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青side
「僕、もう生きられそうにないや、」
彼は、笑い混じりに言った。
黄色い髪で、髪と同じ色の綺麗な瞳。
ふわっとした雰囲気を纏っていて、一緒にいると安心する。
いつも笑顔で、僕に暗い部分を見せてくれない。
辛いことも、悲しいことも、苦しいことも、何も話してくれない。
ただ、笑顔で、僕を安心させる。
『もう生きられないや』なんて、言ったことはなかった。
ここは、病院。
僕、青は今、黄という幼馴染のお見舞いに来ている。
「そんなこと、言わないでよ、黄くん、」ゾワッとした。本当に、気づいたら消えてしまいそうで。しかし自分の死期は、自分が1番わかるものだ。本人が言っているのだからきっとそうなのだろう。
それでも、
「いなくならないでよ、、」
黄くんに聞こえるか聞こえないかの小さい声量で言った。
聞こえたのか否か、黄くんは静かに微笑んで
「だからさ、青ちゃん、最後のお願い、聞いてくれない、?」
最後、か。今にも泣きそうだ。
「最後って、まぁ、なあに、?」
けど、無理やりでも笑おうと思った。僕より苦しくて辛いはずの黄くんが笑顔でいてくれるのに、僕が泣いている暇はないと思ったから。
そして、黄くんは言った。
「僕のために、千羽鶴を折ってほしいな」
「千羽鶴、?」
そんなことでいいの?君はもういなくなってしまうのに、最後のお願いもそんなに簡単でいいの?
いいよ、という言葉よりも疑問の方が先に来てしまった。
「どうして、?こんなこと言いたくないけどさ、もう、終わっちゃうんでしょ、?特別なお願いでもいいんだよ、?」
僕がそう言うと
「1日1羽、!」
さっきよりも元気そうに見せた。本当は、辛いと思うけど、。
「千羽鶴が完成するまでは、僕、生きてるよ」
「、、あ、1000日ってこと、?」
「そういうこと、!」
嬉しくなった。僕が折った千羽鶴で少しでも元気になってくれたらって、少しでも生きてくれたら、って。
「本当に、生きてくれる、?」
「もちろん、!」
頑張ろう。少しでも、黄くんを元気づけるために。
「、すっごい綺麗なの作ってあげる!」
「ふふ。楽しみにしてる!」
僕らは小指を絡ませて、指切りげんまんをした。
「約束ね。絶対、生きてね。」
僕は言った。それに続いて黄くんが
「千羽鶴、ちゃんと完成させてね?」
「なっ!絶対やるし!」
「え〜、忘れない〜?」
「忘れないよ!」
すっかりいつもの調子に戻って、数時間、大切な時間を過ごした。
黄side
「明日からだからね!」
「それ、僕の寿命少し伸ばそうとしてない?」
「伸びて困ることはないでしょ!」
「まぁね?」
よかった。いつもの青ちゃんに戻った。
僕を心配して来てくれてるのに、ずっと悲しそうな顔をしていて、僕の方が青ちゃんのことが心配になる。
まぁ、あんなこと言っちゃったからだろうけど。
「バイバイ!」
青ちゃんは言った。
もう月が空の1番上に来てて、あたりは真っ暗。車はたまに通るくらい。
「バイバイ、」
ちょっと寂しいな。そんなことを考えてた時、もう一度病室のドアが開いた。
「間違えたっ!」
晴れやかな笑顔で戻ってきた青ちゃん。
「え、どうしたの?忘れ物?」
「ううん、バイバイじゃなかった。」
どういうことだろう、?
「黄くん!またね!」
本当にずるいな。泣きそうになっちゃうじゃん。
「うん。またね。」
青ちゃんが本当に帰ったのを確認してから、僕は枕の下に手を伸ばした。
そこにあるのは、青ちゃんとお揃い。というか、交換しあった小さなぬいぐるみ。メーカーが同じだったんだ。
僕がヤギのぬいぐるみをあげて、青ちゃんが僕にハムスターのぬいぐるみをくれた。もう3年前の話になるな。
「青ちゃんと『また』がありますように。」
ギュッと握りしめてそっと願った。
「違うな、約束したもんね。」
1000日生きないと、約束破りになっちゃうし。
これは、高校一年生になった春から始まった、僕たちの長いようで短いお話。
君の最後のお願いは千羽鶴だった。