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諒真が外に出たのを確認し、俺はため息をついた。
(今日は荷物取りに行って…買い物して…ちょっと忙しそうだな)
さっき諒真に血を飲ませて貰ったので、朝ごはんは必要ない。今の時刻は8時過ぎ。
(ちょっと早いけど荷物取りに行くか…)
俺は昨日着ていたシャツとズボンに着替え、家へ向かった。家に着くと、クローゼットにしまっていたボストンバッグを取り出す。適当に服を突っ込み、歯ブラシや下着などもいれ、チャックを閉めた。
今後ずっと諒真と済むのであれば、家賃ももったいないし、マンションは解約した方がいいだろう。また諒真と相談しておこう。
一旦諒真の家に戻り、ボストンバッグを置いた。
(11時か…そういえば諒真、お昼は大丈夫かな。大学だから購買あると思うけど…帰ってきたら聞いてみなきゃ)
少しゆっくりしようとも思ったが、先に買い物を済ませておこうとカバンを持って外に出た。とりあえずスーパーに来たものの、なにを作るか迷ってしまう。
(諒真の好き嫌いとか、アレルギーとか、聞いてなかったな…連絡先もまだ交換してないから聞けないし…)
諒真と話すことが次々と出てきて、頭がパンクしそうになった。
そういえば、吸血鬼に頻繁に血を吸われる人は貧血気味になりやすいという。ライトさんも普段は鉄分のあるものを食べていると言っていた。
(鉄分のあるもの…レバーとか野菜、貝類かな…)
俺はスマホでレシピを調べつつ、献立を考えて買い物を済ませた。諒真の家に帰り、19時頃になって料理を始める。そして20時頃、全ての料理が出来上がった。
サラダにしじみの味噌汁にサバの味噌煮、ほうれん草のおひたしだ。盛り付けたサラダとほうれん草のおひたしにラップをし、机に置いた。味噌汁とサバの味噌煮は後で温め直してからつごう。
10分ほど待つと、玄関の開く音がした。そして、こっちに歩いてくる。諒真だ。
「今帰りました」
「おかえり。ご飯もう出来てるから、いつでも食べれるよ」
「ほんとですか?じゃあ、今から食べようかな」
「わかった。用意するね」
「ありがとうございます」
諒真は嬉しそうにそういい、洗面所へ行った。
俺はキッチンに向かい、味噌汁とサバの味噌煮に火を通す。温まったので器に盛り、机に置いた。ついでに箸と水も用意し、ラップも取る。少し待つと、諒真が洗面所から戻ってきた。
「うわ、美味そう」
そう言いながら椅子に座る。
「瞬さんって天才ですか?」
「いや、これくらいどうってことないよ。それより、嫌いなものとか入ってない?アレルギーとか、大丈夫?」
「俺、基本なんでも食べれるんで大丈夫です!アレルギーもありません」
「そっか。良かった」
俺がそう言うと、諒真は手を合わせながら言う。
「いただきます!」
「どうぞ〜」
俺はそう言いながら、諒真の向かいの席に座る。諒真は箸を持ち、ほうれん草のおひたしを食べた。
「ん!美味い!」
続いてサバの味噌煮を食べ、目を大きく見開く。
「美味っ!!やっぱり瞬さんって天才ですよね?」
「そんな大袈裟だって」
「いやいや、美味すぎ」
そして味噌汁も一口飲んで嬉しそうに笑う。
「美味〜!最高!」
諒真はそう言って嬉しそうに食べている。そんな諒真を見て、俺は不覚にもドキッとしてしまう。実は諒真には内緒だが、俺は男が好きだ。そんなことがバレたら多分、諒真に嫌われてしまうかもしれない。まだ出会って間もないけれど、何となくそれは嫌だと思った。
「…さん、瞬さん」
(しまった。ぼーっとしてた)
「なに?」
「いや、俺の顔見てるから…なんかついてます?」
(ドキッとしたなんて、絶対言えない…)
「あ…いや、美味しそうに食べるから、なんか嬉しくて」
俺がそう言うと、諒真はふふっと笑う。
「瞬さんが喜んでくれるならいくらでも美味しそうに食べますよ?実際美味いですし」
そう言ってニコッと笑った後、嬉しそうに食べるのを再開した。
「ん〜、美味〜!」
ニコニコしながらそう言う諒真を見て、俺の心臓は高鳴る。
(何ドキドキしてんの、俺…)
「ゆっくり食べなよ?俺風呂入ってくるね」
そう言って俺は逃げるようにボストンバッグから風呂の用具を取り、お風呂場へ向かった。
シャワーを浴びながら、さっきのことを考える。
(美味しそうに食べてるの見ただけでドキッとするって、俺チョロい?)
「チョロすぎだよな…」
そんなことを考えながらお風呂を済ませた。
その後、諒真から血を貰い、昼にたくさん浮かんだ諒真と話すことを実際に話した。お昼は大学で食べるからいいとの事。
そして、連絡先の交換も済ませ、俺が住んでたマンションも解約することに。部屋は俺がひとりで使ってもいい部屋を一部屋貸してくれたので、そこにベッドや棚を置くことにした。引越し業者に頼まなくては。
次の日の朝、諒真より早く起き、朝ごはんを作っていると、諒真が起きてきた。
「いい匂いする〜」
「もうすぐできるよ」
「やった〜、顔洗ってきます!」
そう言って諒真はルンルンしながら洗面所へ向かった。
そういうところを見ると可愛いと思ってしまう。この調子でこれから大丈夫だろうかと不安になる。そして、一緒に過ごすうちに、諒真のことがどんどん気になり、気づいたら好きになっていた。やはり不安に思った通りだ。
そんなある日、家で諒真と二人でゆっくりしていると、チャイムが鳴った。
「あ、俺出るよ」
「ありがとうございます」
モニターを見ると、知らない少年が立っていた。俺は通話ボタンを押す。
「はい」
「拓実(たくみ)で〜す!諒真〜?」
諒真のお友達だろうか。俺は諒真を呼ぶ。
「諒真、多分、お友達。拓実くんだって」
「え?拓実?」
そう言って諒真はモニターの方へ駆け寄る。
「どうしたの?」
「開けて〜」
「わかった、ちょっと待ってね」
そういった後、諒真は玄関へ向かった。俺は少し気になりつつも、覗くのも失礼かと、玄関へ続く扉を見ながら、ただじっと待つ。2人が何か話しているが、何を話しているかまでは分からない。
次の瞬間、諒真の声が聞こえる。
「ちょっ、おい、拓実!」
そして、こちらへ向かう足音が聞こえた後、扉が開く。拓実くんだ。拓実くんは俺を見て立ち止まる。
「あー…誰…?」