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「××!!!」
白銀の髪を乱し、アメジストの瞳を大きく見開いたアイツが映る。
俺も××を止めようと手を伸ばすが、弾丸は容赦なく軌道を1mmもズラすことなく突き進み、そして
「─────!」
瞳がそっと、閉じられた。
「──────────監視対象・乾赤音が襲撃されました」
その言葉に、九井の手からマグカップが落ちるのを俺は無感動な目で見ていた。
濃い茶色の珈琲がマグカップという器から逃げ、重力に従い床に落ちる。
数秒後、同じようにマグカップも床と衝突し、ガチャンという音を立てて割れて砕けた。
数泊置いて、九井の口からか細い疑問の声が漏れたのを聞いた。
「オイ九井、計画立て直すか」
紙を放り投げ返事を待つが九井から返答は来ず、静寂が満ちた。
それに俺は溜息を吐くと九井の正面に座る。
俺の目に映ったのは虚ろな目と濃い隈を目の下に書いた九井だ。
「赤音さんが、意識不明の重体…」
九井の口から呟かれた言葉を耳で拾い、内心納得する。
傷などではないこればかりは幾ら金を積んでも無理だ。
目を覚ませたきゃ神様を微笑ませなきゃいけねェしな。
神なんて鼻から信じちゃいねえが。
何年も何年も思っていた人が突然襲われ、憔悴するのは仕方ないかもしれない。
だが今の俺らにそれだけの時間があるか?
「九井」
「……」
「諦めんのかお前は」
押し黙る九井に舌を打ち、胸倉を掴み上げる。
驚いたように目を見開いた九井と目が合い、衝動的に九井を椅子に投げ捨てた。
「お前が乾姉も、ドブも諦めるっていうなら止めねェよ」
俺を見上げる九井を睨みながら声を上げる。
「俺はマイキーを救わなきゃいけねェんだ。お前がそうやってどうなるか知ってんのに何もせずに俺の思考の邪魔をするっていうんだったらよ……」
九井と目を合わせ、声を紡いだ。
「スクラップにすんぞ」
その言葉に九井が息を呑んだのが脳に伝わる。
九井は黒曜石のような瞳を細めると、
「お前反社は辞めただろ」
と、場違いながらも柔らかい声でやっと声を出した。
<半日後>
「三途、行くぞ」
「あ゛ァ?……あー了解」
髪を乱雑に搔きながら立ち上がる。
そろそろ俺の騒ぎも鎮火してる頃だろう。
「知っていると思うが俺は今天竺の要員だ」
「あァ」
「お前も”前回”なら天竺の一人だが今回は行方不明扱いだから一応東卍の要員。
……それを踏まえ今日、お前がする事はなんだ」
見定めるような視線に鼻を鳴らす。
そういう見下されるような眼、俺が大嫌いなのを知ってるクセによくやるよな。
そう言ってやろうと思ったが今の俺らに時間は無い為、手短に答える。
「俺が稀咲の野郎に数として捉えられていないのを利用して黒川イザナを殺害しようと足掻く現場を取り押さえる」
「あぁそうだ。……お前がどれだけ重要な役割にいるかくらい、元№2なんだから分かるよな」
”ハイ”以外の返答を受け付けない言葉に口角が上がった。
「上等。……マイキーに振り回されて生きてきた俺の柔軟性、舐めんなよ」
舌をべぇっと出して笑ってやれば九井は酷い笑みを浮かべ、目を弧に描いた。
──────────黒川イザナ救済・開始
イヌピーの前に立ち、深く息を吸う。
”前回”はもっと冷めてて苦しい感情が溢れていたのにどうしてか今は熱くて仕方がない。
まさか今更不良としての楽しみを見出したのだろうか。
それなら遅すぎるだろう。
特攻服のベルトを締め直し、イヌピーを見据える。
深い翡翠の瞳が俺を逃さないと言わんばかりに捉えているのにむず痒く感じ、口を窄めた。
「ココ」
硬い、黒龍に居た時とは若干違う声色に目を細める。
「赤音は絶対目覚めるし、金でどうにかなる問題じゃねェからそっちに居ても何も利益は生まれないぞ」
言われた言葉に目を瞬かせると、俺は笑みを浮かべる。
その笑みにイヌピーが眉を寄せるのを見て、俺は声を出した。
「利益?生まれてるぜ、今現在もな」
俺が今天竺にいることで三途は隠密に計画を進められている。
このまま上手く行けば(…無理矢理にでも上手く行かせるが)稀咲の陰謀は阻止でき、花垣武道を救うことが出来る。
三途はマイキーを救うことしか考えていないのは置いておく。
「ココ……っ!」
伸ばされた手を払い、後退りする。
反社としての記憶を俺は持ち得ている。だが梵天での俺の仕事は主に人間関係、傘下の会社の経営などといった反対人係だ。
そんな俺がトップクラスの強さを誇るイヌピーに勝てるかと言ったら否だ。
だから俺は─────
「灰谷!!」
”今”も”未来”も最強クラスに位置する灰谷兄弟を利用する。
この為だけに、俺は三途を使って灰谷兄弟をこの計画に引き摺り込んできた。
武器が無きゃあまり動かねえ三途を最大限に活用し、灰谷兄弟と早い段階で会わせ”今”この時参戦させるという結果を作った。
その過程で場地圭介がこちら側に押し入ってきたのは予想外だったがそれは割合しておく。
「俺らはコイツを潰せばいいの?」
紫色の瞳を愉快そうに細める蘭に頷くと俺はそのままその場を離脱した。
去り際に振り向いたイヌピーが俺を見つめていて、少し身震いした。
───────この時の俺は思ってもいなかったのだ。
───────否、なんとなく、思っていたかもしれない
───────××が彼奴の為に死のうとすることくらい
ちなみに番外編で三途の家がデカかったのは九井が買った家だからです。
それに元反社。
常識なんて知りません。