テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#クロスオーバー
くらげ𓂃 𓈒𓏸
12
霰石
1,016
じこまん
49
怜
212
えーーーーと・・・今回はなんていうか・・・台詞が塵です・・・
太中♀の潜入任務なんですけど、
情景描写とかそこら変に手がいっちゃって、台詞が淡々としてるし、あとぜんぜんいちゃいちゃしてないです泣
日本語が変。
許せ
夜の横浜港に、白い客船が一隻停まっていた。船腹には「ヴェルメイユ号」と金文字が入り、甲板の上では貿易商の晩餐会が開かれている。
タラップの手前で、太宰治は黒い礼服の袖口を一度引いて整えた。隣に立つ中原中也は、濃い葡萄色のドレスの裾を片手でつまんでいる。背中の開いた型で、髪は低い位置にまとめてあり、耳元には小粒の石が揺れていた。
「招待状は」
「ここ」
太宰が内ポケットから封筒を出し、受付の男に渡した。男は名前を確認し、二人の顔を見比べてから頷いた。
「ご夫妻でいらっしゃいますね。ようこそ」
「夫妻じゃねえ」
中也が小声で言うと、太宰は彼女の腰に手を回し、そのまま歩き出した。
「設定だよ。受付で訂正してどうするの」
「手、離せ」
「離したら不自然だろう。招待客は全員、二人一組だ。嫌なら、最初の案をやっていればよかったのに?」
「…それ、手前とその…性行為、して情報を抜き出すやつだろ?」
「そう。それを中也が嫌だって駄々を捏ねて、私たちはこんな周りくどいやり方をしているんだよ」
中也は舌打ちを一つしたが、手を払いのけることはしなかった。二人はタラップを上がり、ホールへ入った。
天井にはシャンデリアが三基、壁際には弦楽四重奏の一団が並んでいる。立食の卓には海老や牡蠣が山になっていて、給仕が銀の盆でシャンパンを配っていた。招待客はざっと百人。その中に、この船の持ち主である貿易商、夏の穂が含まれている。
任務は単純だった。夏の穂の私室の金庫にある取引台帳を持ち出すこと。台帳にはポートマフィアの傘下組織との裏取引が記されていて、警察の手に渡れば組織に面倒が及ぶ。
「金庫は四階の船主室。階段は中央ホールの奥と、厨房脇の従業員用の二本」
太宰はグラスを二つ取り、片方を中也に渡した。
「警備は」
「ホールに六人。上の階に四人。四階の廊下には、異能者が一人いる。事前の報告ではそういうことになってる」
「異能の内容は」
「不明。ただ、出入りした商人が二人、廊下で動けなくなって戻ってきたそうだ」
中也はシャンパンを半分ほど飲み、グラスを近くの卓に置いた。
「なら、見に行くしかねえな」
「その前に、夏の穂本人に挨拶をしておこう。船主室の鍵は、彼女が身につけている」
ホールの中央で、白髪を撫でつけた初老の女が、数人の客に囲まれて笑っていた。太宰は中也を連れてその輪に近づき、軽く頭を下げた。
「夏の穂さん、本日はお招きありがとうございます。津島と申します。こちらは妻の」
「初めまして。中也です」
中也が会釈をすると、夏の穂は目を細めて手を差し出した。
「ようこそ。津島さんの奥様はずいぶんお若い」
「恐れ入ります」
握手の間に、太宰の指先が夏の穂の上着の裾に触れた。内ポケットから革の紐が一本、袖口へ滑り込む。夏の穂はそれに気づかないまま、別の客に呼ばれて向こうへ歩いていった。
「取った」
「早えな」
「十秒もかかってないよ。さあ、上に行こう」
二人は中央階段ではなく、厨房脇の従業員用階段へ向かった。扉の前には黒服が一人立っていたが、中也が一歩前に出て、ドレスの裾を持ち上げたまま爪先で床を軽く叩いた。黒服の足元の床板が沈み、男の膝が折れた。
「通るぞ」
倒れかけた男の襟を太宰が掴み、物陰の掃除用具入れに押し込んで扉を閉めた。階段を三階分上がると、四階の廊下に出る。
赤い絨毯が敷かれた長い廊下で、突き当たりに重厚な扉が見える。扉の前には、背の高い男が一人、壁に背を預けて立っていた。濃紺のスーツで、手には何も持っていない。
「お客様。ここから先は立ち入り禁止です」
「トイレを探してたんだ」
太宰が言うと、男は首を横に振った。
「嘘ですね。上着の内側に拳銃を二丁。奥様の靴には仕込みが入っている」
中也は無言で右足を半歩引いた。踵が絨毯を踏む。
「話が早くて助かるな。どけ」
「できません」
男が右手を上げた。同時に、廊下の左右の壁から透明な板が滑り出した。板は厚みのあるガラスで、天井と床にぶつかって止まり、廊下を四つの区画に区切る。太宰と中也のあいだにも一枚が立ち、二人は分断された。
「これが、商人たちを動けなくした異能か」
ガラス越しに太宰が言った。男は答えず、さらに手を動かした。中也の立つ区画の天井から、新しい板が降りてくる。左右と前後と上、五面が閉じ、中也の周囲が箱になった。
箱の中で、中也は両手を軽く握った。
「閉じ込めて、どうする」
男は答えず、箱の下から細い管を出した。管の口から、白い気体が噴き出した。
「毒か」
中也は息を止めた。右の拳で壁を殴る。ガラスには細い罅が入ったが、割れない。もう一度、今度は踵で蹴る。罅は広がったものの、板は崩れなかった。
「重力操作の使い手でも、これは割れないでしょう。この異能は、強度を毎回更新する。叩けば叩くほど硬くなる」
男が淡々と言った。その背後で、太宰の立つ区画のガラスが鳴った。
太宰が、掌をガラスの面に当てていた。
次の瞬間、板は粉のように崩れ、床に落ちる前に消えた。太宰はそのまま三歩で男の背後に回り、後頭部に肘を打ち込んだ。男の身体が前に傾く。
「な」
男が振り向くより早く、太宰は彼の右手首を掴んだ。男の手の甲から、ガラスの光沢が引いていく。廊下の壁から生えていた板が、順番に消えていった。中也を囲んでいた箱も同じように消え、白い気体だけが廊下に残った。
「窓」
中也が短く言った。太宰は男を絨毯に押さえつけたまま、片手で廊下の窓の留め金を外した。夜風が入り、気体は外へ流れていった。
「息は」
「止めてた。問題ねえ」
中也は喉に手を当て、一度だけ咳をした。それから男の傍に屈み、胸倉を掴んで引き起こした。
「船主室の鍵は、このおっさんが持ってたやつで足りるか」
「足りない。二重鎖錠だ。もう一つは、そこの彼が持っているはず」
太宰が男の上着を探ると、内側から真鍮の小さな鍵が出てきた。男は目を開けたが、中也の拳が顎に入ると、再び動かなくなった。
扉の前に立った太宰は、革の紐の先についた鍵と、真鍮の鍵を、順に鍵穴へ差し込んだ。重い音がして、扉が内側へ開く。
船主室は広かった。奥には大きな机と書棚があり、壁には油絵が三枚掛かっている。そのうち一枚が、蝶番で外へ開く金庫の蓋になっていた。
「金庫は番号式だ。四桁」
「分かるのか」
「夏の穂の誕生日、娘の誕生日、船の進水日。どれかだと思う」
太宰は絵の裏のダイヤルに指を置き、二度回してから止めた。金庫の扉が、小さな音を立てて開いた。
中には革装丁の帳簿が三冊と、封筒が一束、小型の拳銃が一丁。太宰は帳簿だけを取り出し、上着の内側に差し込んだ。封筒を一枚抜いて中を確かめ、中也に見せる。
「こっちも持って帰る。傘下の連中の名簿だ」
「全部か」
「全部」
中也が封筒を受け取り、ドレスの胸元から細い布袋を出した。封筒はその中に収まった。
「準備いいな」
「出番がなかったらドレスの意味がねえだろ」
「それは確かに」
二人は船主室を出て、廊下で倒れている男の脇を抜けた。階段を降りる途中、二階の踊り場で、黒服が二人、こちらを見上げていた。
「そこの二人、止まれ」
「止まらないよ」
太宰が答えた時には、中也はすでに踊り場の手摺を蹴っていた。ドレスの裾が翻る。靴の踵が黒服の一人の肩に落ち、男は階段を転がり落ちた。もう一人が銃を抜いたが、引き金を絞る前に、中也の指が銃身に触れた。拳銃が床に叩きつけられ、そのまま絨毯にめり込む。
「重てえだろ」
「うあ」
男の鳩尾に中也の膝が入り、男は壁に凭れて座り込んだ。
階段の下の扉を開けると、ホールのざわめきが聞こえた。弦楽四重奏はまだ続いている。招待客は、上階の騒ぎにまだ気づいていないようだった。
「正面から出る?」
「裏の通用口」
「ドレスで走れる?」
「走れる」
通用口の外には、荷役用の細いタラップが海へ向かって伸びていた。そこを降りた先の岸壁に、黒塗りの車が一台停まっている。運転席の窓が下り、男が顔を出した。
「お疲れ様です。回収は」
「済んだ。出して」
太宰が後部座席の扉を開け、中也を先に乗せた。自分も乗り込み、扉を閉める。車は静かに発進した。
船の灯りが、後ろの窓の中で小さくなっていく。
中也は座席に背を預け、左の踵を持ち上げた。靴の踵が半分ほど欠けている。
「折れてやがる」
「さっきの蹴りだね」
「使い捨てのつもりだったから、まあいいが」
彼女は靴を脱ぎ、足首をゆっくり回した。太宰は黙ってそれを眺めていたが、やがて上着の内ポケットから帳簿を一冊取り出し、膝の上で開いた。
「見ろよ」
「何を」
「夏の穂の取引相手の欄。うちの傘下の名前の横に、別の組織の名前が書いてある。二重取引だ」
中也が身体を傾けて覗き込む。指先が一行をなぞった。
「こいつら、うちと向こうの両方に流してたのか」
「そういうこと。首領に見せれば、整理の口実になる」
「ならこの台帳は、盗んで正解だったな」
「うん。正解」
太宰は帳簿を閉じ、上着に戻した。車は海沿いの道を進み、倉庫街の黄色い街灯の下を抜けていった。
中也が脱いだ靴を座席の足元に置き、背中に手を回してドレスの留め具を探った。しかし、指が届かず、一度動きが止まる。
「外してくれ」
「はいはい」
太宰が身体を寄せ、留め具に指をかけた。小さな金具が三つ、順に外れる。中也はそれが終わると、助手席のシートの背に引っ掛けてあった自分の外套を引き寄せ、肩に羽織った。
「帰ったらすぐ報告書だ。お前、書け」
「ええ、私が?」
「お前が書いた方が首領の機嫌がいい」
「分かった。ただし、君のサインはいる」
「ああ」
車は倉庫街を抜け、ポートマフィア本部のビルの裏手へ回った。地下の駐車場の扉が開き、車はそのまま中へ入って停まる。
運転手が降りて後部座席の扉を開けた。中也は素足のまま、片手に壊れた靴を持って降りた。コンクリートの床の冷たさに、爪先が一瞬だけ丸まる。
「上にスリッパがある」
「取ってくる」
「いい。自分で行く」
彼女は歩き出した。太宰は少し遅れて降り、帳簿の入った上着の襟を整えてから、中也の後に続いた。エレベーターの扉の前で、二人は並んで立った。
「さっき、ガラスの箱の中で何か言いかけてたよね」
「何も言ってねえ」
「そう」
扉が開いた。二人が乗り込むと、中也が最上階のボタンを押した。扉が閉まり、箱が静かに上昇を始める。
階数表示の数字が一つずつ増えていくあいだ、太宰は上着の内側から帳簿を取り出し、背表紙を確かめた。中也は外套の裾を直し、足元の床を見ていた。
最上階に着くと、廊下の先に首領の執務室の扉が見えた。二人は並んでそこへ歩いた。中也の素足が絨毯に当たる音は、ほとんどしなかった。
扉の前で太宰が足を止め、帳簿を差し出した。中也が受け取り、片手で二度、扉を叩く。
「入りなさい」
中から、森鷗外の声が返った。中也は取っ手に手をかけ、押し開けた。
私も太宰と中也に情報引き抜かれて大損したい
コメント
5件
最初の方の性行為という言葉に照れているような中也の描写や、双黒として完璧な阿吽の呼吸で任務を遂行する二人が最高でした!!
読み終えました……!「台詞が塵です」なんて仰いますけど、全然そんなことないですよ。太宰と中也の会話に流れる、息の合った間合いがしっかり感じられました。特に「夫妻じゃねえ」「設定だよ」の掛け合いとか、何年も一緒にいるコンビの空気感が絶妙でした。ガラスの箱で分断された場面もゾクッとしました……あの強度を更新する異能、太宰があっさり崩しちゃうのがらしくて好きです。それと、任務終わって車内でドレスの留め具を外すシーン、「外してくれ」「はいはい」って、もう言葉にできない親密さがあってドキッとしました。中也の素足でコンクリート歩く描写も、細かいけどすごく印象に残ってます……こういうちょっとした仕草を拾うのがお上手だなって。本当に、潜入任務ものとしてすごく締まってて面白かったです!