『 あ の 頃 の 君 が 好 き だ か ら 』
瑞 ⌒ … わ か れ よ
瑞 ⌒ こ の 気 ま ず い 中 、 付 き 合 っ て る っ て
瑞 ⌒ 関 係 が 、 れ る は し ん ど い …
君は、なんとも思ってへんように、首を縦に振った。
…れるには、それ以上なんも言えへんかった。
瑞 ⌒ こ 、 こ え く ん …
赫 ⌒ … …
急に、恋人から無視されるようになった。
こえくんは、躁鬱をもっとるから
れるに当たられる事はよくあった。
れるだけに言葉が強かったり、
れるには異常に突っかかってきたり
…心を許しとるから、これが素なんやろなって、我慢しよった。
躁鬱やから、しょうがない。
きっと明日には、れるの好きなこえくんに戻るから。
鬱はしんどいんやから、れるが支えな。
毎日、そうやって自分に言い聞かせて、
れるに優しいこえくんに戻ってほしくて、
我慢してきた。
赫 ⌒ ~ ~ ~ で さ 笑 笑
橙 ⌒ な に そ れ っ 笑 笑
こえくんが、くにおと楽しそうに笑っとって、
『 れ る の こ え な ん に く に お と 楽 し そ う 』
顔にも声にも出さずに、心が崩れそうな程嫉妬して。
瑞 ⌒ 何 話 し て ん ?
赫 ⌒ … あ っ ち 行 こ
橙 ⌒ … そ だ ね
れるって気分やない時には、いじめ間際な事されて。
それでも、こえくんが好きやったから。
我慢しとけばきっと、こえくんがれるんとこに戻ってきてくれるって
信じてた。
…ゃ、そう思ってたかった。
こえくんが、くにおと話とって
避けられるんが辛いから、近づかへんように去ろうとしたら
こえくんの言葉が、れるに飛んできた。
赫 ⌒ れ る っ て 気 分 屋 す ぎ て
赫 ⌒ 振 り 回 さ れ る の き つ い ん だ よ ね ~
その言葉が、耳に入ってきた瞬間
世界が止まったみたいに、時間が消えた。
瑞 ⌒ ッ は … … ?
喉がひゅって鳴った。
胸の奥で、なにか小さく破ける音がした。
吐く息が、涙よりも先に震えた。
ずっと、こえくんを支えとるつもりやった。
ゼロ距離にくっついてきたり、
気分ちゃう時は、無視されて、睨まれたり、
気分屋なこえくんに振り回されすぎて、疲れとった。
躁鬱やから、しゃ−ない思って我慢してた事も
こえくんが、くにおにれるの愚痴を言うてるんも
他人と距離が近すぎて、隠れて嫉妬してたのも
こえくんが自己中なんを、友達から嫌われへんようにれるがカバーするんも、
全部、全部、嫌に思えた。
そのあとは、何も考えられんまま、
帰り道でずっと泣いとった。
泣きすぎて、涙の出し方もわからんくなるくらい。
気づいたら、手が勝手に動いて、
こったんの名前を押してた。
瑞 ⌒ … … こ っ 、 た ッ
藐 ⌒ ぇ 、れ る ち ! ?
藐 ⌒ ぇ 、 え … ? 泣 い て る … ?
れるは何も言えんで、ただ黙って泣いた。
そしたら、こったんがすぐに来てくれた。
もうそっからは、あんま覚えてへん。
泣きたいだけ泣いて
我慢しとった言いたい事全部言うて
限界が来とった心を、全部だした。
こったんは、ずっと聞いてくれとった。
落ち着くまで、傍におってくれた。
藐 ⌒ … … れ る ち は 今 も こ え く ん の 事 好 き ?
瑞 ⌒ … … も 、 わ か ら へ ん …
藐 ⌒ … こ れ か ら 、 ど う … し た い … ?
瑞 ⌒ … …
れるの中ではもう決まっとった。
答えを言わなきゃ、と思うのに。
声は、喉の奥でかすれて消えた。
その沈黙を、こったんは“答え”として受け取った。
付き合った時のこえくんは大好きやった。
可愛くて、ふとした時にかっこよくて
れるの隣で笑っとるこえくんが、殺したい程愛おしかった。
こえくんに嫌われたなくて、好かれてたくて
愛重なんも、メンヘラなんも全部隠した。
嫉妬してても、愛情不足でも、全部我慢してでも
れるの隣にいてほしかった。
でも、少し前から、衝突しやすくなった。
お互いがお互いに敏感になって、行動も、言動も、
ちょっとした事で、すれ違ってた。
…れるは、それに気づいとった。
気づいた上で、話し合わへんかった。
話す事すら、ストレスに思えた。
その時から……れるは自覚してへんかっただけで、もう、冷めてたんやろな…
すれ違うたびに少しずつ、
「好き」と「しんどい」の境目がわからんくなっていった。
それでも、あの頃の君を想うたびに、
まだ笑いたい自分がおった。
喧嘩したとき、話し合ってれば、まだ好きでおれたんかな。
嫉妬したとき、隠さへんければ、れるは限界にならへんかったんかな。
LINEも、通話も、会話も、
すれ違うたびに、お互いが納得できる解決をしとれば、衝突せんかったんかな。
赫 ⌒ れ る は 言 葉 が 強 い ん だ よ
赫 ⌒ な ん か 、 見 下 し て る 感 じ
…君が、くにおに話しとった言葉。
全部、覚えとる。
れるにずっと刺さっとる。
口が悪いんは、自覚しとった。
でも、見下したことなんかあらへんし、
付き合う前から、こえくんを尊敬しとった。
解釈違いとすれちがいが、どんどん〃、増えてって
れる等は、お互いに好きやなくなってた。
瑞 ⌒ … わ か れ よ
瑞 ⌒ こ の 気 ま ず い 中 、 付 き 合 っ て る っ て
瑞 ⌒ 関 係 が 、 れ る は し ん ど い …
君は、なんとも思ってへんように、首を縦に振った。
…れるには、それ以上なんも言えへんかった。
目の前の君が、まるで他人みたいやった。
何度も夢に見た“関係の終わり”が、現実になったんに、
涙は、出るより先に、喉の奥でつっかえた。
瑞 ⌒ あ の 頃 の 君 が 、 い ち ば ん 好 き や っ た
今の君も、ちゃんと好きやったよ。
でも……もう、無理やね。
そう言いながら、また泣いた。
嫌いになれたら、どれだけ楽やろうって、思いながら。
画面の中の君の名前を見て、
指が震えた。
滲んだ光の中で、“嫌い”の文字だけが、くっきりして見えた。
もう一度、
“嫌い”って言葉でしか、自分を守れへんかった。
“嫌い”って言葉でしか守れへんかったけど、
本当は、最後まで“好き”のままやった。
それが、れるのいちばんの負けやと思う。
光が涙を照らして、
“嫌い”だけが、世界で一番綺麗に見えた。
コメント
15件
ゆぅさっ、!最高だよっっ!! 見ててこっちが涙出てくるしこえくんがくにくんにれるくんの愚痴言ってるのを聞いた時のれるくんの気持ちがめっちゃ伝わってきた…!
時間守って偉い✨️ え、泣く泣く泣く(((( なんかきゅんきゅんするッッ(
閲覧頂き、誠にありがとうございます。 この作品は瑞樣視点で描かれています。 赫樣にも、赫樣なりの想いがあります。 破れた紙は、どんなに頑張ってくっつけても、元通りには戻らない。 話し合うことは、本当に大切だなぁと、自分自身痛感しました。 切ない恋ほど、一瞬一瞬が宝物です。 大切な人を、もっと大事にしましょう? 過去を嘆いても、今は何も変わらない。 ──こんな恋でも、幸せでしょうか。