘だし」

「……」

そういうことを堂々というからあなたは天然たらしだと言われるんですよ。

恥ずかしいこと言わないでよね……

まぁなんだかんだでその後も私は母さんと父さんの出会いの話をたくさん聞いた。 私の知らない両親の馴れ初め話は面白くて興味深かった。

でもそれと同時に、私と兄である和真が両親に愛されて生まれてきてくれたんだと改めて実感できて嬉しくなった。

（ありがとう父さん母さん）