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ー午後10時ー シャーレ
今日はバレンタイン。学生や職場同士の人間関係が普段よりより一層親密になるとされる神聖なイベント。..自分には関係のない話だが。
先生「終わらないなぁ…こんな日にまで徹夜か。」
伸びをして街の様子を覗く。大体二時間前まではチョコのセールやら、カップルが寒さかはたまた照れ臭さか顔を赤らめて手を繋ぎ街を横断し夜に呑まれ見えなくなっていく…が、この時間帯となってはそろそろバレンタインは終わりというムードがほとんどだろう。商店街らしき場所は全て閉まり、ケーキ屋さんなども戸締りの準備をしている。生憎私は仕事をしながらそれを眺めることしかできないのだが。相変わらず惨めな事をしているなと噛み締めている時、
ノゾミ「先生〜?」
突如背後からノゾミの声が飛んできた。既に彼女は帰ったはずではないのだろうか。
先生「わっ…ビックリさせないでよ、それにもう仕事は終わったんだから、帰りなさい?」
軽く彼女を宥めるように頭を撫で促すが彼女は何処か不服に、
ノゾミ「帰りなさい、じゃないでしょ先生..折角のバレンタインなのにずっと仕事?」
偶の音も出ないがまぁそれは事実だ。
先生「どの道どのイベントの時もそうだよ…」
ノゾミ「本当に先生は真面目なのかそうじゃないのか分からないなぁ..」
軽くため息をつく彼女。
ノゾミ「それで、また遅くまで仕事してたんでしょ?こんな日くらい生徒に構ったらどう?」
それはごもっともな意見なのだが…
先生「いやでも…予定ある生徒だって多いでしょ、こんなイベントだもん。それこそ皆素敵な人と…」
ノゾミ「ボソッホンットに鈍いなこの人..」
先生「…何か言った?」
ノゾミ「いや別に。それよりさぁ〜ヒカリは今日居ないし私だけ暇なんだよね、先生何処か連れてってよ〜。」
突然の無茶振りをされる。
先生「えーと…いやでもまだ仕事が..」
ノゾミ「それ期限明日のお昼まででしょ?間に合うって。」
何故知っているのか…こういう時は本当に彼女は鋭い。私も半諦めで
先生「はぁ…まぁでも、折角のバレンタインだしね。..この時間帯に生徒と教師が出歩いてるのがバレるのはマズいから、一応他言無用ね?」
ノゾミ「そこ気にするんだ…」
少しノゾミがムスっとした気がしたがまぁ良いか。そういう訳で私達は夜の街へと繰り出した。
先生「やっぱりどこもこの時間帯は開いてないね…どうする?」
ノゾミは突如思い当たった様に、
ノゾミ「そうだ!確かあの角曲がって..」
私もノゾミが曖昧ながらに提案した場所に覚えがあった。
先生「まさか…」
ノゾミ「そのまさかだよ、」
バレンタイン最後の時間を過ごすのに「あそこ」でいいのかと思ったがどの道これ以上探した所でアテはない。流れに沿ってノゾミに手を取られ付いていく事にした。
しばし歩いたところでノゾミが
ノゾミ「着いたよ、先生。」
先生「やっぱり…ここって..」
そう、私達の目の前に建っていたその店は人気ショコラティエ..の店でも無く、かと言って昔ながらのパティシエ屋さんでもない。ただのコンビニエンスストア。
先生「…本当にこんなところで良いの?」
ノゾミ「どうせこれ以上探したところで見つからないよ、さ、行こう?」
さん「いや行こうと言われても….」
そのままコンビニへ。
先生「…あ、なんやかんや言ってもまぁまぁな種類はあるんだね。」
大人向けのショコラボンボン、エネルギー爆発エナドリ風味のチョコ..買う気にはならないが。
ノゾミ「..あ、折角だしさ、互いに渡すチョコを選んで買わない?」
何やかんやで私もそこら辺はまだワクワク出来る年齢なのか。張り切って返事をした。
先生「面白そうだね、乗った!」
そのまま互いに離れ..と言ってもさほど広くない店内を歩きチョコを選ぶ様は、店員さんからすれば少し不審に思えたことだろう。そのまま互いにチョコを隠してレジで会計を済ます。店を出るまで互いに言葉を交わさない。その様はクリスマスの時のプレゼント交換を彷彿とさせた。
ノゾミ「買えた買えた!じゃ、せーので渡す?」
先生「そうしようか。」
そのまま互いに箱を差し出し合う。何とも不可思議な光景でもあるがそこは愛嬌として交換を済ませた。
先生「私から見ていいかな?」
ノゾミ「いいよ、開けて。」
箱を開けると中には石畳の様に綺麗に敷き詰められたチョコレート..フランス語でそのまま「石畳」を意味する パヴェ が入っていた。
先生「これは…なかなか美味しそうだね。..けどノゾミならホワイトチョコレートとか甘い系にすると思ったんだけど、ダークなんだね。」
ノゾミは少し口角を上げ、
ノゾミ「特にこれと言って意味はないよ?..ま、それは調べてからのお楽しみじゃない?」
そのままスマホを出した私にノゾミは止めに入る。
ノゾミ「ちょっと待ちなよ!?こう言うのは後で調べた方がいいでしょ、今は味の感想!」
ノゾミに急かされ「石畳」の一部を口に運ぶ。どうやらこれは生チョコの部類らしい。口に入れた瞬間大人な苦味が広がりながらもその豊かな風味、苦味に隠れた優しい甘さが垣間見える。
先生「..これは…!とても美味しいよ、ありがとうねノゾミ。」
その答えに少しノゾミはぎこちない返事で
ノゾミ「パヒャッ…う、うん。」
とただ頷いた。次は私の買ったチョコを彼女が食べる番だが…タイミング悪いのか良いのか互いの携帯からモモトークの着信音が鳴る。
先生「あっ…り、リンちゃんだ、マズイ…!」
ノゾミ「こっちはヒカリから。..うーん、じゃあこれ、帰ってから食べるね!帰ったら今調べといてよ。」
悪戯な笑顔でありながら何処か普段と違い寂しそうな顔で私に手を振る。
先生「また今度会おうか、バイバイ。」
別れを惜しむ暇もないのか私には更に着信音が掛かる。頬を冷たい風が撫で、私はこう呟く。
先生「..さて、帰るか。」
それにしてもノゾミがくれたチョコは何の意味があったのだろうか..まぁ、彼女の事だ。大した意味はないオチだろう。それより私は彼女に一言メッセージを送っておいた。…私がどんなチョコを送ったかって?..それは彼女が知るだろう。
午前0時 ハイランダー
ヒカリに急かされ急いでハイランダーに戻ってきた。先生に特に何も言わず帰ってきちゃったと思いながらひとまずやる事は終えて自分の部屋に戻る。
ノゾミ「そういえばまだ先生のくれたチョコ開けてなかったなぁ…いいや、開けちゃお。」
その小さな包みを開く。包みを開けた瞬間漂う芳醇な柑橘系の香り。その正体が分かるのに時間は掛からなかった。
ノゾミ「..これ…オランジェット…?」
ミルクチョコのかかった、オレンジピール。そこに粉砂糖が掛かったと言うイメージだ。そのまま私は一つ指に摘み、口に入れる。その瞬間やはりと言うべきか柑橘の爽やかながら柑橘の皮特有の苦味、後から追い上げるミルクチョコの甘みのギャップに舌を踊らせる。
オランジェットの意味を調べたがもちろん目に留まるものは出てこない。
ノゾミ「…ふーん..中々良いチョコくれたじゃん、先生。…どうせ大した意味はないんだろうけど。」
スマホを触っていると、先生から通知が来ていたのが目に入る。
ノゾミ「..?なんだろ。」
そのメールが目に入って何と言うかまず覚えたのか恥ずかしさだった。
ノゾミ「本当にあの人は…勘違いする側の身にも…」
そうは言いながらも2通目のメールに目が入る。
ノゾミ「…何さ、真意とか言って。」
何処かドキドキしながらスマホでミルクチョコの意味について検索する。大きな見出しに出てきたのは、「愛情の優しさ」だった。
先生のメッセージに返信することもなくそのままスマホをプツッと消す。しかし湧き上がる心の感情に逆らえずに枕に顔を埋めてこう叫ぶ。
ノゾミ「先生の馬鹿ッ!!」
おわり
コメント
5件
ウメウメ…ウメメメメメメメメメ
ノゾミの口調があまり分からん、すまん全国のノゾミファン
おお。ノゾミはかわいいなぁ